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日本人なら知っておきたい スイレンの花とモネの「睡蓮」

2021/05/29 05:48 ウェザーニュース

5月から6月にかけて咲き始める花の一つに「スイレン」があります。

スイレンは漢字では「睡蓮」と書きます。「睡蓮」の文字を見ると、フランスの画家、クロード・モネ(1840-1926年)の絵画「睡蓮」を思い起こす人もいるでしょう。

スイレンとはどんな花なのか、そして、モネはどんな画家だったのか、見てみましょう。

スイレンはなぜ「睡蓮」と書くのか?

スイレンはスイレン科スイレン属の植物で、熱帯性と温帯性があります。

花が咲いている時期は一般的には5~10月で、花の色は、熱帯性と温帯性による違いはあるものの、赤、白、黄、紫など、多彩です。

スイレンは池などに生育する水生植物です。池では、底の泥の中に地下茎(ちかけい)を伸ばし、そこから上に向かって花茎(かけい)を伸ばし、水面から顔を出すように花を咲かせます。

夕暮れ時に眠りにつくように花を閉じることから「睡蓮」と呼ばれるようになったといわれます。「水蓮」と書かないように、気をつけたいものです。

スイレンとハスの違いは?

スイレンに似た植物にハスがあります。ハスを漢字で書くと「蓮」なので、この点でも、スイレンとハスは似ていて、ややこしいです。

ハスはハス科ハス属の水生植物で、池などに生育しています。生育場所もスイレンに似ていますが、違いも幾つかあります。

わかりやすい違いは、花が咲く様子です。スイレンは水面から顔を出すように咲くのに対し、ハスは花茎が水面から上に伸びて花が咲きます。

主に秋から冬が旬のレンコン(蓮根)は、ハスの地下茎です。

スイレンの魅力にハマったモネ

水面に美しい花を咲かせるスイレンに魅せられた画家がいます。クロード・モネです。印象派の画家として知られるモネは晩年、「睡蓮」を200点あまりも描きました。

人生の後半、モネはフランス北部のジヴェルニーに移り住み、庭にスイレンが咲き誇る池をつくりました。日本びいきでもあり、300点もの浮世絵を収集しました。

モネは水に映る光を追い求めた画家といわれます。

一連の作品「睡蓮」の中にも、池に色鮮やかに咲き誇るスイレンの花々と、水面に映り込んだ樹木や空などが渾然となって、幻想的な世界を作り出しているものがあります。

ややこしい「マネ」と「モネ」

スイレンとハスが似ていて、違いがわかりにくいように、モネとマネ(エドゥアール・マネ/1832-1883年)がごっちゃになっている人もいるでしょう。

まず「モネ」と「マネ」と、名前がよく似ています。

しかも、どちらもパリ生まれのフランス人で、マネが印象派の先駆的画家であることも、ややこしくしています。

実はこれは、当人たちもそうだったようで、8歳年上のマネはモネのことを知った当初、モネに対してある誤解をして、憤慨したと伝わります。自分の名前に似せてモネが「モネ」と名乗っていると、マネが勘違いしたのです。

しかし、マネが実際にモネに会うと、誤解は解け、マネはモネを応援するようになったといいます。

西洋美術史の流れから、マネ→モネ、と理解すると、覚えやすいかもしれません。

さて、スイレンの花が咲き誇る季節を迎えました。コロナ禍のため、容易には外出できない日々ですが、池の近くに行く機会があれば、スイレンの可憐な花々を楽しんでみてはどうでしょうか。

あるいは、モネの作品集を図書館で借りるなどして、「睡蓮」を味わってみるのもおすすめです。

参考資料など

『色と形で見わけ 散歩を楽しむ花図鑑』(監修/小池安比古、著者/大地佳子、写真/亀田龍吉)、『色・大きさ・開花順で引ける 季節の花図鑑』(監修/鈴木路子、日本文芸社)、『ときめく花図鑑』(著者/中村文、写真/水野克比古、監修/多田多恵子、山と渓谷社)、『大人の西洋美術常識』(著者/トキオ・ナレッジ、宝島社)、『西洋美術史 ルネサンスから印象派、ピカソまで』(監修/青柳正規、朝日新聞出版)、『世界のビジネスエリートが身につける教養 西洋美術史』(著者/木村泰司、ダイヤモンド社)、『いちばん親切な西洋美術史』(著者/池上英洋・川口清香・荒井咲紀、新星出版社)