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気象庁、10年ぶりに「平年値」を更新 そこから読み解く地球温暖化

2021/05/19 15:12 ウェザーニュース

気象庁は先日、統計期間1991〜2020年の新しい「平年値」を公表し、5月19日(水)より使用が開始されました。

平年値は10年ごとに更新されていて、今回は2011年の更新以来10年ぶりに値が変更となります。

平年値のしくみ

平年値は、その時々の気象や天候を評価する基準として利用されるとともに、その地点の気候を表す値として用いられています。アメダスなどの気温や降水量などのほか、さくらの開花日、梅雨入り・梅雨明け、台風の発生数・上陸数など、様々な統計値において平年値が作成されています。

平年値は西暦年の1の位が「1」の年から始まる30年間の平均値のことで、気象庁が10年ごとに作成しています。昨日までは1981~2010年の観測値による平年値が使用されていましたが、5月19日(水)からは1991~2020年の観測値による新平年値が使用開始となっています。

つまり、1980年代の観測値が外れ、2010年代の観測値が入った平均値に差し替わったことになるので、新旧の平年値を比較すればここ40年程度の地球温暖化などの気候変動の傾向を掴むことができます。

年間の「猛暑日」日数は増加傾向

都道府県庁所在地の「猛暑日日数」
最高気温が35度以上の猛暑日の日数について、新平年値が旧平年値と比べてどれくらい多くなったのかを比較してみました。赤色で塗られた地域ほど増加率が高く、薄い灰色の地域はあまり変化がないことを示しています。猛暑日日数が旧平年値の1.8倍以上になっている地域があることがわかりました。

気象庁気象研究所や東京大学大気海洋研究所、国立環境研究所の共同研究グループによると、「地球温暖化により世界の平均気温が今後1度上がると、国内の猛暑日日数は1.8倍になる」という計算結果が出ています。今回の平年値の変化も、地球温暖化や都市化の影響を少なからず受けているものと考えられます。

今年は熱中症警戒アラートが全国に展開されるなど、「暑さ」への警戒呼びかけ方も変わります。温暖化対策とともに、熱中症対策も工夫が必要となりそうです。

最低気温0℃未満「冬日」は減少

都道府県庁所在地の「冬日日数」
同様に、最低気温が0度未満の冬日の日数について、新平年値ではどれくらい少なくなったのかを比較しました。濃い橙色で塗られた地域ほど減少率が高く、薄い灰色の地域はほとんど変化がないことを示しています。

濃い橙色は50%以上の減少を示していて、特に首都圏などでは冬の冷え込みが弱まる傾向がみられていると言えそうです。地球温暖化や都市化の影響が大きいと考えられます。

大雨は増加傾向か

都道府県庁所在地の「日降水量100ミリ以上の日数」
気温だけでなく、大雨についても比較してみます。この図は1日の合計降水量が100ミリ以上の日数について新旧平年値を比較したものです。濃い青色の地域ほど日数が増加していて、白っぽい色の地域は変化なし、濃い灰色になるにつれて減少していることを示しています。

県庁所在地の観測点による比較ではありますが、新平年値で50%も日数が増えた地点もあり、大雨災害の発生リスクが相対的に高い気候に変化している可能性があります。

秋の台風接近が増加傾向

台風の平年値
台風はもともと大量に発生するものではないため、平年値の数字に極端な差はありません。発生数は微減、日本への接近数・上陸数は微増でした。サンプル数が少ないことなどから、この変化について詳しい気象的な起因を導き出すのは難しい状態にあります。

とはいえ、接近数の違いを月ごと・季節ごとに並べると、いくらか特徴が出てきます。8月の接近数がわずかに減少しているのに比べて、9月と10月は接近数が増えています。秋の接近数がやや増加しているといえそうです。

変化する自然環境に適応を

私たちは自らの暮らしを守る上では、これらの変化にも対応と対策をしていかなければなりません。

夏の熱中症対策はもちろん、大雨や台風に備えて避難グッズの用意や避難場所の確認、家族や親類との連絡方法、情報の入手方法など、日頃からの準備や対策をしっかりと行っていきましょう。
» この先の天候 長期見解

参考資料など

気象庁 令和3年報道発表資料「平年値の更新について ~平年値(統計期間1991〜2020年)を作成しました~」
気象庁気象研究所 「平成30年7⽉の記録的な猛暑に地球温暖化が与えた影響と猛暑発⽣の将来⾒通し」
※猛暑日、冬日については、観測所の移転などの影響で過去30年分のデータが均質でない地点も含まれています。1991年以降、データが均質でないのは以下の通りです。奈良、岡山、東京、新潟、山口、宮崎、さいたま、大津、神戸、佐賀、鹿児島