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繁殖期のカラスに注意! カラスは人の顔を覚えられるって本当?

2021/04/13 11:27 ウェザーニュース

4月はカラスが繁殖期を迎え、1年のうちで最も活動が活発になる時季とされています。「カラスは賢い」というイメージがあり、防鳥ネットを被(かぶ)せても器用に除けてごみ袋を食い荒らし、それどころか「人の顔を覚えられる」とまでいわれています。

カラスは本当に高い知能を有しているのか、“カラス博士”といわれ『カラス学のすすめ』など多数の著作がある、宇都宮大学名誉教授・東都大学幕張ヒューマンケア学部理学療法学科の杉田昭栄(すぎた・しょうえい)教授に伺いました。

鳥類のなかで最も大脳が発達

「確かにごみを荒らしに来るカラスに“仕打ち”をすると、顔を覚えられて反撃を受けるのではないかという相談をこれまで何件もいただいています。なかには、まるでストーカーのように付け狙われるのではと心配する方もいらっしゃいます。

カラスは体重が600~800g前後の鳥ですが、“知恵”をつかさどるとされる脳の重さは約10gと、体重がカラスの2倍ほどあるニワトリの3倍以上もあります。とくに鳥類のなかでは、顕著に大脳が発達しているという研究結果も示されています」(杉田教授)

杉田教授は自身の顔写真を用いて、カラスが個人を識別できるかの実験を30回以上も繰り返したそうです。杉田教授の顔が印刷された紙製のふたがついた容器にのみえさを入れ、一度突き破られた容器はその都度、置く位置を入れ替えました。

「するとカラスはいとも簡単に、私の写真がプリントされた容器のふたを破ればえさにありつけることを“学習”したのです。私以外の人物の顔写真を4人、8人、15人と増やし、正面向きだけでなく横向きなどさまざまなものを用意しましたが、結果3羽のカラスとも80%の正解率を出すことができたのです。

横向きだったりさかさまになったりしていても、カラスはきちんと私の顔写真が貼られたえさ入りの容器を選びました。つまり、顔写真を単純な図形としてではなく、2次元ではあるものの“杉田の顔”として総合的に認知していたことになります」(杉田教授)

12カ月間記憶を保っている?

杉田教授は、カラスが男女の顔が識別できるかどうかの実験も行ったそうです。髪形などの特徴をなくすために男女ともにニット帽を被せ、最初は女性Aの顔写真を貼った容器にえさを入れ、男性Aのものには入れません。カラスが女性Aのほうを選ぶようになった段階で、別人の男女ペアに入れ替えました。

「カラスは初め“あれっ?”という感じで間違えましたが、まもなくどんなペアでも女性を選ぶようになりました。男女それぞれ7人ずつ、さまざまに組み合わせを変えても、女性を選んだのです。目や口、鼻など顔の一部をマスキングしたものでも、男女の識別はできていました。

しかし、顔写真をカラーから白黒に変えると判断ができなくなったのです。カラスにとっては色覚(しきかく)がとても重要であることがわかりました」(杉田教授)

杉田教授はカラスの“記憶力”を確かめるための実験も行ったそうです。色違いのえさが入ったものと入らない容器を用意し、3羽ずつ4群、計12羽のカラスが90パーセントの正解率を出すようになった約3日後の時点以降は、何もさせずに飼育を続けました。

「例えば、1ヵ月後の記憶力を知りたければ1ヵ月間なにもさせず、12ヵ月後の記憶力を知りたければ12ヵ月間なにもさせずに飼育し、1ヵ月後、12ヵ月後再度実験を行ったところ、いずれのカラスも初日から100%の確率で、えさが入っているほうの色の容器を選びました。カラスは少なくとも12カ月間は“記憶を保っている”ことが証明されたのです。

先の男女の識別についても、3羽中1羽のカラスは1年間覚えていました。また、カラスは『貯食(ちょしょく)』といってえさを隠し蓄える習性があります。これも相当の記憶能力を持たなくては成り立たない行動です」(杉田教授)

脳の重さが約10gのカラスに対して約1300gの人間が、ごみの取り扱いなどで“敗れる”ケースも多々あります。

「カラスは、えさをあげる人、危害を加える人など、個別の人間の識別がつくことはわかっていますので、個々の人間を識別して対応する能力はもちろんあります」(杉田教授)

むやみにカラスを威嚇(いかく)するのはやめましょう。普段聞かない鳴き声を聞いたら、その声を発しているカラスをにらみながら、距離を作りましょう。もしカラスに襲われた場合は、まずは頭などを手で覆(おお)い、早めにその場から離れるのが大切だと杉田教授はいいます。

繁殖期を迎える春は、ヒナを育てるためにカラスが活発になっていることを理解して、冷静に対応しましょう。
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