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「初桜」「徒桜」「桜花爛漫」…「さくらの日」に触れたい“桜の言葉”

2021/03/27 05:57 ウェザーニュース

3月27日は「さくらの日」でもあります。「咲く(3×9)=27」の語呂合わせと、七十二候の一つ「桜始開(さくらはじめてひらく)」にあたる時期であることから、公益財団法人 日本さくらの会が1992年に定めました。

「さくらの日」を機に、桜に関する言葉や諺(ことわざ)などを集めてみました。

【1】初桜(はつざくら)

咲いて間もない桜の花のことを「初桜」といいます。

江戸時代前期の俳人、松尾芭蕉は「初桜 折りしも今日は よき日なり」と詠んでいます。

桜の花が咲き始めたことに気づくと、気持ちがどこかしら弾んできますね。

【2】桜雲(おううん)

「桜雲」は、桜の花が一面に咲き続いていて、遠方からは白雲のように見えることです。「花の雲」ということもあります。

白雲のように咲き誇る一面の桜を見られたら、これぞまさに眼福(がんぷく)ではないでしょうか。

【3】徒桜(あだざくら)

「徒桜」は散りやすい桜の花のことです。そこから転じて、はかないもののたとえにも使います。

鎌倉時代の僧で浄土真宗の開祖、親鸞は「明日ありと 思う心の仇桜(あだざくら) 夜半(よわ)に嵐の 吹かぬものかは」と詠んでいます。

「美しく咲いている桜を明日も見ることができるだろうと安心していると、夜半に強い風が吹いて散ってしまうかもしれない」という意味です。

「人生は桜のように無常である。明日、自分の命があるかどうかわからない。だからこそ、今を精一杯生きよう」との思いが込められているのでしょう。親鸞19歳のころの作と伝わります。

【4】桜花爛漫(おうからんまん)

桜の花が満開になって、咲き乱れている様子のことを「桜花爛漫」といいます。「桜花爛漫の候」などの形で、手紙の時候の挨拶として用いることもあります。

昭和期に活躍した作家、太宰治の小説『惜別』にも「桜花爛漫」は登場します。

「春になれば、上野公園の桜が万朶(ばんだ)の花をひらいて、確かにくれないの軽雲の如(ごと)く見えたが、しかし花の下には、きまってその選ばれた秀才たちの一団が寝そべって談笑しているので、自分はその桜花爛漫を落ちついた気持で鑑賞することが出来なくなってしまうのである」

「万朶の花」(多くの垂れ下がった花)、「くれないの軽雲の如く」、そして「桜花爛漫」からは、このときの上野公園の桜の様子がよく伝わりますね。

【5】花は桜木(さくらぎ)、人は武士

「花は桜木、人は武士」は、花では桜が最も優れているように、人では武士が最も優れているという意味です。散り際の見事な桜に、潔い武士の死に際を重ねた言葉といわれます。

今の世に武士は存在していませんが、華やかに咲いて潔く散る(ように見える)桜の花は、今も私たちの心をとらえて放しません。

【6】世の中に たえて桜の なかりせば 春の心は のどけからまし

これは平安時代前期の歌人、在原業平(ありわらのなりひら)の歌です。

「この世の中に、桜というものがまったくなかったら、春を過ごす人の心はどんなにのどかだろう」といった意味です。

逆にいうと、桜があるために、気もそぞろになって、ソワソワしてしまうということでしょう。1100年以上も前の人の歌ですが、親近感がわきますね。

新型コロナウイルスの流行はまだ続いています。感染対策をしっかりとおこなった上、可能な範囲で、今年も桜の花を愛(め)でたいですね。

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参考資料など

『日本の365日に会いに行く』(編集/永岡書店編集部、永岡書店)、『広辞苑』(岩波書店)、『大辞泉』(小学館)、『実用 ことわざ』(編集/トーレン企画、三興出版)、『惜別』(著者/太宰治、新潮社)