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冬の間、虫はどこで何をしているの?

2021/02/04 05:59 ウェザーニュース

冬の公園を散歩していると、夏の間よく見かけたバッタやカマキリ、セミやトンボの姿が見られません。やがて暖かくなると姿を見せる虫たちは、冬の間どこで何をしているのでしょうか。

卵で冬越しする虫

卵で冬越しする虫にはカマキリ、コオロギ、バッタなどがあります。この中で、もっとも目につきやすいのがオオカマキリなどカマキリの仲間です。

カマキリは、木の枝や背の高い草(ススキやセイタカアワダチソウなど)の葉に卵嚢(らんのう)または卵鞘(らんしょう)と呼ばれる繭のような袋をつくります。その中には、たくさんの卵が入っているのです。散歩の途中、木の枝や長く伸びた草むらを丁寧に見ていくと、お麩でできたような茶色い袋を見つけることができます。

コオロギやバッタの仲間たちも卵で冬越ししますが、土の中に卵を産みつけるので、私たちの目に触れることはあまりありません。

これらの虫の成長過程は「不完全変態」と呼ばれ、サナギを経由しないという特徴があります。卵から、かなり成虫に近い形で孵化し、脱皮を重ねて次第に大きく、色も濃くなっていくのです。

幼虫で冬越しする虫

幼虫で冬越しする虫は、どこで冬を過ごすかによって大別できます。

まず、幼虫が土の中で冬越しするのがカブトムシやセミの仲間です。カブトムシの幼虫は、腐植土の中で丸まって寒さをしのいでいます。セミの幼虫は、冬だけでなく何年もの年月を土の中で過ごし、木の根から樹液を吸って生きています。成虫になってからはひと夏(せいぜい数週間)しか生きないセミですが、幼虫の期間は長いのです。

クワガタやカミキリムシは、枯れかけた木の中で冬越しします。シロアリのように幹を食べ進みながら幼虫として生きる期間が、種類によっては何年も続きます。

水の中で冬越しするのは、ホタルやトンボです。ホタルの幼虫は、石の下に隠れて、捕食されないよう息をひそめています。トンボの幼虫はヤゴと呼ばれ、水が温まるころ羽化して抜け殻を残し、大空へと飛び立ちます。

サナギで冬越しする虫

「卵→幼虫→サナギ→成虫」とたどる成長過程は「完全変態」と呼ばれます。カブトムシもそうですが幼虫で冬越しするので、冬の期間をサナギで過ごす虫の代表格はチョウです。チョウの仲間の多くは、サナギの状態で越冬します。

サナギの中はドロドロなので、幼虫はいったんサナギの中で溶かされ、春がくると美しいチョウに変身するのです。完全変態の虫たちは、冬を迎える姿と春に成虫となった姿が、まったく異なるという特徴があります。

成虫で冬越しする虫

成虫になって冬越しするのは、テントウムシ、カメムシ、ハチ、アリなどです。テントウムシは落ち葉の下などに集団で身を寄せ合っています。アリは寒くなると土の中に潜り込み、眠ったように動きません。

アリの冬越しは、一見すると「冬眠」のようです。しかし厳密にいうと、冬眠は体温の調節機能を持つ恒温動物(哺乳類、鳥類)が行うものなので、体温が調節できない変温動物(両生類、爬虫類、魚類、昆虫などの無脊椎動物)は、冬越しと呼んだほうがいいでしょう。成虫で冬越しをする虫たちは、寒さに耐えてじっと身をひそめています。

ダンゴムシも成虫で冬越しする虫です。寒い日は石の下や落ち葉の中で身を寄せ合い、暖かい日はそこから出て枯れ葉や植物を食べています。

ところでダンゴムシは、「ムシ」という名がついていますが昆虫ではなく、エビやカニと同じ甲殻類です。念のため、虫と昆虫の違いも押さえておきましょう。

ひと口に虫と言ってもさまざま

虫と呼ぶときは、昆虫のほかにダンゴムシやクモ、ミミズ、カタツムリなどまで含むのが一般的です。昆虫と呼べるのは、節足動物の中の昆虫綱(こんちゅうこう)というグループに属する生物で、すべて正確に分類されています。

寒い冬でも、虫たちはどこかにいます。見えないところで、春を待つ生命力が息づいているのです。冬の公園を散歩するときは、虫たちのことを考えてみましょう。体が温まるだけでなく、きっと心も温まることでしょう。
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参考資料など

座間谷戸山公園「谷戸山里山四季だより・冬の昆虫たち」、ANT FARM「アリンコなび」、桑袋ビオトープ公園「生き物ものしりシート」