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口腔ケアがインフルエンザ感染予防に 日ごろから行いたい効果的なケア方法

2020/12/16 10:31 ウェザーニュース

今年は発症者数が激減しているとはいえ、気温が下がり空気の乾燥が進むこれからの時期は、インフルエンザに注意したいものです。
インフルエンザの感染予防として、口腔ケアが重要視されていることを知っていますか?

口腔内細菌がウイルスを手助けする?

松本歯科大学口腔細菌学講座の吉田明弘教授は「口の中が不衛生だと、口腔内細菌がインフルエンザウイルスをヒトの細胞内に入りやすくし、活性化させてしまいます」と指摘します。

「ウイルスは自らの力では増殖できず、生きた細胞に入り込んで増殖します。歯周病菌が出すプロテアーゼ(タンパク質分解酵素)は、ウイルスが細胞に吸着するのに必要な表面タンパク質を細胞に吸着しやすくすることで、インフルエンザウイルスが気道の上皮細胞へ吸着・侵入するのを手助けします。

また、口腔内細菌が生み出すノイラミニダーゼという酵素は、細胞内で増殖した子孫ウイルスが細胞外に放出されるのを促進して感染を拡大させるのです。したがって、口の中を清潔にして口腔内細菌を減らすことがインフルエンザ感染症予防につながります」(吉田教授)

口腔ケアでインフルエンザ発症率が減る

感染予防のための口腔ケアには、自分で行う歯磨きなどのセルフケアと歯科医院で行うプロフェッショナルケア(歯石の除去など自分ではできない専門的なケア)があります。

「セルフケアでは、食後に丁寧な歯磨きを行い、デンタルフロスや歯間ブラシなども使って食べカスをしっかり取り除いて細菌の繁殖を防ぐようにしましょう。

また、ある調査では、歯科衛生士による口腔ケアはセルフケアと比較してインフルエンザ発症率を約10分の1に減らしたことが報告されています。もちろんセルフケアも必要ですが、歯科医院でプロフェッショナルケアを定期的に受けることが大切です」(吉田教授)

セルフケアは舌苔(ぜったい)の清掃も

日ごろからのセルフケアで見落としがちなのは舌の清掃です。同大学公衆衛生学講座の山賀孝之教授は、口腔内を清潔に保つためには歯磨きに加え舌の清掃も必要だと話します。

「鏡で舌の奥を見てください。舌の表面に付いている白っぽいコケのようなものを舌苔と言います。さまざまな細菌や口の中の剥がれ落ちた細胞、食事の食べカスなどが集まったもので、口臭の発生源でもあります。この舌苔を取り除いて口腔内の細菌を減らすことが、インフルエンザの発症を抑えることにもつながります」(山賀教授)

舌磨きのポイントは次のとおりです。
▼1日1回、起床時に行うのがおススメ。
▼歯磨きの後、市販の舌ブラシを用いで舌をキレイにする。
▼舌ブラシは舌の奥から手前に動かす。
▼舌の粘膜を傷つけないようにやさしく行う。
▼舌ブラシがなければ、タオルを指に巻いて舌を拭いてもよい。

インフルエンザワクチンは重症化を防ぐ効果は認められていますが、完全に感染や発症を防げるわけではありません。「ワクチン接種を受けているから大丈夫!」と安心せず、毎日の歯磨きや舌磨きを丁寧に行い、歯科医院でプロフェッショナルケアを受けるなどして、インフルエンザ予防に努めたいですね。

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