facebook line twitter mail

おむすびの具や弁当の定番は「サケ」? それとも「シャケ」?

2020/12/13 12:24 ウェザーニュース

白鮭が出回る時期です。ところであなたは「鮭」をどう呼びますか? 鮭の切り身の画像を見てもらい、何と呼ぶことが多いか大規模アンケート調査を行ったところ、「シャケ」派が6割を超えていました。「サケ」と「シャケ」、なぜ2つの呼び名が生まれたのでしょうか。

62%が「シャケ」と呼んでいる

ウェザーニュースが、「『サケ』と『シャケ』、何と呼ぶことが多いですか?」というアンケート調査したところ、62%が「シャケ」と回答しました(2020年11月21〜22日実施、7982人回答)。「シャケ」が多数派だったのです。

地域別に見ると、全国的には少数派の「サケ」が優越していたのが甲信(60%)、北陸(57%)、中国(50%)で、他の8地域は「シャケ」が多数派だったのです。

「シャケ」は“江戸っ子訛り”?

「一般名称は『サケ』で、『シャケ』は地方名とされています。文献によると、その地方は東京で、いわゆる“江戸っ子訛(なま)り”と解説されています」と言うのは、歳時記×食文化研究所の北野智子さんです。

しかし、北野さんは“江戸っ子訛り”説に疑問を持ちます。“江戸っ子訛り”は「シ」と「ヒ」が入れ替わるので、「東」を「シガシ」、質屋を「ヒチヤ」と言ったりします。

「『サケ』が『シャケ』になるのが“江戸っ子訛り”なら、『鯖(サバ)』を『シャバ』、『秋刀魚(サンマ)』を『シャンマ』と言うかといえば、そういう記録はありません。“江戸っ子訛り”説は怪しくなりました」(北野さん)

「鮭」は「フグ」の古名だった

「漢字から由来を調べてみると、『鮭』は本来『フグ』と読み、河豚の古名でした。『鮭』のつくりの『圭』が『怒(いか)る』を表し、フグは怒るとマリのように腹が膨れる魚だからです。『サケ』の本字は『ナマグサ(生臭)』を意味する『鮏』で、『鮭』は俗字で後世の使用だといいます」(北野さん)

ちなみに、今の中国でサケは「三文魚」と表記されています。安っぽい魚のように聞こえますが、英語のsalmon(サーモン)から来ているそうです。

「シャケ」の語源はアイヌ語だった

北野さんがさまざまな文献を調べた結果、一つの結論に達しました。

「シャケの語源は、アイヌ語で“夏の食べ物”を意味する『シャケンベ』から来たというのが一番信頼できる説です。シャケは東北や北陸地方でも獲れましたが、一大産地といえば北海道です。江戸時代にアイヌとの交易でもたらされた『シャケンベ』が『シャケ』として流通していたと思われます」(北野さん)

旬の秋に獲れる鮭を「アキアジ」と呼ぶことがあります。この呼び名も、「秋の魚」を意味するアイヌ語の「アキアチップ」が転訛(てんか)したものだと北野さんが付け加えます。

「サケ」の地方名とされた「シャケ」が、実は「サケ」の本場の北海道の先住民族アイヌの「シャケンベ」が語源の可能性があるというのです。すると「サケ」という呼び名も、「シャケ」から来ているのかもしれません。

今が旬の鮭。その呼び名に思いをはせながら、美味を堪能してはいかがでしょうか。
» ウェザーニュース記事一覧

参考資料など

『飲食事典』(本山荻舟/平凡社)、『たべもの起源事典』 (岡田哲編/東京堂出版)、『たべもの語源辞典』(清水桂一編/東京堂出版)、『魚へん漢字講座』(江戸家魚八/新潮文庫)