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「秋麗(あきうらら)」「錦秋(きんしゅう)」…「秋」がもっと豊かになる美しい言葉

2020/10/29 13:49 ウェザーニュース

あなたが好きな季節はいつですか?
秋は日が短くなって物悲しい気分になるから嫌いという人がいるかもしれません。しかし、秋は大気が澄み、山が色づき、収穫の季節です。秋がもっと豊かになる美しい日本語を近年、人気が高まっている俳句の季語から味わっていきましょう。

【秋高し(あきたかし)】

秋になると大気が澄むので、空が高くなったように見えます。秋によく見られるすじ雲(巻雲)、うろこ雲(巻積雲)も空の高さを感じさせます。

<秋高し雲より上を鳥かける>正岡子規

【錦秋(きんしゅう)】

木々が紅葉して、錦(にしき)の織物のように美しい秋です。錦とは何色もの色糸で地色と模様を織り出した織物の総称ですが、美しいもの、りっぱなものを例える言葉でもあります。

<野の錦山の錦は繪の錦>正岡子規

【秋麗(あきうらら、しゅうれい)】

たんに「うららか」というと春の季語ですが、「あきうらら」というと秋晴れの心地よい気候でのどかなことを言います。

<阿蘇の牛道に寝てゐて秋うらら>大久保橙青

【秋入梅(あきついり)】

「あきつゆいり」が音変化して「あきついり」となります。秋雨前線がかかって梅雨のように降り続く秋の雨を言います。

<はてもなく瀬のなる音や秋入梅>史邦

【秋の日は釣瓶落とし(あきのひはつるべおとし)】

7〜11月は日中の時間か1か月に約1時間ずつ短くなっていきます。秋の日は急に暮れるようすを井戸の中に釣瓶が早く落ちてゆくことにたとえています。

<釣瓶落とし日に七便の一輌車>道川虹洋

【山粧う(やまよそおう)】

北宋の画家・郭煕(かくき)の「秋山は明浄にして粧うがごとく」から、秋の山が紅葉によって色づくようすを言います。ちなみに他の季節は「春山は淡冶(たんや)にして笑うがごとく」「夏山は蒼翠(そうすい)にして滴るがごとく」「冬山は惨淡(さんたん)として眠るがごとく」です。

<山粧う人も装うおのづから>山口青邨

【紅葉かつ散る(もみじかつちる)】

ここで「かつ」は2つのことが並行して同時に生じることを言います。したがって、紅葉が散るのではなく、葉が紅葉(こうよう)して散ることです。

<紅葉かつ散る轟音の如く散る>金子兜太

【冬隣(ふゆどなり)】

まわりの景色や雰囲気から冬の気配が感じられる晩秋のことです。そろそろ冬支度をしましょうか。

<くらがりへ人の消えゆく冬隣>角川源義


日が短くなり次第に寒さがつのる秋ですが、空の色や気候の移り変わり、街中や野山の変化に目を向ければ、なんと饒舌で彩り豊かなのでしょう。まわりの風景に目を向けて、深まりゆく秋の移ろいを楽しんではいかがでしょうか。
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参考資料など

『俳句歳時記 秋』(角川ソフィア文庫)、『ことばの歳時記』(山本健吉、角川ソフィア文庫)、『絶滅寸前季語辞典』(夏井いつき、ちくま文庫)