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加熱しても要注意 カレーの食中毒予防法

2020/08/14 11:30 ウェザーニュース

暑い夏こそ食べたくなる「カレーライス」。一度にたくさん作って「2日目のカレー」を楽しみにしている方も少なくないと思います。

しかし、この時期はカレーによる食中毒が頻発します。「夏はカレーが大好きな食中毒菌が活発になりやすいので、食中毒が増えるのです」と横浜相原病院(神奈川県横浜市)の吉田勝明院長は言います。

食中毒の原因は加熱に強いウェルシュ菌

カレーの食中毒の原因菌はウェルシュ菌。夏のカレーの調理過程がウェルシュ菌の増殖に好条件となります。

ウェルシュ菌は、カレーの材料になる肉や魚介類、野菜に付着しています。またカレーは大量に加熱調理されることが多い上に、室温で数時間放置されることが多いという点が菌を繁殖させてしまうのです。

「一般的に菌は熱に弱いとされていますが、中には熱抵抗性が強い菌もあり、ウェルシュ菌もそのタイプです。ウェルシュ菌は『芽胞』(がほう、細菌の胞子のようなもの)をつくり、この芽胞は熱に強くて100℃で1時間加熱しても生き残ります。そしてカレーが50℃前後に冷めると芽胞が芽を出して繁殖を始めます。

加熱調理されたカレーをそのまま放置すると、今の時期はなかなか冷めないので、ウェルシュ菌が繁殖する至適温度(43~45℃)や増殖可能な温度帯(12℃~50℃)が長く保たれます。特に至適温度下では、死滅しなかった菌が爆発的に増殖するのです。

体内に入ったウェルシュ菌は、腸管内で増殖して芽胞をつくりますが、芽胞をつくるときにエンテロトキシンという毒素をつくります。その毒素によって、下痢や腹痛といった食中毒特有の症状が現れるのです」(吉田先生)

菌の性質を知って食中毒予防

食中毒予防の3原則は「菌をつけない・増やさない・やっつける」ですが、ウェルシュ菌食中毒の予防は特に「菌を増やさない」ことが大切です。増やさないためには、菌の発育に適した環境をできるだけ避けましょう。ウェルシュ菌が増殖するのは12〜50℃で、特に43〜45℃の至適温度では急速に増殖します。

「食品を保存する場合は、10℃以下に急速に冷却するか55℃以上を保てばよいということです。温めた状態で保存する場合は、常に55℃以上で保温すれば菌の増殖を防げます。また、冷やすときは一気に10℃以下に冷却して、菌の増殖可能な温度帯(12~50℃)にいる時間をできるだけ短くすることがポイントです」(東京都健康安全研究センター)

東京都健康安全研究センターは、カレー完成後に「小分けして冷蔵」「鍋ごと冷蔵」「鍋ごと常温」の3タイプに分けて保存し、それぞれのカレー中心部の温度を測る実験を行いました。その結果、「小分けして冷蔵」する場合がウェルシュ菌が増殖する温度帯を短くすることが分かりました。

同研究センターでは、カレーなどが余った場合には以下のことがウェルシュ菌の増殖予防につながるとしています。

(1)加熱調理後に平たい容器に小分けしてカレー内部の温度を早く下げること

(2)再加熱は、かき混ぜて加熱むらのないようにカレー内部までアツアツにし、再加熱後は早く食べるようにする


「煮込み料理は加熱をしているから安心」と思い込んでいる人もいるかもしれませんが、加熱しても生き残る菌もいます。

特に夏場は細菌が増殖しやすい環境です。しっかり予防して、安全な食生活を送りましょう。
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参考資料など

東京都健康安全研究センター「『二日目のカレー』のウェルシュ菌増殖・殺菌実験」