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2013年から面積が10倍に拡大、西之島のいま

2020/07/18 11:43 ウェザーニュース

東京のはるか南1000kmに浮かぶ小笠原諸島・西之島(にしのしま)が噴火を始めたのが2013年。噴火前は0.29平方キロメートルだった島は10倍の2.89平方キロメートル(2019年5月)に広がり、なお成長中です。その結果、EEZ(排他的経済水域)は100平方キロメートル拡大しました。

新島が「西之島」を飲み込んだ

西之島が有史以来初めて噴火したのは1973年。面積0.07平方キロメートルだった島は0.29平方キロメートル(1999年)に広がりましたが、荒波に侵食されて海岸線が後退していました。

ところが、2013年11月20日、西之島の南南東500mで海底火山が噴火し、直径200mほどの新島が誕生しました。6日後には溶岩流が西之島の南岸に到達。なおも噴火と溶岩流出が続き、噴火から1ヵ月後には新島が西之島を飲み込む形で一体化しました。
噴火から2年後に西之島の面積は2.29平方キロメートル(噴火前の8倍)、昨年は2.89平方キロメートル(噴火前の10倍)へと成長を続けます。今は標高が207mと噴火前(25m)の8倍以上になり、今年7月4日には観測史上最高の8300mの噴煙が確認されています。

航空機で観測を続ける海上保安庁

海上保安庁は羽田航空基地から航空機を飛ばして西之島の火山活動を継続的に観測しています。

「双発のプロペラ機なので羽田空港から片道約2時間。西之島の周辺を旋回しながら動画と静止画を撮影して、うちのホームページで公開しています」(海上保安庁海洋情報部)

月に1〜2回は航空機による観測を行っていますが、噴火活動が活発になると数日間隔で観測することもあるそうです。

西之島の地形図と海図を改版

国土地理院と海上保安庁は昨年5月、西之島の地形図と海図を改版しました。2013年の噴火以来2回目の改定です。西之島の面積は噴火前0.29平方キロメートルだったのが2017年には2.73平方キロメートル、さらに2019年に2.89平方キロメートルと拡大しました。その結果、「管轄海域」(領海+EEZ)は2017年の改定で50平方キロメートル増、2019年の改定でさらに50平方キロメートル増、合わせて100平方キロメートル増えたというのです。

これは沿岸から12海里(約22km)を主権が及ぶ領海、200海里(約370km)を水産・鉱物資源を排他的に管理できるEEZとする国連海洋法条約に基づいています。

ちなみに、日本の国土面積は約38万平方キロメートルですが、管轄海域は約447万平方キロメートルになります。世界では米国、オーストラリア、インドネシア、ニュージーランド、カナダに次ぐ6位です。島国ならではの海洋大国なのです。

西之島は将来も立ち入り制限

西之島は噴火がおさまったときに研究者が許可を得て上陸して調査したことがありますが、現在は噴火中なので上陸はもちろん沿岸から1.2海里(約2km)以内に接近することも禁止されています。

将来、噴火がおさまっても、一般の人が西之島に上陸することはできそうにありません。というのは、溶岩におおわれて生物が死滅した後、渡り鳥が営巣していることが確認されましたが、人為的な影響がほとんど及ばない貴重なエリアだからです。

西之島の環境を所管する環境省は、西之島への上陸は「保全に必要な調査を行う研究者だけを対象とし、その調査頻度も必要最小限の頻度の上陸に制限する」としています。西之島と同じ小笠原諸島の無人島「南硫黄島」の上陸調査は10年以上に1回ですから、やはり西之島は“遠い島”のようです。海上保安庁のサイトで西之島が成長する様子を見守りたいものです。

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参考資料など

「西之島の地形図と海図を改版」(国土地理院・海上保安庁)、海上保安庁海洋情報部「西之島」(https://www1.kaiho.mlit.go.jp/GIJUTSUKOKUSAI/kaiikiDB/kaiyo18-2.htm)