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大雨の原因は大量の水蒸気輸送
インド洋の高温も関与か 令和2年7月豪雨

2020/07/10 21:06 ウェザーニュース

7月3日(金)以降、停滞する梅雨前線と湿った空気の影響で西日本や東海を中心に断続的に激しい雨が降り、川の氾濫による大規模な浸水や土砂災害などの被害が相次いでいます。気象庁はこの継続中の現象について、「令和2年7月豪雨」と名称を定めています。

今回の大雨では、特に九州などで総雨量が多くなっていることが特徴となっていて、これは大量の水蒸気輸送が続いていることが原因とみられます。

複数都道府県で平年の2倍以上の雨

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雨量の平年比
今回の一連の大雨では、これまでに熊本県や鹿児島県、高知県、和歌山県などで、1週間の雨量が1000mmを超えています。

福岡県や長崎県などの大雨特別警報が出た地域でも、総雨量が平年の2倍以上となっています。

インド洋や太平洋の気圧配置が影響か

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気圧配置の模式図
大量の水蒸気輸送が続いている原因のひとつとして考えられるのが、インド洋の海水温が平年よりも高くなっていることです。気象庁の解析では、この春のインド洋熱帯域の平均海面水温は、2016年以来の高い水準でした。

このため、インド洋では雲の発生・発達が起こりやすい状況で、その反動で相対的にフィリピン付近の北西太平洋では下降気流が強まり、太平洋高気圧が普段よりも西側にも張り出すことに繋がっているものとみられます。

この現象は「インド洋キャパシタ」と呼ばれることがあり、エルニーニョの収束から少し遅れて発生することがあるといわれます。

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気圧配置の模式図
その結果、太平洋高気圧の周囲をまわってフィリピン海方面からやってくる暖かく湿った空気の流れが強まり、さらに梅雨前線に沿って西から流れてくるインドモンスーンの暖かく湿った空気の流れと合流し、南西から大量の水蒸気を送り込んでいます。

これらの影響に加え、上空のジェット気流の蛇行により日本の西に気圧の谷が顕在化し、日本付近で雨雲を発達させやすい状況となっていることも理由のひとつです。

特に今回の一連の大雨では、運ばれてきた水蒸気の量やその空間的・時間的な輸送密度(水蒸気フラックス)が際だって多いことが特徴です。継続的な大量の水蒸気の供給は、次々に雨雲を発達させ非常に危険な状況を作り出します。

状況は継続中 来週も引き続き警戒を

梅雨前線が西日本から東日本付近に停滞しやすい状況は、今後少なくとも1週間程度は継続する予想です。

来週になると多少前線の南北の動きが大きくなって、同じ場所に停滞する危険な状況は減る可能性がありますが、雨雲の発達しやすい状況は変わらない見込みです。

これまでに被害を受けた地域では、雨で復旧作業に支障が出るほか、多少の雨でも洪水や土砂災害に繋がるおそれがあるため、身の安全を第一に考えるようにしてください。

また、これまでに被害の発生していない場所でも今後災害が発生するおそれがあります。危険な状況になってからでは避難は間に合いません。これまで大丈夫だったからと他人事にせず、早めの避難を心がけてください。
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