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コンクリートを食べるってホント!? 知られざるカタツムリの世界

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2020/06/20 05:18 ウェザーニュース

6月は雨が多い時期。梅雨どきのうっとうしい気分を癒してくれる存在が、植物ではアジサイ、そして動物ではなんといってもカタツムリではないでしょうか。木々の枝先やブロック塀の上など、どこにでも見られる愛らしい姿のカタツムリ。

「コンクリートを食べる」との説もありますが、その生態についてはよく知らないという人が多いのではないでしょうか。カタツムリを含む貝類全般が専門の豊橋市自然史博物館学芸員・西浩孝さんに、“カタツムリの真実”を伺いました。

地域によって種が異なる!?

「カタツムリは日本に800種ほど生息していますが、『ご当地カタツムリ』といわれるほど、地域によって生息する種が異なっているのです。関東地方でよく見られるのはミスジマイマイ、東海ではイセノナミマイマイ、関西ではクチベニマイマイ、九州ではツクシマイマイです。いずれも体長3~4センチで見た目も似ていますので、区別しにくいと思います。高知県にすむアワマイマイが日本では最も大きく、殻の直径が8センチほどになります」(西さん)

カタツムリは陸にすむ貝の仲間で、おなじみの円形の殻をもったもののほかに、細長かったりフタを持っている種もいるそうです。似た姿で殻をもたないナメクジも、「陸上で進化した貝類としては同じグループで、殻が退化したもの」(西さん)だそうです。

「梅雨どきに目立つカタツムリですが、もちろん一年中生息しています。暑さと乾燥が苦手なので、夏場は長い『夏眠(かみん)』をとり、冬場も冬眠し、晴れた日は日陰になる木の葉の裏などで休んでいるため、雨の日以外に姿が見えないのです。

成長のたびに“住まい”を取り換えるヤドカリと違い、カタツムリの殻は生まれたときから付いていて、体とともに大きくなります。中には胃や肝臓などの消化器、心臓、生殖器などが収まっています。さらに空気中で呼吸をするために、海にすむ貝類にはない肺もあります。殻と体は筋肉で結ばれていますが、もし外れると中身が乾燥して死んでしまいます」(西さん)

「コンクリートを食べる」って本当!?

カタツムリは何を食べて生きているのでしょうか。コンクリート壁などでもよく見かけますが、本当にコンクリートを食べるのでしょうか。

「カタツムリはおもに藻類(そうるい)、ほかにキノコや野菜類も食べます。コンクリートやガードレールなどをはいずりながら、表面に生えている緑色の藻類を、歯舌(しぜつ)という器官で削り取って食べます。

殻をつくるために必要なカルシウムを摂るため、それを含むコンクリートを食べるとよくいわれるし、可能性としてありえる話だとは思いますが、科学的な証明はなされていません。ですから、本当かどうか尋ねられると、残念ながら『私にはわかりません』とお答えしています」(西さん)

新型コロナウイルスの影響による学校や公園の閉鎖が、次第に解除されています。外で遊ぶ機会が増えた子どもたちにとって、突っつくとひょいと引っ込むカタツムリの触角や雨の日にブロック塀などをゆっくりとはう姿は興味深いものです。

「触角は軽く触っても問題ありません。カタツムリは頭を振りながら大触角で障害物を探って歩いていますので、『何かにぶつかったかな』と感じる程度だと思います。ただし、寄生虫が付いている場合がありますので、触ったあとは必ず手をきれいに洗いましょう。塩をかけると弱るのは、浸透圧の関係で体内の水分が外に出てしまうからです」(西さん)

西さんによると、日本にすむカタツムリのなかにも、まだ名前の付いていない“未記載種”が多数いるそうです。「でんでんむしむし」で始まる童謡「かたつむり」でも口ずさみながら、かわいらしくも謎多きカタツムリを、じっくり観察してみてはいかがでしょうか。
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