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いくつ知っていますか? 趣深い雨の言葉

2020/06/14 05:32 ウェザーニュース

日本語には、雨を表す言葉がたくさんあります。国土のほとんどが温帯湿潤気候区に属し、雨の多い土地であるために、先人たちは雨の特徴を感じ取り、それを言葉で表していったのでしょう。

梅雨の時季は、うっとうしく感じることが多いかもしれませんが、雨を表す豊かな表現に触れて、梅雨ならではの風情をしばし感じてみませんか。

「五月雨」は5月に降る雨?

五月雨


「さみだれ」と読むことが多いですが、「さつきあめ」とも読みます。「五月の雨」と書くため、文字どおり、(現在の)5月に降る雨と思う人もいるでしょう。しかし、この「五月」は旧暦の5月のことです。旧暦の5月は、現代では6~7月上旬にあたるので、「五月雨」は梅雨のころに降る長雨のことです。また、梅雨のことを表すこともあります。

長雨


長く降り続く雨のことで、「ながあめ」と読みます。昔は「ながめ」とも読んで、和歌などでは、物思いにふける意の「眺め」にかけて使われたこともあります。「長雨(ながめ)」として、『万葉集』でも詠まれています。

群雨/叢雨/村雨


「群がって降る雨」の意で、「むらさめ」と読みます。激しく降ったかと思うと、すぐにやんだり弱くなったりする雨です。「村」は当て字ですが、雨に濡れた村々の状況が浮かぶようでもあります。

「にわか雨」「驟雨(しゅうう)」は「むらさめ」と同義語です。小説家の吉行淳之介は『驟雨』で芥川賞を受賞していて、同じく小説家の藤沢周平には『驟り雨(はしりあめ)』という作品があります。雨は作家の創作意欲をかき立てるのでしょう。

「ばいう」「つゆ」は、なぜ「梅雨」「黴雨」と書くのか?

梅雨/黴雨


「ばいう」、または「つゆ」と読みます。6月から7月にかけて降る長雨やその時節のことです。「梅雨」と書くのは、梅の実が熟すころに降る雨だから、「黴雨」と書くのは、黴(かび)が生じやすいころに降る雨だから、などといわれます。

梅雨寒


「つゆざむ」、または「つゆさむ」と読みます。梅雨の時季は夏ですが、寒くなる日もあります。こうした、梅雨時の季節はずれの寒さを「梅雨寒」といいます。

同じく「つゆさむ」あるいは「つゆざむ」と読む「露寒」という語もありますが、こちらは、露が霜に変わるころの寒さをいいます。

空梅雨


読み方は「そらつゆ」ではなく、「からつゆ」です。梅雨に雨がほとんど降らないことで、「照り梅雨(てりつゆ)」ともいいます。

雨の日が続くと、心がふさぎがちですが、空梅雨は水不足を招いたり農作物に悪影響を与えたりするので、空梅雨がよいとは限りません。

雨は天からの恵みでもある

雨は人生に変化や恵みをもたらしてくれるものでもあります。

遣(や)らずの雨


帰ろうとする人を引き止めるかのように降る雨のことです。川中美幸さんが歌った『遣らずの雨』(作詞/山上路夫、作曲/三木たかし)というヒット曲もあります。

慈雨


「じう」と読み、万物を潤し育てる雨、あるいは、日照りが続いているときに降る雨のことです。

「干天(かんてん)の慈雨」は、日照りのときに降る恵みの雨です。そこから転じて、待ち望んでいたことや、ありがたい救いの手のたとえにも使われます。

天つ水


「あまつみず」と読み、「天の水」の意味です。空の上には神聖な水がたたえられていたと、古代の人たちは信じていたようです。

雨水を天から注がれる恵みの水と考えると、梅雨の時季もまた違った気持ちで過ごせそうです。
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参考資料など

『広辞苑』(岩波書店)、『大辞泉』(小学館)、『明鏡国語辞典』(大修館書店)、『季刊 SORA』2010年梅雨号、2011年梅雨号の「幸福になれる季節の言葉」(文/山下景子)