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なぜホタル(蛍)は光るのか? 地域によって光る長さが違う?

2020/06/06 15:00 ウェザーニュース

梅雨が近づくと、各地でホタル(蛍)の光り輝く姿を目にすることができるようになります。日本では古くから万葉びとをはじめとして、幻想的な「蛍の光」は人々を魅了し続けてきました。どうしてホタルは光るのでしょうか。山口県下関市立「豊田ホタルの里ミュージアム」学芸員の川野敬介さんにお話を伺いました。

光には意味があるのか

「ホタルの発光は一般的に、オスとメスの出会いのためと考えられてきました。しかし、その必要がないはずの産卵を終えたメス、さらにはサナギや幼虫、卵までもが光を発します。そこから、ホタルが発光する目的が、単にオスとメスとの求愛のサインといったものではないことがわかります。いずれにしても、まだまだホタルが光るしくみや役割には、多くの謎が残されているのです」(川野さん)

日本にはゲンジボタルやヘイケボタル、ヒメボタルなど、約50種のホタルが生息しています。体長約15㎜と大型で光が明るいゲンジボタルはその代表とされ、本州・四国・九州本土のほか、対馬や五島列島(いずれも長崎県)などの離島にも生息します。ゲンジボタルは地域や気温にもよりますが、おおむね5月末から6月中旬、20時15分頃から21時30分頃にかけて発光します。22時頃からはあまり光を発しなくなるそうです。

「ホタルが発光するしくみは、化学反応によるものです。化学反応とは、物質同士が反応しあって違う物質に変化することをいいます。ホタルの場合は体内の『ルシフェリン』という物質が酸素と結びついて光を出し、『ルシフェラーゼ』というタンパク質がその反応を手助けしているのです」(川野さん)

ゲンジボタルの成虫では、ルシフェリンとルシフェラーゼは尻の部分に黄色く見える「発光器」の中に存在します。ルシフェラーゼはホタルによって性質に違いがあり、よく見られる黄緑色以外にも、黄色やオレンジ色などを発光する種もあります。なお、ホタルの光は熱をもたないそうです。

発光についての最新の研究

「最近の研究では、ホタルのサナギは尻だけでなく頭も光り、幼虫や卵もそれぞれ違ったしくみによって発光することが発見されました。一説によると、ルシフェリンとルシフェラーゼによる化学反応は、ホタルにとっては『毒』として作用する体内の酸素を失わせる目的で、発光はその“おまけ”。光にはとくに役割はないとする見方もあります」(川野さん)

同じゲンジボタルでも、明滅の間隔が東日本では4秒、西日本・四国では2秒、中間の山梨県付近では3秒ほどですが、五島列島では1秒と大きな違いがあることが、川野さんや長崎大学教育学部の大庭伸也准教授らによる研究で今年2月、初めて明らかにされました。

「ホタルの明滅間隔は、気温や個体密度が高いほど短くなるといわれています。間隔の差は遺伝子がそれぞれ異なるためと思われますが、そのパターンはいまだに見つかっていません。ホタルに秘められた謎は、まだまだ解明し尽くされていないのです」(川野さん)

ホタルが光る時季、「豊田ホタルの里ミュージアム」周辺では例年、川に船を浮かべて清流の水面に映って倍増するホタルの光を堪能する催しなどが行われてきたそうです。

今シーズンは新型コロナウイルスの影響もあり、各地の観察会などの中止も相次いでいるようですが、「3密」と暗い中での足元の安全に注意しながら、ホタルの乱舞を楽しんでみてはいかがでしょうか。
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