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初夏の食中毒を防ぐには? 専門家に聞く食中毒菌を増やさないワザ

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2020/05/07 05:40 ウェザーニュース

初夏から夏場にかけて、湿度が高くなり蒸した気候になってくると、細菌による食中毒が一気に増えてきます。まだ、それほど暑くなっていないからといって、油断は大敵です。この時季から心がける食中毒予防について宮城大学の金内誠教授(生物環境調節学)に伺いました。

食中毒菌を増やさないためには!?

「よく食中毒予防の3原則として、食中毒菌を『付けない、増やさない、やっつける』といわれますが、まずは細菌を付けないことです。よく洗い、ラップなどで包むなどの対策で防ぎましょう。

しかし、空気中にもたくさんの細菌がいます。少しでも食品に付いてしまえば増えてしまいます。そのため増やさない工夫が必要です。増やさないためには、調理後、早く食べること。残ったらすぐに冷蔵や冷凍などで保存することです。つまり、細菌が嫌いな棲みにくい環境を作ることです」

温度を下げるのと同時に行う「増やさない」ための効果的な方法はありますか?

「細菌は、低いpH(酸性)が大嫌いです。このことは細菌の知識がない時代から知られていました。お弁当に入れていた梅干しがその代表例ですが、足がはやいといわれるサバやアジは、酢で〆て細菌の増殖を防ぎ、腐敗を防いでいました。生姜やラッキョウなどの野菜も酢漬けにして腐敗を防いでいます。生の切り身を素手で握る寿司でも、静菌効果のある酢を「手水」に使っています。食酢はpHの低下だけでない静菌効果を持つことが知られています。

また、インドには、鶏肉をヨーグルト(乳酸菌が生育している)に漬け込んでから調理するタンドリーチキンがあります。乳酸菌は、バクテオリシンという抗菌性物質を作るものがあり、静菌効果的にはpHの効果と抗菌性物質効果があるのです。

アルコールの静菌効果という点では、酒粕漬けも有効です。酒粕はそのままで10%のアルコール分を含んでいます。これに味噌を加えることで、3~5%程度になりますが、十分に菌の増殖を緩やかにする効果を持ちます。肉を酢で煮たものや、粕漬けを食材にしたお弁当は、温度管理と共に併用すると食中毒予防の一つとなります」(金内教授)

カレーの保存も要注意

食中毒の細菌にはと3つのタイプがあるといいます。

「一般的に食品は非常に栄養素が多く、その食品に細菌が付着すると湿度や温度などの環境が整えばすくすく生長します。日頃、私たちが食べている食品は栄養が豊富ですから、細菌だって大好きなわけです。

食中毒の細菌には、3つのタイプがあります。1つ目は、細菌が体内で増えて食中毒を起こすタイプ。サルモネラやカンピロバクター(動物の腸管にいる)や腸炎ビブリオ菌(魚にいる)です。

2つ目は、細菌が食品中で増殖して毒素が作られ、食中毒を起こすタイプ。この細菌の仲間には、黄色ブドウ球菌やボツリヌス菌があります。

3つ目は、生体内毒素型とよばれ、細菌が体内で増えると毒素を作り、食中毒を起こすタイプ。その代表がカレーの食中毒の原因菌でもある、ウェルシュ菌などです」(金内教授)

これからの時季はカレーの食中毒も頻発するといいますが、カレーの保存で注意することはありますか?

「食品は加熱殺菌が重要です。多くの菌種は、75℃以上(85℃以上で確実)、1分以上の加熱で殺菌されます。ところがカレーなど粘度が高い食品は、温度が均一にならず、温度『むら』ができることがあります。ごくまれですが温度耐性を持つウェルシュ菌などは、カレーなどで増殖し食中毒を引き起こすことがあります。

『ひと晩寝かせたカレーが美味しい』といって余ったカレーを冷蔵庫に入れず室温で冷ましているケースは要注意。十分に加熱し、細菌を滅菌後に、耐熱性のあるジッパー付きの袋に入れ、水の中で粗熱を取ってから冷凍するといいでしょう。小分けして解凍することで食中毒も防げます」(金内教授)

最後に、金内教授は食中毒の予防には日頃から安全な菌種を摂取するプロバイオティクス効果(腸内フローラを改善する)をすすめています。ぬか漬け、納豆、味噌、ヨーグルトなど発酵食品がプロバイオティクス食品になります。

気温や湿度が高くなり、細菌による食中毒が増える時季です。細菌に対して耐性のある体を日々の発酵食品で作っておくことも大切ですね。

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