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熊本地震から4年、熊本城の復旧はいま

2020/04/16 10:09 ウェザーニュース

2016(平成28)年4月14分日21時26分、熊本地方でマグニチュード6.5、最大震度7の地震が発生。さらに4月16日1時25分、マグニチュード7.3、最大震度7など、その後も地震が頻発し大きな被害をもたらしました。

戦国時代に城造りの名手といわれた加藤清正が築城し、日本三大名城の一つとして知られる美しい石垣群や天守閣などの国宝を含む建造物がことごとく損壊しました。なかでも「奇跡の一本石垣」として「飯田丸五階櫓(いいだまるごかいやぐら)」の復旧が大きなニュースになりました。熊本市民のみならず全国の人びとの注目を集めている名城の復旧は、いまどうなっているのでしょうか? 熊本城総合事務所の濱田清美副所長に伺いました。

Q.熊本城の復旧はいまどの段階にありますか?

「熊本城全体の復旧手順や、復旧にかかる具体的な施策や取組みを示した『熊本城復旧基本計画』(2018年3月策定)では、2018年度から2022年度までの5年間を短期、計画期間の終期までの20年間を中期と位置付けています。現在は初期の段階で、計画は概ね予定通り進んでいます」

Q.この1年の復旧に関するトピックスは何でしょうか?

工事用スロープを活用した見学路(写真/熊本城総合事務所提供)
「大天守外観が復旧し、昨年10月5日から特別公開第1弾を始めることができたことが、1番のトピックスとして挙げられると思います。

限られたルートでの工事の無い日曜・祝日のみの公開とはなりましたが、熊本地震から3年半を経て、熊本城は賑わいが戻り、間近で観る天守閣の姿に涙し、笑顔を見せるたくさんの方々の姿がありました。市民・県民に復旧が進んでいることを実感していただける大きな出来事だったと考えています」

Q.石垣の被害状況について教えてください

「熊本城の石垣は、築城者の加藤清正による“武者返し”と呼ばれる、上に向かうにつれ反り返るような独特の勾配を有する石垣が多くあります。加藤清正による築城当初の石垣をはじめ、その子忠広やその後の城主となる細川家が江戸時代を通して増築・補修した石垣が見事に重層的な景観をなしているのが特長です。

平成28年熊本地震では、築城当初の石垣にはあまり被害はなく、江戸時代以降の修復部に大きな被害がありました」

Q.今後の特別公開の予定は!?

「昨年10月5日から開始した特別公開第1弾では、工事車両用として設置したスロープを、工事の無い日曜・祝日は来城者の通路として活用しています。二の丸広場から西大手門跡を通り、重要文化財建造物である宇土櫓や被災した石垣や売店などを眺めながら天守閣前広場まで行き、同じルートを引き返すという限定的な公開です。

現在、準備を進めている特別公開第2弾は、地上5~7mの高さに設置した全長約350mの『特別見学通路』を歩きながら、城内を俯瞰してみていただくことができます。20人乗りの大型EVや多目的トイレなどバリアフリーへの配慮もなされており、通路上からは、二様の石垣を含む天守閣の姿や飯田丸・竹の丸等の石垣の被災状況、東竹の丸の重文櫓群棟の復旧状況などを観覧し、城内から市街地を眺めることもできます。

工事が行われる平日も公開可能となり、来るたびに復旧が進み元気を取り戻していく姿や、四季折々の風情も感じていただけるものと考えています。

ただし、特別公開第2弾はGW初日となる4月29日からの開始を予定していましたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて、延期を決定したところです。開始時期の見通しは立っていませんが、状況が落ち着いたら一日でも早く公開し、たくさんの笑顔と会えることを楽しみに、準備を進めているところです」

Q.いま”復興城主”はどうなっていますか?

「熊本城への寄附制度として平成28年11月に創設した『復興城主制度』には、熊本地震発生から4年目となる現在も多くの寄附をいただいており、復旧を願うたくさんの皆様の応援の声に励まされながら復旧を進めることができています。令和2年3月31日現在での熊本城復旧への寄附金は、約43億6千万円(復興城主・約22億4千万円、熊本城災害復旧支援金・約21億2千万円)となっています」

Q.政府の緊急事態宣言で復旧計画に影響は出ていますか?

「緊急事態宣言を受けて、休校や休業要請、外出や移動の自粛など、様々な動きがあります。熊本城につきましては、関わっておられる施工者等に感染予防対策を行っていただきながら、復旧事業を進めているところです。20年間という計画期間の中では、予測のつかない事象による見直しも有り得ると考えられますが、今のところ、今回の緊急事態宣言による復旧計画全体への影響は出ていません」


熊本地震は、本震、余震というこれまでの考え方や呼称について考え直すきっかけとなる巨大地震でした。また、一方で築城当時の石垣は被害が少なかったという事実も示唆的だと思います。

いま、世界はコロナ禍の最中にありますが、熊本城の復旧は粛々と進められているといいます。400年の歴史は人の力で脈々と続いてきました。私たちは熊本城のかつての威容に出会える日を待ち望むばかりです。
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