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ぜんそくやアトピーも 断熱性の高い家で9つの症状が改善

2020/02/24 05:17 ウェザーニュース

冬場に寒い室内で生活することは、健康に悪影響を及ぼすとされています。部屋を暖かくするには暖房を強めることよりも、むしろ断熱性を高めることが省エネの見地からも重要です。近畿大学建築学部建築学科の岩前篤教授の研究によると、ほぼ無断熱の家から断熱性の高い家に引っ越した人に対する調査では、9つの症状に顕著な改善がみられたといいます。

24,000人の65%が「手足の冷えがなくなった」

岩前教授は2009年、無断熱の家から「まぁまぁ断熱」、「ちゃんと断熱」、さらに「もっと断熱」された家に転居した計24000人を対象に、健康状態について「断熱グレードと改善率」というアンケート調査を行いました。

「その結果、気管支ぜんそく、のどの痛み、手足の冷え、せき、アトピー性皮膚炎、肌のかゆみ、目のかゆみ、アレルギー性結膜炎、アレルギー性鼻炎の、なんと9つの症状について、明らかな改善効果がみられました」(岩前教授)
岩前教授によると、「改善率」とは、前の住まいで症状が出ていた人が、新しい住まいでは出なくなったという割合です。住宅の状態や地域によって差はありますが、「まぁまぁ断熱」(グレード3)は断熱材の厚みが50mm、「ちゃんと断熱」(グレード4)は100mm、「もっと断熱」(グレード5)が200mmのイメージだそうです。現在の国の基準は1991年に定められた「次世代省エネ基準」によるもので、「ちゃんと断熱」のグレード4にあたるそうです。

「たとえば手足の冷えでみると、無断熱から『まぁまぁ断熱』された家に引っ越した人で、症状が出なくなったのは10%でした。ところが『ちゃんと断熱』だと30%、『もっと断熱』されている家に引っ越した人なら、症状が出なくなった人の割合は65%にまではね上がりました」(岩前教授)

健康状態全体でみても、「もっと断熱」の家に引っ越した人の85%が「よくなった」と感じているそうです。

手軽に室内の断熱効果を高める方法は!?

断熱効果を高めるためには家の断熱材を厚くすることがいちばんですが、「アルミサッシを二重窓にすることでも、大きな効果が得られる」(岩前教授)そうです。冬場には室内の熱の60%が窓から逃げていくとの調査結果もあります。実際、岩前教授もご自宅の窓を二重窓に変えた時、それまで5℃以下に下がっていた寝室の室温が、20℃近くに保たれるなど、大きな効果があったといいます。

冷えやせき、のどの痛みに限らず、アトピー性皮膚炎などの肌の悩みや、アレルギー性結膜炎といった症状の改善もみられました。「室内が暖かくなったことで身につける衣類の量が減ることによると考えられています。実は、衣類が人間の皮膚に与えるストレスは、大きなものなのです」(岩前教授)

もっとも、賃貸住宅などで暮らしている場合、断熱材の取り付けや二重窓の設置といったリフォーム自体が難しい場合もあります。そんなとき、窓から暖気を逃がさないためには、ホームセンターなどで販売されている「断熱シート」のほか、梱包材に使われる「プチプチ」や「アルミシート」も、ある程度の防寒効果があります。いずれも窓と室内との間に、熱を通しにくい空気の層を作って、室内の暖気をなるべく逃がさないようにするのです。

また、窓のサッシに隙間テープを貼り、隙間風を入れないようにすることも一定の効果があります。部屋に雨戸・シャッターが取り付けられていれば夜間は必ず閉め、窓ガラスを冷やさないようにすることも心掛けましょう。

断熱効果の高い家は、暖房費の削減にもつながります。長い目でみて、健康によく、省エネ効果の高い家で暮らすこと考えてみてはいかがでしょうか。
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