台風や豪雨被害
日本でも世界でも気候変動がもたらす新たな災害
(田中部長)
依田さんは気象予報士として全国を飛び回っていますが、これまで何ヵ所くらい訪れたのですか?
(依田さん)
年間で300ヵ所ほどになります。調べたことはありませんが、世界一移動距離が長い気象予報士だと思います。ギネスブックに載せてもらいたいです(笑)。
(田中部長)
どうりで全国各地から毎日のようにお見受けしているわけですね。
(依田さん)
私のテレビ中継(「グッドモーニング」/テレビ朝日系列)が始まったのは2011年4月ですから、東日本大震災の3週間後です。そのため、最初の1年はよく東北に行きました。被災地を見て回って、少しでも被災地の生活や復旧状況などをみなさんにわかってもらおうとしました。
(田中部長)
今年は台風15号で被害のあった千葉県にも行かれましたね。
(依田さん)
はい、今年9月の終わりに台風15号が直撃して大きな被害が出た現場に行きました。
千葉県に車で入ると、屋根にブルーシートがかかっている家がポツポツと見え、南房総を進むとそれが増えて、最終的にすべての家が被害を受けている。市原市でゴルフの練習場のポールが倒れて家にのしかかっている現場にも行きましたが、あんな鉄柱が倒れるような風が吹くとは誰も思っていなかった。そんなことが日本でも起こって驚きました。
(田中部長)
ブルーシートで町が覆われているような状況でしたね。これまで日本の場合、自然災害といえば地震で、首都直下地震や南海トラフ地震を考えていましたが、最近は雨や風による災害も目立ちます。
(依田さん)
こうした深刻な気象災害は日本だけでなく、最近は海外でもしばしば発生しています。1つはハリケーン「ドリアン」がカリブ海のバハマやアメリカを直撃しました。日本も台風19号が「スーパー台風」と言われましたが、それ以上の勢力のハリケーンが襲い多くの被災者が出ました。
日本赤十字社は国内災害の救護活動のイメージが強いですが、こうした海外のハリケーンや豪雨といった気候変動による災害に対する人道支援が増えてきているのでしょうか?
(田中部長)
増えています。今年の4月からの6ヵ月間で、日本赤十字社がジュネーブにある国際赤十字の本部から支援を求められた国際救援15件のうち、9件がハリケーンや台風、干ばつなど気候に関係する災害です。人だけでなくお金が必要なものを含めて、そのすべてに応じました。
国際救援が求められるほど、気候変動による災害が大規模で頻発していることは非常に大きな特徴だと思います。
(依田さん)
今年あるいは近年、世界的にみて日本赤十字社が気候変動で行った人道支援で記憶に強く残ることは何でしょうか?
(田中部長)
今年でいうと、一番大きいのがアフリカのモザンビークです。ここは周辺国を含め今年3月にサイクロン「イダイ」が襲い、モザンビークでは150万人が被災し、600人以上が亡くなり、14万人以上が住む場所を失いました。そういった状況の中で、さまざまな人道支援のニーズが生まれ、われわれもそれに対応しました。
(依田さん)
具体的にどのようなニーズがあるのでしょうか?
(田中部長)
まず住居です。猛烈な風により家そのものが吹き飛ばされたり、大雨により土でできた家は流されたりしました。
次に食糧。収穫直前の農作物が被害を受けて、当面の食べ物が確保できなくなり、水害で農機具や種、苗も流されました。そして干ばつ襲来のリスクもあります。その結果、翌年の食糧もなくなり、食べるものを失った家畜も死んでしまいます。つまり、人々が食べるものがなくなるわけです。
こうした深刻な気象災害は日本だけでなく、最近は海外でもしばしば発生しています。1つはハリケーン「ドリアン」がカリブ海のバハマやアメリカを直撃しました。日本も台風19号が「スーパー台風」と言われましたが、それ以上の勢力のハリケーンが襲い多くの被災者が出ました。
日本赤十字社は国内災害の救護活動のイメージが強いですが、こうした海外のハリケーンや豪雨といった気候変動による災害に対する人道支援が増えてきているのでしょうか?
(田中部長)
増えています。今年の4月からの6ヵ月間で、日本赤十字社がジュネーブにある国際赤十字の本部から支援を求められた国際救援15件のうち、9件がハリケーンや台風、干ばつなど気候に関係する災害です。人だけでなくお金が必要なものを含めて、そのすべてに応じました。
国際救援が求められるほど、気候変動による災害が大規模で頻発していることは非常に大きな特徴だと思います。
アフリカ・モザンビークの被災地支援は現在進行形
(依田さん)
今年あるいは近年、世界的にみて日本赤十字社が気候変動で行った人道支援で記憶に強く残ることは何でしょうか?
(田中部長)
今年でいうと、一番大きいのがアフリカのモザンビークです。ここは周辺国を含め今年3月にサイクロン「イダイ」が襲い、モザンビークでは150万人が被災し、600人以上が亡くなり、14万人以上が住む場所を失いました。そういった状況の中で、さまざまな人道支援のニーズが生まれ、われわれもそれに対応しました。
(依田さん)
具体的にどのようなニーズがあるのでしょうか?
(田中部長)
まず住居です。猛烈な風により家そのものが吹き飛ばされたり、大雨により土でできた家は流されたりしました。
次に食糧。収穫直前の農作物が被害を受けて、当面の食べ物が確保できなくなり、水害で農機具や種、苗も流されました。そして干ばつ襲来のリスクもあります。その結果、翌年の食糧もなくなり、食べるものを失った家畜も死んでしまいます。つまり、人々が食べるものがなくなるわけです。
(依田さん)
インフラだけでなく生活のすべてが失われるんですね。
(田中部長)
また、病院や医療施設、小さい保健所がダメージを受けると、マラリアやデング熱などの感染症が広がってしまうのです。仮設住宅で集団生活をすると衛生環境が悪く、下痢にもなりやすい。アフリカでは子どもたちが下痢で亡くなってしまうことがあります。
(依田さん)
そこで、日本赤十字社はどのような活動を行っているのですか?
(田中部長)
国際赤十字の一員として、仮設の住居、食糧支援、医療支援を展開することが第一歩でした。医療施設の補修を行ったり、食器や鍋などの日用品を支給する。衛生環境が悪化するのでトイレを設置する。きれいな飲料水を供給するなどの支援も行いました。日本赤十字社は、和歌山の赤十字病院から感染症の専門家を現地に派遣しました。
インフラだけでなく生活のすべてが失われるんですね。
(田中部長)
また、病院や医療施設、小さい保健所がダメージを受けると、マラリアやデング熱などの感染症が広がってしまうのです。仮設住宅で集団生活をすると衛生環境が悪く、下痢にもなりやすい。アフリカでは子どもたちが下痢で亡くなってしまうことがあります。
(依田さん)
そこで、日本赤十字社はどのような活動を行っているのですか?
(田中部長)
国際赤十字の一員として、仮設の住居、食糧支援、医療支援を展開することが第一歩でした。医療施設の補修を行ったり、食器や鍋などの日用品を支給する。衛生環境が悪化するのでトイレを設置する。きれいな飲料水を供給するなどの支援も行いました。日本赤十字社は、和歌山の赤十字病院から感染症の専門家を現地に派遣しました。
(依田さん)
私たちの知らないところで、赤十字は地道な活動をしているのですね。
(田中部長)
われわれは今、「ビルド・バック・ベター(Build Back Better)」をスローガンに、災害発生前の元の状態に戻すだけでなく、新たな災害に備え、対応力をつけることを目指しています。
たとえば、将来の災害を見据えて様々な物資の備蓄や防災教育も行います。あとはこころのケアです。被災して学校に行けず、困難な環境に置かれている子どもたちのこころのケアも行なっています。
(依田さん)
どこまで復旧すると活動を終了するのですか?
(田中部長)
通常、災害発生から6ヵ月位までを「急性期」といって一番ニーズの高い時期です。6ヵ月過ぎた頃から「復興期」に入り、長期のニーズを見据えた支援をします。
「復興期」に入れば、新たな環境での生計支援や、中長期の衛生活動と保健教育、農業では農機具や種苗の支援をします。終了するのは「復興期」が落ち着いてからです。
モザンビークでは、今も支援活動は続いています。モザンビークをはじめ、近年は明らかに台風や干ばつなどの被害が大きくなっています。
(依田さん)
その背景は、やはり地球温暖化ですね。国連のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)でもまとめていますが、この130年で地球の温度が0.85℃上がっています。また、日本は世界レベルよりもさらに温度が上がっていて、1〜2℃、東京は3℃くらい上がっているのです。
地球の温度が0.5〜1℃上がると、水蒸気の量が倍増します。雨を降らせるのは水蒸気ですから、積乱雲がより一層発達し大雨災害を引き起こすことが考えられます。地球温暖化は暑くなるだけでなく、気圧配置も変えます。そのため、それまで雨が降っていたところで降らなくなり、例えばオーストラリアで大干ばつになってしまうのです。
(田中部長)
気候の変化は、そこに暮らす人々の営みを成り立たなくさせてしまいます。私たち人類は本来、環境の変化に適応する能力がありますが、近年の急激な気候変動には対応しきれていませんね。
私たちの知らないところで、赤十字は地道な活動をしているのですね。
(田中部長)
われわれは今、「ビルド・バック・ベター(Build Back Better)」をスローガンに、災害発生前の元の状態に戻すだけでなく、新たな災害に備え、対応力をつけることを目指しています。
たとえば、将来の災害を見据えて様々な物資の備蓄や防災教育も行います。あとはこころのケアです。被災して学校に行けず、困難な環境に置かれている子どもたちのこころのケアも行なっています。
(依田さん)
どこまで復旧すると活動を終了するのですか?
(田中部長)
通常、災害発生から6ヵ月位までを「急性期」といって一番ニーズの高い時期です。6ヵ月過ぎた頃から「復興期」に入り、長期のニーズを見据えた支援をします。
「復興期」に入れば、新たな環境での生計支援や、中長期の衛生活動と保健教育、農業では農機具や種苗の支援をします。終了するのは「復興期」が落ち着いてからです。
モザンビークでは、今も支援活動は続いています。モザンビークをはじめ、近年は明らかに台風や干ばつなどの被害が大きくなっています。
気候変動の原因
(依田さん)
その背景は、やはり地球温暖化ですね。国連のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)でもまとめていますが、この130年で地球の温度が0.85℃上がっています。また、日本は世界レベルよりもさらに温度が上がっていて、1〜2℃、東京は3℃くらい上がっているのです。
地球の温度が0.5〜1℃上がると、水蒸気の量が倍増します。雨を降らせるのは水蒸気ですから、積乱雲がより一層発達し大雨災害を引き起こすことが考えられます。地球温暖化は暑くなるだけでなく、気圧配置も変えます。そのため、それまで雨が降っていたところで降らなくなり、例えばオーストラリアで大干ばつになってしまうのです。
(田中部長)
気候の変化は、そこに暮らす人々の営みを成り立たなくさせてしまいます。私たち人類は本来、環境の変化に適応する能力がありますが、近年の急激な気候変動には対応しきれていませんね。
地球温暖化がもたらす熱波や干ばつ
熱波による異常気象が増えている
(依田さん)
日本は年々暑くなっています。昨年は記録的な猛暑となりました。埼玉県熊谷市で41.1℃という日本の最高気温を記録するなど、歴代トップ10のうち、6地点が昨年記録されたものです。
今年は梅雨が長引きましたが、明けた後は猛暑となり、北陸では40℃を突破。新潟県の内陸では、まる2日間、朝晩も含め30℃を下回らない事態となりました。
(田中部長)
熱中症で亡くなる人も増えていますね。
(依田さん)
気象の面からいうと、大雨の被害より熱中症で命を落とす人のほうが圧倒的に多いのです。昨年は1500人以上、過去最も暑い夏といわれた2010年には1700人以上が命を落としています。
気象庁は前年の世界の異常気象マップをつくっていますが、それを俯瞰してみると、圧倒的に熱波による異常気象が多いのです。
たとえば、ヨーロッパなどでは日本の比ではないくらい熱波で命を落としています。2003年のヨーロッパの熱波ではフランスで1万5000人、イタリアでは1万8000人ですから日本の10倍くらいになります。
赤十字の活動でも熱波で人道支援に出ることがあるのでしょうか?
(田中部長)
最近の取り組みはアフリカのザンビアです。昨年から今年にかけて、熱波の影響で干ばつになりました。雨季は12月から4月ですが、この時期に雨が降らないため農作物が育たず、現在170万人が食糧難に陥っています。
国際赤十字の本部(ジュネーブ)から支援要請が発せられ、資金援助を考えています。その資金で当面の食糧支援とか、復興期に必要となる種苗、農機具の支援、防災教育、マラリア対策や下痢にかからないための保健衛生面の支援などが実施される予定です。
(依田さん)
干ばつに関する支援要請は増えていますか?
(田中部長)
干ばつは1980年代から増えています。最近、特徴的なのは、干ばつと洪水が繰り返し起きることです。あるときは干ばつ、あるときは洪水。サイクロンによる洪水と干ばつが定期的に起きていることが最近の特徴です。
(田中部長)
地球温暖化の一方で寒くなる地域があります。モンゴルです。さらに干ばつもあるので、牧草が育たない。冬になると異常に寒くなって、限られた牧草が雪で覆われてしまうため家畜の餌がなくなります。遊牧民の国なのに家畜を育てられずに人が死んでしまう。
こうした異常寒波を「ゾド」と呼んでいますが、最近「ゾド」への支援要請が国際赤十字本部から出ることが多いのです。
干ばつに関する支援要請は増えていますか?
(田中部長)
干ばつは1980年代から増えています。最近、特徴的なのは、干ばつと洪水が繰り返し起きることです。あるときは干ばつ、あるときは洪水。サイクロンによる洪水と干ばつが定期的に起きていることが最近の特徴です。
モンゴルの異常寒波「ゾド」
(田中部長)
地球温暖化の一方で寒くなる地域があります。モンゴルです。さらに干ばつもあるので、牧草が育たない。冬になると異常に寒くなって、限られた牧草が雪で覆われてしまうため家畜の餌がなくなります。遊牧民の国なのに家畜を育てられずに人が死んでしまう。
こうした異常寒波を「ゾド」と呼んでいますが、最近「ゾド」への支援要請が国際赤十字本部から出ることが多いのです。
(依田さん)
熱波で亡くなる人以上に寒波で亡くなる人が多いというデータもあります。地球温暖化は多くの地域を暑くしますが、その一方で寒くなる地域も生み出しているのです。
(田中部長)
遊牧民が家畜を失うと生計が立てられないので、人々が都市部に流れます。モンゴルの首都ウランバートルは盆地なので都市の大気汚染が進んでいく。その結果、汚染された空気で太陽光が届きにくくなり、なお寒い冬になるという悪循環になっているのです。
干ばつと洪水の繰り返しとは別に、このようなモンゴルの寒冷化という問題もあります。
(依田さん)
モンゴルでも日本赤十字社は活動していますか?
(田中部長)
2種類の支援をしています。1つは毛布です。「オンワードホールディングス」さんとの連携で、古着をリサイクルして毛布にしてもらって、現場に届けています。
もう1つは自立を助ける支援です。国際的な支援は自国の現地赤十字社だけでは対応しきれないときに始まります。極力対応できるように赤十字社の力をつけることが重要で、モンゴル赤十字社が自分たちの力で支援活動をするための基盤づくりをこの数年行ってきました。
熱波で亡くなる人以上に寒波で亡くなる人が多いというデータもあります。地球温暖化は多くの地域を暑くしますが、その一方で寒くなる地域も生み出しているのです。
(田中部長)
遊牧民が家畜を失うと生計が立てられないので、人々が都市部に流れます。モンゴルの首都ウランバートルは盆地なので都市の大気汚染が進んでいく。その結果、汚染された空気で太陽光が届きにくくなり、なお寒い冬になるという悪循環になっているのです。
干ばつと洪水の繰り返しとは別に、このようなモンゴルの寒冷化という問題もあります。
(依田さん)
モンゴルでも日本赤十字社は活動していますか?
(田中部長)
2種類の支援をしています。1つは毛布です。「オンワードホールディングス」さんとの連携で、古着をリサイクルして毛布にしてもらって、現場に届けています。
もう1つは自立を助ける支援です。国際的な支援は自国の現地赤十字社だけでは対応しきれないときに始まります。極力対応できるように赤十字社の力をつけることが重要で、モンゴル赤十字社が自分たちの力で支援活動をするための基盤づくりをこの数年行ってきました。
気候変動による災害に備える時代
日本も世界も、防災教育が命を救う
(依田さん)
最近、特に思うのは気候変動の速さに私たちがついていけないのではないか、ということです。伝える側の私たちもそうですが、一般の人もついていけないと思うのです。
昨年の西日本豪雨の直後に広島県が県民にアンケートをとったのですが、「避難勧告・避難指示が出ていて、あなたは避難したことがありますか」と聞くと、広島県民の95%以上の人が「避難したことがない」と回答したのです。
「避難したことがある」という回答はたったの5%未満。その5%未満の人に実際の被害を聞くと、「自宅もしくは周辺に被害があった」が7割以上でした。避難勧告・避難指示が出ているケースでは被災する確率が高いのです。それにもかかわらず避難しない人が95%以上いることに衝撃を受けました。
(田中部長)
危機的な状況が迫っていても、そんな恐ろしいことは起こるはずがないと安心したいのでしょうか。安全行動のスイッチになかなか切り替わらないことが多いですね。
(依田さん)
おっしゃる通り「災害の心理学」が働いていて、自分だけは大丈夫と思っていた人が圧倒的に多いのです。「これくらいの雨だったら大丈夫」とか、「隣近所が避難していないからうちも」という理由で避難しないのです。
(田中部長)
われわれが国際救援の現場とするのは多くの場合途上国ですが、そこでもやはり同じで、適切なタイミングで避難をせずに亡くなる人は少なくありません。
(依田さん)
ここを離れたくないという気持ちですね。
(田中部長)
特に、アフリカやアジアなどの国々では家畜が何よりも重要だと考える人が多いのです。災害につながる危機が迫っていても、家畜がいるから逃げないというのが、その場から動かない最大の理由の1つだと思います。
各地で支援活動を行うたびに、早期警戒・早期避難を行動に結びつける難しさを実感しています。
(依田さん)
背景は違うかもしれませんが、防災意識の低さは同じなんですね。
(田中部長)
災害に備えるためには、命を守るための防災教育を広めることが重要です。その学んだ知識を実際の行動に連動させるのは難しいことですが、継続して伝えていく必要があります。
(依田さん)
繰り返し起こる自然災害に備えるには、遠回りのように思える教育が実は近道なんですね。
われわれが国際救援の現場とするのは多くの場合途上国ですが、そこでもやはり同じで、適切なタイミングで避難をせずに亡くなる人は少なくありません。
(依田さん)
ここを離れたくないという気持ちですね。
(田中部長)
特に、アフリカやアジアなどの国々では家畜が何よりも重要だと考える人が多いのです。災害につながる危機が迫っていても、家畜がいるから逃げないというのが、その場から動かない最大の理由の1つだと思います。
各地で支援活動を行うたびに、早期警戒・早期避難を行動に結びつける難しさを実感しています。
(依田さん)
背景は違うかもしれませんが、防災意識の低さは同じなんですね。
(田中部長)
災害に備えるためには、命を守るための防災教育を広めることが重要です。その学んだ知識を実際の行動に連動させるのは難しいことですが、継続して伝えていく必要があります。
(依田さん)
繰り返し起こる自然災害に備えるには、遠回りのように思える教育が実は近道なんですね。
12月は「NHK海外たすけあい」キャンペーン
私たちの寄付金が支える日赤の国際活動
(依田さん)
日本赤十字社がこんなに多岐にわたって世界中で活躍しているとは思いませんでした。最後に1つお聞きしたいのですが、私たち市民が、「日本赤十字社はこんなに大切な仕事をしているんだ。サポートとしたいな」と思ったときに、どうしたらいいのですか。
(田中部長)
私たちの活動を可能にするためには、資金が必要です。日本赤十字社の国際活動の主な資金は政府からの補助金ではなく、「NHK海外たすけあい」という12月に行う募金活動に寄せられる一般の人々からの寄付金です。同じ先進国のイギリスやノルウェーなどの赤十字の主な国際活動資金の財源は政府資金ですが、われわれの場合は民間の資金です。ということは、一人ひとりの「苦しんでいる人を救いたい」という意思がこもったお金なんです。
一般の人たちの寄付金を使って支援を展開しているため、人道第一主義でより迅速に活動することができます。たすけあいの気持ちを行動に移すため、ぜひ資金協力をしていただきたいです。
(依田さん)
たぶん、おっしゃりにくいと思ったので、私から聞きました(笑)。実際、海外の被災者を助けるために何をしたらいいのか分からない人がたくさんいると思います。最初にできることは年末に行われるキャンペーンの「海外たすけあい」ですか。
(田中部長)
はい。それから何といっても関心をもってもらうことです。「人道の敵は無関心」です。被災者のつらさや苦しさを「自分ごと」として捉えてもらうことが、支援活動につながると思います。関心を持ってもらえるように、われわれも精一杯活動内容をお伝えしていきます。
(依田さん)
私も気象予報士として、海外の気象災害を取り上げるだけでなく、被災者を支援する国際救援の必要性を伝えたいと思います。今日は新しい視点を得た思いです。ありがとうございました。
(田中部長)
こちらこそ大変貴重な機会をいただき、ありがとうございました。
【ルワンダで起きている気候変動による人道危機】
対談であったようにいま世界の様々な国で気候変動による被害が出ています。アフリカのルワンダもその1つです。
東アフリカにあるルワンダの農村部や山間部では、大雨により洪水や土砂崩れなどの災害が多く発生し、安全な水や衛生的なトイレの普及率も低いことから、コレラやマラリアなどの感染症の拡大が大きな問題となっています。
そんなルワンダの現実とルワンダでの日本赤十字社の活動をまとめた映像をご覧ください。
東日本大震災(2011年)で被災した日本に対して、ルワンダは人々に募金を呼びかけ、日本の被災者のための支援を届けてくれました。
「今回は、日本がルワンダに支援の手を差し伸べる番」ということを確認し、日本赤十字社は2019年12月からルワンダに職員を派遣し、本格的な支援を始めました。ルワンダで起きている気候変動による人道危機に対して今後も支援を続けていきます。
【NHK海外たすけあい】
「NHK海外たすけあい」の寄付金は、日本赤十字社を通じて、世界各地の紛争や災害、病気に苦しむ人々のために役立てられます。
■受付期間:2019年12月1日(日)~12月25日(水)
>>特設サイトはこちら