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干し柿の原料に「渋柿」を選ぶ理由 実は甘柿より糖度が高い

2019/10/20 05:36 ウェザーニュース

柿が出回る季節になりました。なかでも干し柿はどんな果物より甘く、糖度は50度前後になるといわれます。この干し柿は渋柿からつくられると聞くと驚きますが、なぜ干し柿の原料は渋柿なのでしょうか。

渋柿はもともと糖度が高い

干し柿
「干し柿にする前の生柿をかじったことがありますが、渋くて吐き出したことがあります。市田柿の原料は間違いなく渋柿です」というのは、ブランド干し柿のひとつ「市田柿」を生産する市田柿工房(長野県高森町)の広報担当者です。

渋柿を干すと、なぜ甘くなるのでしょうか。

「渋柿には渋みの元のタンニンが含まれているので、そのままでは渋くて食べられません。しかし乾燥させるとタンニンが不溶性、つまり水に溶けなくなります。これを渋抜きと呼び、渋抜きすることで、もともと高い糖度をもつ渋柿の甘さだけを感じられるようになるのです」(同)

渋柿は渋みに隠れていますが、甘みは強いのです。甘柿(渋柿ではない柿)の糖度は16度前後ですが、渋柿は20度前後あります。この渋柿を干すと渋みと水分が抜けて、糖度が50度にもなるのです。
干して乾燥させることで、タンニンの性質が変わる
ちなみに、干し柿の表面に付着している白い粉は、柿の身の糖分が結晶化したもので、ブドウ糖や果糖などです。渋みも水分も抜いた干し柿の糖度は、甘柿の3〜4倍、砂糖の1.5倍にもなるといいます。

糖度が高い渋柿の渋を抜いた生柿も

甘柿も干せば干し柿になりますが、渋柿ほど糖度が上がらないので、商品価値は低いそうです。干し柿の原料が渋柿なのは、糖度が高いからなのです。

ところで、渋柿の渋を抜くには、干すほかにも方法があります。焼酎などのアルコールをヘタの部分につけてビニール袋で密封して3、4日するとタンニンが不溶性に変わり渋が抜けます。ただし、温度が低すぎると渋が抜けにくいので常温で放置します。

約40℃の湯の中に一晩漬けておいても渋が抜けます。この方法は温度管理が難しいのが難点だそうです。炭酸ガスを使っても渋が抜けるので、大規模にやるときはドライアイスを使うそうです。

こうして渋抜きすると、元渋柿でも生柿として提供できます。広島県の西条柿、愛媛県の愛宕柿、愛知県の筆柿などは渋抜きされて出荷されていますが、元は渋柿です。群馬県の「あずま樹上柿脱渋柿」は、枝に成った柿の実に脱渋剤を入れたポリ袋をかけるという特殊な渋抜き法です。

これから柿が出回る季節です。「この柿は甘いけれど元は渋柿だって知っている?」などとウンチクを傾けながら味わってみませんか。

参考資料など

『柿づくし:渋柿、干し柿、柿酢、柿ジャム、紅葉保存』(濱崎貞弘)