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地震保険 同種建物でも保険料の地域格差3倍以上

2019/09/14 05:08 ウェザーニュース

地震や噴火、津波による被害を補償してくれる「地震保険」。10月からの火災保険の値上げ前に、合わせて加入を検討している人もいるのではないでしょうか。

2018年度は付帯率(火災保険加入者のうち地震保険を付帯している人の割合)が65.2%に達しました。東日本大震災があった2010年度末の時点で48.1%だったのですから大きく伸びました。しかし、都道府県によって地震保険の保険料は大きく違い、その格差は3倍以上あるのです。それはなぜでしょうか。

当初はごく一部が「3等地」だった

日本に地震保険が登場したのは半世紀以上前の1966年、きっかけは新潟地震(1964年)でした。最大震度5、死者26名、全半壊約8500棟の被害をもたらした地震です。

地震保険は国と民間の損害保険会社が共同で運営し、地震・噴火・津波による損害が補償されます。必ず火災保険と合わせて加入し、地震保険の保険金額は、火災保険の保険金額の30〜50%で加入時に設定されます。

保険料は当初から地域ごとに異なり、創設時は1等地、2等地、3等地の3段階でした。保険料が一番高い3等地に指定されたのは、東京都の墨田区・江東区・荒川区、神奈川県横浜市の鶴見区・中区・西区、川崎市の東海道線以東の地区という限られた範囲でした。この3等地の耐火構造・準耐火構造の保険料は保険金額1000万円につき2万3000円でした(1等地は6000円)。

保険料格差は3倍以上

地震保険の保険料はたびたび改定され、最近では2019年1月に行われました。下の表は「耐火構造および準耐火構造の建物」の保険料ですが、都道府県によって大きく異なります。地震保険金額1000万円当たりの保険料は、一番安い岩手県など20県は7100円ですが、一番高い1都3県はその3倍以上の2万5000円となっています。なぜこれほど差があるのでしょうか。
地震保険の保険料はすべての損害保険会社が一律で、損害保険料率算出機構が算出した基準料率で決まります。

基準料率は、建物の構造(鉄骨構造・木造など)による区分だけでなく、建物の所在地によって区分しています。この地域リスクが違うため保険料が大きく違うのですが、そのもとは地震調査研究推進本部が公表しているデータです。

高精度の地震発生モデルを利用して被害予測シミュレーションを行い、都道府県別の保険料率を算出しています。つまり、保険料は地震発生確率の高さではなく、地震発生時の被害の大きさを示しているといったほうがいいでしょう。

保険料の変動に注目

損害保険料算出機構は、地震保険の基準料率が適正かを毎年チェックしています。そして必要があれば基準料率を改定するため保険料が変動します。

2019年1月の改定では、福島県が7400円から8500円に、茨城県・徳島県・高知県が1万3500円から1万5500円にそれぞれ約15%値上げされました(耐火構造および準耐火構造、地震保険金額1000万円当たりの保険料、以下同)。一方、愛知県・三重県・和歌山県は1万7100円から1万4400円に約16%値下げされました。

現時点では地震を予測することはできませんが、地震保険の保険料は確率論的な被害予測シミュレーションの結果なのです。

地震保険の保険金は火災保険の保険金の50%が上限ですから、地震保険だけで全壊した住宅を再建することはできません。しかし、国や自治体の支給金や義援金などがあれば再建できるかもしれません。「備えあれば憂いなし」です。地震保険に未加入の人は、加入を考えてはいかがでしょうか。