facebook line twitter mail

最も設定温度が低い路線は?
首都圏・通勤電車の冷房事情

top

2019/08/30 05:54 ウェザーニュース

企業の夏季休暇が終わり、学校の新学期も始まりつつある時季ですが、残暑はなお続いています。
そこで気になるのが通勤・通学電車の車内の温度です。鉄道各社は車内の温度設定や空調機器の管理を、どのように行っているのでしょうか。

多くの路線が「普通車26℃・弱冷房車28℃」

暑がりの人、寒がりの人がいるように、体感温度の差は人によってさまざまです。
首都圏のおもな鉄道会社の車内温度設定は、小田急電鉄・京王電鉄・東武鉄道・西武鉄道・京浜急行電鉄・東京急行電鉄・東京地下鉄(東京メトロ)の7社がいずれも「普通車26℃・弱冷房車28℃」。JR東日本は路線によって異なりますが、山手線の場合は「普通車25℃・弱冷房車27℃」と、大手私鉄各社より、やや低めになっています。

box1
東京都交通局(都営地下鉄)は浅草線・三田線・新宿線が「普通車25℃・弱冷房車28℃」、大江戸線は「普通車22℃・弱冷房車24℃」と、特に低めに設定されています。これは大江戸線の車両が、おおむね長さ16.5m×幅2.5m×高さ3.1mと、他路線車両の長さ20m×幅2.8m×高さ4mに比べて、小ぶりなことによります。狭い車内では冷気が通りにくいことから、温度を低く設定しているといいます。

車掌がこまめに車内温度を確認・調整

けれども、天候や車内の混雑状況などによって、乗客の体感温度は変化します。

その対策として、たとえば東武鉄道は「車掌が随時、空調機関係のスイッチの入り切りを行い、適切な車内温度の保持に努めています」。西武鉄道では「車掌が日頃より状況をこまめにチェックし、きめ細かな温度管理を行うよう指導しております」。東京メトロも「外気温や車内の混雑度を考慮しながら、乗務員が『入・切』を行っています」といいます。

各社とも、車掌が最後部の車掌室から客室に出るなどして、冷房の利き具合や温度を実感するよう努めているといいます。しかし、路線によっては10両以上の長い編成もあり、車両ごとの混雑状況などをすべて把握するのは難しいことです。これを克服するため、新しく造られた車両には、自動的に適切な空調が行えるシステムを搭載する鉄道会社も増えています。

西武鉄道は「空調機を自動運転させることにより、車内の混雑状況や外気温に応じて設定温度を自動的に調節し、設定温度以下でも湿度が高い場合には自動的に除湿運転を行うなど、より快適な車内温度の保持に努めているところでございます」。都営地下鉄は「空調はセンサーによる自動調節とさせていただいており、設定温度になるよう冷房装置をコントロールしております」といいます。

「空調予測」で事前に冷房をパワーアップ

box3
E235系
また、JR東日本では「通勤電車用空調予測制御」システムの開発を行いました。

JR東日本研究開発センター先端鉄道システム開発センターによると、空調予測はまず、各駅における乗車率の増減を時間帯や行き先方面別、号車単位でデータベース化しておきます。それらの増減比と走行中の実際の乗車率をもとに、次の停車駅を過ぎた後の乗車率を自動的に予測し、「急激に混雑する駅に到着する前に、冷房能力を増加させておくシステム」だといいます。

このシステムは、2016年に山手線で運行を始めたE235系電車に搭載されました。2020年春には、山手線の全列車がE235系に置き換わる予定で、「東京オリンピック・パラリンピックの夏」には、より快適な車内冷房が実現する見込みです。

    このニュースをSNSでシェア