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大雨が続くと心配な土砂災害「深層崩壊」 危険な地域は

2019/07/06 05:15 ウェザーニュース

大雨が降り続くと河川の氾濫や土砂災害の危険性が高まります。

今週の九州の大雨でも土砂崩れが発生しましたが、懸念されると伝えられていた「深層崩壊」には至っていない模様です。恐れられている深層崩壊とはどんな災害なのでしょうか。

想像を絶する土砂災害

深層崩壊は数年ないし十数年に1度の割合で発生していますが、最近では2011年9月に台風12号による1000mmを超える大雨で発生した「紀伊半島大水害」の深層崩壊が知られています。このときは土砂崩れ3,077ヵ所のうち76ヵ所が深層崩壊と確認されていますが、流出土砂量1億立方(東京ドーム80個分)の8割が深層崩壊によるものでした。

いかに深層崩壊の規模が大きいかわかります。一般的な土砂崩れは「表層崩壊」といって50cm〜2mの厚さの表土層が崩れる現象ですが、「深層崩壊」は深さ数十mにおよぶ岩盤も崩れるため規模が大きく甚大な被害になりやすいのです。奈良・和歌山・三重の3県で死者・行方不明者が88人にのぼり、家屋3300棟が全半壊しています。

台湾では村が消滅した

2009年台風8号で発生した深層崩壊(台湾南部)
2009年8月、台湾南部の小林村は3日前から台風に伴う豪雨が降り始めから1700mmに達した頃、近くの山が轟音を上げながら崩れました。山腹は斜面の長さ2.5km、最大幅800m、深さ80mにわたって崩れたのです。人口約500人の村の住民の大半が避難していた小学校は大量の土砂が流れ込み、1度の深層崩壊で400人以上が犠牲になり、村が消滅したのです。

国交省の「深層崩壊推定頻度マップ」

国土交通省は日本列島を深層崩壊の起こりやすさで4段階に色分けした「深層崩壊推定頻度マップ」を2010年に公表しています。明治時代から2010年までに発生した188の深層崩壊を元に作成したもので、推定頻度が「特に高い」「高い」という区域が全国でみられます。

先日、梅雨前線による大雨が降り続いた九州・四国でも宮崎県や熊本県など、「特に高い」「高い」とされた地域があります。また、「赤丸」で示されているのは明治期以降に深層崩壊が実際に発生した場所です。

深層崩壊の特徴は以下のとおりです。これらの特徴が見られると、深層崩壊のリスクが高まりますので、くれぐれも注意して下さい。

(1)岩盤に割れ目やひびがあると、そこに雨水が入り込んで発生しやすい
(2)降り始めからの雨量が400mmを超えると発生したことがあり、雨量が増えるほど発生する可能性が高くなる
(3)発生すると膨大な量の土砂や岩が時速100km前後の速さで流れ落ちてくるので砂防ダムがあっても止めるのは難しい
(4)雨がやんだ後も発生することがあるので油断できない

深層崩壊のおそれがある区域で行える対策は、発生する前に避難することです。当たり前のことですが、それが命を守る最善の対策になるのです。

表層崩壊であれ深層崩壊であれ、規模こそ違えど遭遇すれば命に関わることに変わりはありません。発生頻度の低い地域に住んでいる方も安心せず、気象情報・避難情報等の入手や、早めの避難を心がけてください。