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迫る梅雨…肉の食中毒はどう防ぐ?

2019/06/06 05:42 ウェザーニュース

梅雨時期が近づくと心配なのが食中毒。厚生労働省は「食中毒予防の3原則」として、<(病原体を)付けない・増やさない・やっつける>を徹底するよう呼びかけていますが、どんなに新鮮な肉でも加熱が不十分だと食中毒を起こしてしまいます。どう防いだらいいのでしょうか。

相次ぐ肉の食中毒

最近の事例を紹介します。和歌山県では2018年1〜4月に焼き鳥屋などでカンピロバクターによる食中毒が6件発生し、計35人の客が下痢や腹痛、発熱などの症状を訴えたと発表しました。加熱用の鶏肉を未加工、もしくは加熱が不十分なまま提供したことが原因とみられています。

2018年4月24日、福島県郡山市の保健所は市内の飲食店で串焼きなどを食べた36〜52歳の女性8人が下痢などの症状を訴え、うち2人からカンピロバクターを検出したと発表しました。

ユッケ(牛の生肉)で死亡事件

「生肉」「生焼け」の怖さを改めて思い知ったのが、2011年4月に富山県などに展開する焼肉チェーン店が提供したユッケによる集団食中毒でした。原因は牛肉に付着していた腸管出血性大腸菌O111。181人が発症し、6〜70歳の男女6人が亡くなったのです。

この事件を受けて、2012年に生食用の牛レバー、2015年には生食用の豚肉と豚レバーなど内臓を販売・提供することが「食品衛生法」で禁止されました。しかし、一定の衛生管理を行えば生の牛肉は提供でき、鶏肉に関しては規制がなく、肉の「生食」「生焼け」による食中毒は続いています。

鶏肉でカンピロバクター食中毒

厚生労働省がまとめた2017年の「食中毒の発生状況」をみると、食中毒の病因物質はカンピロバクターが最多です。
カンピロバクターは主に鶏の腸に生息する細菌で、加工する過程で鶏肉に付着し、生食や加熱不十分で食中毒を発症させます。鶏自身が保有している細菌なので、肉がどんなに新鮮でもカンピロバクターに汚染されている可能性があるのです。

東京都健康安全研究センターは実験に基づいた鶏肉の安全調理の目安を公表しています。
調理時間がこれに満たないと、食中毒を起こす恐れがあるのです。

肉による食中毒はこうして防ぐ

厚生労働省は、リーフレット『お肉の食中毒を避けるにはどうしたらよいの?』で、次のことを推奨しています。

(1)肉は中心部まで75℃で1分以上加熱すれば病原体は死ぬ。中心部の肉がピンクから褐色に変わり、肉汁が透明になるまで火を通す。
(2)ハンバーグはひき肉からつくられるので、病原体が中心部まで入ってしまう。フライパンにフタをして焼くなど、中心部まで火を通すことが大切。
(3)バーベキューや焼肉では、食べる箸とは別に生肉を扱うトングや箸を使う。
(4)食中毒にかかっても健康な成人なら軽い下痢や腹痛ですむが、小児、高齢者、妊婦(胎児)、免疫機能が低下する疾患にかかっている人は重症化する可能性が高いので注意する。

ライオンやトラなど肉食動物は生肉を食べますが、食中毒を起こしたという話は聞いたことがありません。それは、肉食動物が強力な消化液と免疫力を持っているためです。人間にはそれがないので、生肉はもちろん、加熱不十分でも食中毒を発症することがあります。せっかくの美味しい料理が食中毒の原因になったら最悪です。肉料理は十分加熱してから食べてください。