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七十二候「紅花栄」 手間ひまかけて作られた美しき自然の色

2019/05/26 05:19 ウェザーニュース

26日からは紅花栄(べにばなさかう)。紅花が咲き誇る頃と言われています。

茎の末端に咲く花を摘み取ることから末摘花とも言われる紅花。令和の典拠である万葉集に登場するほど古くから日本人に親しまれていたようです。そこで今回は、紅花についてご紹介します。

紅花はどんな花?

紅花はキク科、ベニバナ属の一年草の花。確かに、花の形を見るとキクと似ているような…。そんな紅花はある県の花となっているのですが、どこかわかりますか?

正解は山形県。紅花の産地としても非常に有名です。

夏になると、畑一面にオレンジ色や黄色の花が咲き誇り、特に天気の良い日は青空とのコントラストが美しい景色となります。山形ではお祭りも行われるので、一度足を運んでみるのもおすすめです。

赤い色素はごくわずか!?

咲き始めは黄色く、成長するに従って徐々に赤色が増していく紅花には、サフロールイエローという黄色い色素とカルサミンという赤い色素が含まれています。含まれている割合は黄色い色素の方が圧倒的に多く、赤い色素はわずか1%ほど。

黄色い色素は水溶性のため、少量であれば一晩水につけておくだけで、抽出することができます。一方、赤い色素は水に溶けないため、黄色い色素を完全に抜いた後、弱アルカリ水などを使用し、抽出します。

紅花の加工

その鮮やかな色から、紅花は染料としてよく使われています。では、摘みとった花はどのようにして染料になるのか、紅もちの加工方法を例にご紹介します。

上の図にはたった6工程しか書かれていませんが、一つひとつの作業がなかなか大変です。

まず、紅花摘みですが、作業は早朝に行われます。というのも、紅花はトゲを持っているため、朝露でそのトゲが柔らかくならないと摘みにくいのです。

さらに、紅花が咲いている期間はあまり長くないため、開花時期は大忙し。蒸し暑い中、農家の方たちはせっせと花を摘み取ります。

次に、摘みとった花から黄色い色素を抜くのですが、量が多いため、手でもんでは洗い、足で踏んではまた洗い…ということを繰り返し、丁寧に色を抜かなくてはなりません。

3番目の醗酵ですが、よしずに広げた紅花に1日3回ほど水をあげます。様子を見て、時々混ぜてあげることも必要です。

最後の天日干しの際も、もちろん気を抜くことはできません。しっかり乾くよう、成形したものをこまめにひっくり返します。雨は大敵なので、空の変化にも気を配る必要があります。

このように、多くの時間と労力を要するため、昔は米よりも金よりも断然紅もちの方が価値があると言われていました。

長く大切に…

鮮やかな色を売りとしているので、腐って黒ずんでしまっては製品として成り立ちません。

紅花の魅力を損なわないよう、農家の方たちが手間ひまかけて加工しています。出荷された紅もちは、製品になる際も紅を抽出すべくさらに工程を重ねます。その後ようやく、口紅や美しい色の着物として私たちが手にすることができるのです。

畑に咲く花から製品になるまでの背景を知ると、より大切にしたくなりますよね。ぜひ自然由来の美しい色合いを楽しみつつ、紅花から作られた製品を長く大事に使ってあげてください。

二十四節気と七十二候について

1年を春夏秋冬の4つの季節に分け、それぞれをさらに6つに分けた24の期間を「二十四節気」といいます。

そしてこれをさらに初候、次候、末候の5日ずつにわけて、気象の動きや動植物の変化を知らせるのが七十二候です。

二十四節気と七十二候は、その日だけではなく、次の節気あるいは次の候までの期間も指しています。

次回は、小満の末候「麦秋至(むぎのときいたる)」についてご紹介します。

参考資料など

【参照・参考元】
山形大学附属図書館HP「紅花の豆知識」https://www2.lib.yamagata-u.ac.jp/benibana/mame.html