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長時間の搭乗は要注意 「ロングフライト血栓症」を防ぐ方法

2019/05/03 09:35 ウェザーニュース

10連休で海外旅行に行かれている方も多いと思いますが、長時間にわたる飛行機の搭乗では「ロングフライト血栓症」という病気を発症するリスクが高まります。

「エコノミークラス症候群」とも呼ばれ、重症化すると命を落とすこともある「ロングフライト血栓症」とはどんな病気なのでしょうか。

サッカー、高原選手の発症で知られるように

2002年、サッカー元日本代表の高原直泰選手がポーランドから帰国後に、血栓が肺の動脈に詰まる肺塞栓症を発症して入院しました。

「エコノミークラス症候群」という病名を聞いたサッカー協会幹部は、「ビジネスクラスに乗っていたのに」と言ったそうですが、長時間のフライトで血管に血栓が詰まるリスクがあることが、広く知られるきっかけになりました。

「ロングフライト血栓症とは、6時間以上の長時間にわたるフライトで発症するリスクが高まる病気です。日本からだとヨーロッパ、北米各都市、オーストラリア、ニュージーランドなどは片道10〜12時間、南米やアフリカとなると乗り換えを含めて20時間に及ぶので発症するリスクがあります」と語るのは、日本旅行医学会専務理事で医師(千駄ヶ谷インターナショナルクリニック院長)の篠塚規先生です。

「ふくらはぎ」に血栓ができる病気

ロングフライト血栓症はどのような病気なのでしょうか。

「長時間座っていると、脚のふくらはぎの静脈の内膜に傷がある人は血液がそこで淀んで血栓(血の固まり)ができます。すると、ふくらはぎに鈍い痛みが出たりします。この初期症状の段階で血栓溶解剤を投与したり、カテーテルで血栓を吸引すれば治りますが、そのまま放っておくと血栓が肺に飛んで肺動脈に詰まることがあります。そうなると呼吸困難や失神、最悪の場合は死につながることもあります。」(篠塚先生)

リスクが高いのは、50歳以上、肥満、妊婦、出産後1ヵ月以内、手術後3ヵ月以内だと言います。

また、飛行機でなくても夜行バスや長距離ドライブでも血栓症を起こす可能性があります。

ロングフライト血栓症を予防する7ヵ条

ロングフライト血栓症は機内の過ごし方で予防できる病気です。篠塚先生は次の7ヵ条をあげます。

(1)2〜3時間ごとに歩く
機内では少し離れたトイレに行く。スペースを見つけて脚の屈伸運動をする

(2)足の上下運動と腹式深呼吸
座席に座ったままで、かかとやつま先の上下運動と腹式深呼吸を1時間に3〜5分行う

(3)水分を摂る
機内の湿度は5〜15%でサハラ砂漠より乾燥していて、肺や皮膚から水分が失われる。飲み物はミネラルウォーターか薄いお茶が望ましい。ビールやワインは利尿作用があるので控えめに

(4)ゆったりした服装
男性は機内でズボンのベルトを10cmほど緩め、女性はきつい下着を避けてゆったりした衣類を着用する

(5)血行を悪くするので足を組まない

(6)不自然な姿勢で寝てしまうため睡眠薬は使用しない

(7)女性や高齢者は通路側に座る
トイレに行くのに遠慮せずにすむ

「リスクが高い人は、この7ヵ条に加えて、『フライトソックス』を履き、血栓ができにくい『ノアック』ないし『ヘパリン』の服用をおすすめします」(篠塚先生)

「フライトソックス」は脚のむくみを予防するだけでなく、深部静脈の血流速度を上げて血栓をつくりにくくする効果があります。血栓ができにくい「ノアック」や「ヘパリン」は医師の処方薬なので、かかりつけ医などに処方してもらう必要があります。

楽しい旅行をロングフライト血栓症で台無しにしないないためにも、機内での過ごし方7ヵ条を守るようにしましょう。