初期は丸味を帯びた「団子鼻」
時速200km以上の高速運転を前提としている新幹線は、空気抵抗、騒音、トンネル微気圧波(トンネル進入時にトンネルの出口付近に圧力波が伝わり騒音を発生させる現象)などを減らす目的で先頭部を尖った構造にしています。この尖った部分は、「ノーズ」あるいは「鼻」と呼ばれているのですが、この「鼻」の部分が新幹線車両の技術の進化の証なのです。
「新幹線車両でも初期のグループにあたる東海道・山陽新幹線系統の0系(1964年登場)と、東北・上越新幹線系統の200系(1982年登場)の『鼻』は丸味を帯びた形状で、『団子鼻』の愛称でも親しまれるようになりました。
その後に登場した100系(1985年登場)と200系の後期車では、サメの鼻のように尖った『シャークノーズ』と呼ばれるスタイル、1992年に営業運転を開始した東海道・山陽新幹線の300系は、空気抵抗を考慮した『スラントノーズ』スタイルの流線型を採用。しかし、どれも『鼻』の部分は運転台周辺の短い長さに限られていました」(川崎さん)
「新幹線車両でも初期のグループにあたる東海道・山陽新幹線系統の0系(1964年登場)と、東北・上越新幹線系統の200系(1982年登場)の『鼻』は丸味を帯びた形状で、『団子鼻』の愛称でも親しまれるようになりました。
その後に登場した100系(1985年登場)と200系の後期車では、サメの鼻のように尖った『シャークノーズ』と呼ばれるスタイル、1992年に営業運転を開始した東海道・山陽新幹線の300系は、空気抵抗を考慮した『スラントノーズ』スタイルの流線型を採用。しかし、どれも『鼻』の部分は運転台周辺の短い長さに限られていました」(川崎さん)
15mまで伸びた500系
新幹線の「鼻」の形状を大きく変えたのが、1997年に時速300km運転に対応する車両として投入された東海道・山陽新幹線の500系です。
「トンネル微気圧波の対策に正面から取り組んだ新幹線といえます。その結果、先頭部は全長27mのうち15mが『鼻』になる大胆なデザインとなりました。高速走行時に列車に貼りつく空気の層(境界層)が列車から離れる際に発生する振動も軽減できるよう、設計されているのです」(川崎さん)
1999年に登場した東海道・山陽新幹線の700系は哺乳類の「カモノハシ」に似ているともいわれ、これまでの「鼻」の形状からさらに変化しました。
「トンネル内で発生した気流によって車体が振られるというやっかいな問題を改善するとともに、先頭車の客席数確保が目的で『鼻』を短くする『エアロストリーム』を採用。『鼻』は、9.2mと500系より大幅に短くなりました。
最高速度は時速285kmと500系には及ばないものの、新幹線の編成で300系と同様の客席数を確保するなど、世界にも例を見ない大量輸送を行う高速鉄道の東海道・山陽新幹線にふさわしい車両となったのです」(川崎さん)
「トンネル微気圧波の対策に正面から取り組んだ新幹線といえます。その結果、先頭部は全長27mのうち15mが『鼻』になる大胆なデザインとなりました。高速走行時に列車に貼りつく空気の層(境界層)が列車から離れる際に発生する振動も軽減できるよう、設計されているのです」(川崎さん)
1999年に登場した東海道・山陽新幹線の700系は哺乳類の「カモノハシ」に似ているともいわれ、これまでの「鼻」の形状からさらに変化しました。
「トンネル内で発生した気流によって車体が振られるというやっかいな問題を改善するとともに、先頭車の客席数確保が目的で『鼻』を短くする『エアロストリーム』を採用。『鼻』は、9.2mと500系より大幅に短くなりました。
最高速度は時速285kmと500系には及ばないものの、新幹線の編成で300系と同様の客席数を確保するなど、世界にも例を見ない大量輸送を行う高速鉄道の東海道・山陽新幹線にふさわしい車両となったのです」(川崎さん)
AIと一緒に作ったN700系
現在も東海道・山陽新幹線の主力で、私たちに馴染み深いN700系(2007年登場)は直線的でシャープなスタイルが印象的です。
「この形式では時速300km運転に対応するため『エアロ・ダブルウィング』という形状を採用しました。この設計に際してはAIを用いた高度なシミュレーションが実施されています。その結果、『鼻』の長さは10.7mと700系より1.5m延びました。
また、先頭車のデッキ部分より前位(運転席寄り)の車体高を100mm下げることで、さらなる微気圧波の軽減、空気抵抗の軽減を実現しました。
その後に登場したN700A、N700Sも、N700系の派生系ですが、さらなるマイナーチェンジが重ねられています」(川崎さん)
「この形式では時速300km運転に対応するため『エアロ・ダブルウィング』という形状を採用しました。この設計に際してはAIを用いた高度なシミュレーションが実施されています。その結果、『鼻』の長さは10.7mと700系より1.5m延びました。
また、先頭車のデッキ部分より前位(運転席寄り)の車体高を100mm下げることで、さらなる微気圧波の軽減、空気抵抗の軽減を実現しました。
その後に登場したN700A、N700Sも、N700系の派生系ですが、さらなるマイナーチェンジが重ねられています」(川崎さん)
東北新幹線でも伸び続ける
一方、東北・上越新幹線系統の車両の「鼻」も伸びる傾向にあるようです。
「2代目の2階建て新幹線E4系(1997年登場)は11.5mとなり、それまでの東北・上越新幹線のイメージを一新しています。車体が大きいだけに『鼻』部分の曲線が造り出すフォルムにも迫力があります。2011年に登場したE5系は、時速320km対応車で、『鼻』の長さは15mに及びます。
2005年に登場した高速試験者のE954系では両先頭車の先頭部の形状を作り分け、高速走行時の空力特性を精査しました。トンネル微気圧軽減に最適な形が追い求められたのです。その結果、E5系では『アローライン』をもとにした『ダブルカスプ』と呼ばれる形状が採用されました」(川崎さん)
「2代目の2階建て新幹線E4系(1997年登場)は11.5mとなり、それまでの東北・上越新幹線のイメージを一新しています。車体が大きいだけに『鼻』部分の曲線が造り出すフォルムにも迫力があります。2011年に登場したE5系は、時速320km対応車で、『鼻』の長さは15mに及びます。
2005年に登場した高速試験者のE954系では両先頭車の先頭部の形状を作り分け、高速走行時の空力特性を精査しました。トンネル微気圧軽減に最適な形が追い求められたのです。その結果、E5系では『アローライン』をもとにした『ダブルカスプ』と呼ばれる形状が採用されました」(川崎さん)
令和時代には22mに!?
2019年5月から東北新幹線に投入される高速試験車E956系は、さらに『鼻』が伸びています。
「こちらもE954系と同様に新青森寄りと東京寄りの両先頭車で異なるフォルムの車体として、それぞれの特長を比較検討することになっています。東京駅寄りの1号車の『鼻』は約16mで、現状のE5系と比較的似たフォルムですが、新青森駅寄りの10号車の『鼻』は約22mと、これまでの新幹線車両でも最も長くなっています。
その一方で客室スペースは非常に狭くなり、編成全体の定員に影響を与えそうです。E956系は時速360km運転を目指す東北新幹線の次世代車両開発のプロトタイプモデルで、本形式の検査結果は、今後の新幹線車両全体にも影響を与えるものと思われます」(川崎さん)
東北・北海道新幹線は2030年度に札幌までの延伸を予定しています。この新型新幹線は、札幌延伸に合わせて導入することを目指しているそうです。昭和、平成と伸び続け、さらに伸びそうな令和でも新幹線の「鼻」に注目したいところです。
「こちらもE954系と同様に新青森寄りと東京寄りの両先頭車で異なるフォルムの車体として、それぞれの特長を比較検討することになっています。東京駅寄りの1号車の『鼻』は約16mで、現状のE5系と比較的似たフォルムですが、新青森駅寄りの10号車の『鼻』は約22mと、これまでの新幹線車両でも最も長くなっています。
その一方で客室スペースは非常に狭くなり、編成全体の定員に影響を与えそうです。E956系は時速360km運転を目指す東北新幹線の次世代車両開発のプロトタイプモデルで、本形式の検査結果は、今後の新幹線車両全体にも影響を与えるものと思われます」(川崎さん)
東北・北海道新幹線は2030年度に札幌までの延伸を予定しています。この新型新幹線は、札幌延伸に合わせて導入することを目指しているそうです。昭和、平成と伸び続け、さらに伸びそうな令和でも新幹線の「鼻」に注目したいところです。