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熊本地震から3年 “ツイッター市長”のSNS防災術

2019/04/14 10:42 ウェザーニュース

2016年4月14日、21時26分、熊本地方を震源とする最大震度7の地震が発生しました。発災直後からいち早くツイッターを活用して市民に情報を発信し続けた大西一史市長。“ツイッター市長”として知られ、フォロワーは10万人を超えています。

甚大な被害をもたらした熊本地震から3年、熊本地震の復興やこれからのツイッター活用法についてお話を伺いました。

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大西一史熊本市長(2019年3月15日撮影)

Q.地震発生時はどこにいましたか?


「直後は市役所の近くで会食中で、すぐ市役所に戻り、情報を集めることに専念していました。そんな中でツイートも併行して準備しました。『この内容でツイートして大丈夫?』と担当の局長達に確認を求めてから発信するようにしました。本来は担当部署から発信するのがいいのでしょうが、フォロワーの数が断然違いますから私自身が発信するほうが有効、と考えました」
発災後に熊本市長が最初にツイートした内容

Q.いまSNSではフェイクニュースが問題になっています。


「熊本地震で有名になったのが『動物園のライオンが逃げた!』ですね。これに対して『正確な情報は、公式な熊本市のホームページにしか出ていません』とツイートしたことがよかったと感じています。本当に逃げたのであれば、熊本市のホームページで必ず注意喚起していますから」
新たな誤情報の拡散を防ぐために、このようにツイートした

Q.フェイクニュースの見分け方はありますか?


「発災時に全体の情報を把握するのは大変困難なことです。ですから現場にいる人の一次情報を大切にするようにしています。また公式なアカウントかどうか、さらに、他のメディア、テレビなど複数のメディアをクロスさせながら情報を得て、確認してみることも大切です」

Q.ツイートの拡散について


「リツイートするのは二呼吸ぐらいおいてからにしてほしい。その人がどんなツイートしているのか、本人が経験した一次情報なのか、それとも受け売りの二次情報や三次情報なのかなど確認するという意味では疑ってみることも必要です。慌てて善意でデマ情報をリツイートしてしまうケースが多いのではないでしょうか」
2018年6月18日に発生した大阪北部地震後も誤情報の拡散が続出。市長はいち早く注意喚起を発信した

モットーは『明るく、元気に、前向きに』

ポジティブなメッセージを発信するワケは?(2019年3月15日撮影)

Q.大西市長がツイッターで心がけていることは?


「無理をしないこと。とにかくつぶやくときには衝動的にならず、慌ててつぶやかないことです。10万人以上のフォロワーがいますので、拡散力はすさまじい。やっぱり間違った情報を発信してしまうと悪影響というのはとても大きいので、表現的にどうかなと思うときには一晩寝かせることがあります。

ツイッターって愚痴とか、相手を非難したりするツイートも見かけますけど、私はそれはやらない。できるだけ『明るく、元気に、前向きに』ツイートを見た人があまり不快に感じないよう元気になれるよう心掛けています」

Q.140字で効果的に伝えるには?


「140字で伝えられることはどうしても限りがあります。文章が短いと言葉が強くなりがちです。ですからネガティブなメッセージは伝えにくいと思っています。ある有名人が自筆のお手紙を写真に撮って貼りつけてツイートしていたのは、デジタルな時代に人間味がありジーンとして伝わるなと思いましたね」

Q.“ツイッター市長”のルーツはいつからですか?


「21年前、まだインターネットが普及していない頃に自分で苦心しながらホームページを立ち上げました。政治家は遠い存在だと思われていたので、インターネットを活用して政治をもっと身近に感じてもらいたかったんです。『今日のひとりごと』を始めたのは、1998年頃からだったと思います。やがてブログが出てきて、ツイッターへとつながっていきました」

Q.ツイッターを活用するきかっけは?


「私の公約のひとつに熊本市の花火大会復活がありました。ところが花火大会当日(2015年8月29日)の天気予報はあいにくの雨。順延の判断をし、市のホームページから発信したところサーバーがパンク。

困り果ててツイッターを見たら、『今日の花火大会はどうなっているんですか?』『開催するんですか?』と問い合わせが殺到していたんです。『あっ、そうだ、ツイッターがあった!』。さっそく『今日の花火は残念ながら、明日に順延します』とツイートしたところ、リツイートの広がりの凄まじさを実感したのです。その日のトレンドは花火大会が1位になっていました」

Q.災害時のツイッターの活用法は?


「まだ発展過程にあると思っていますが、ひとつはハッシュタグでつぶやくことによって減災情報の切り口で日本全体の危機管理意識が高まるのではないかと感じています。ほかの地域や人の様子で安心する部分や気づきががわかりますから。ウソも多いが、ホントも多いのがツイッター。

情報をしっかり選択できればツイッターは有効なツールです。そのためにも普段から信頼できるメディアを見つけておくことも大切です。そうした発信者を見つけておけば有事の際の助けになるのではないでしょうか」

公共施設やインフラは100%復旧

震災対処機能継続訓練の様子(2019年1月17日)

Q.全国市長会の防災対策特別委員会委員長を務めておられますね。


「『災害に遭って一番困ったことは何ですか?』とよく質問されます。行政レベルでは、ペットボトルの水1本配ることが容易ではありません。道路が通行できないと肝心の物資が届けられないのです。行政の力だけでは限界がありますから、スーパーやコンビニと連携して、被災した時に備えて流通備蓄という体制づくりを進めています。

自助の面では『ローリングストック』(日常生活で消費しながら備蓄する)という方法が適しています。市民へのアンケートで震災前は備蓄3割でしたが、震災後は8割になりました。自分の身は自分で守るためにも最低3日〜1週間はしのげるようにしたいですね。備蓄が多いと近所の人を助けることもできて、共助がしやすくなります。自助共助ができれば、そのあとに公助が来た時により効果的になります。これからの防災・減災を考える上で大事な点だと思います」

Q.熊本地震の復興状況は?


「人口74万人の熊本市で、ピーク時には避難所だけで11万人以上、その他に車中泊、軒先避難を含めるともっと大きな数になりました。現在、公共施設やインフラは100%復旧しています。しかし、今年3月末でも4,017世帯の方々が仮設住宅で暮らしています。こうした方々の恒久的な住まいの再建をはじめ、住まい確保後の生活支援に全力で取り組んでいるところです」


ツイッターを駆使して市民とのコミュニケーションを積極的に実践している大西一史市長。震災という非常時にSNSで流される虚実入り乱れる情報の見分け方や不的確な二次情報を拡散しない心得を聞くことができました。

私たちの日本列島は自然災害がいつ、どこで発生するかわかりません。そんな時に私たちはさまざまな情報とどう向き合うのか、心に深く刻んでおきたいものです。

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インタビュー ダイジェスト動画

※ページ内で再生が出来ない場合は、https://youtu.be/_cdt1oyKc3Uからご覧ください。