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鉄道のプロが選ぶ! 桜の名勝路線5選

2019/04/07 05:13 ウェザーニュース

人気旅雑誌『旅と鉄道』の編集長・真柄智充さんに、日本各地の桜の名勝路線を選んでもらいました。

この時期しか見ることのできない桜と電車のコラボレーションをぜひお楽しみください。

大井川鐵道(静岡県)

桜並木を走るC11形蒸気機関車

SL列車「さくら」号とソメイヨシノの共演


桜とSLの共演が撮影できるポイントとして高い人気を誇っているのが、大井川鐵道大和田駅と家山駅の間の「桜のトンネル」や、家山川(いえやまがわ)の鉄橋です。「桜のトンネル」は、約1kmにわたって280本のソメイヨシノの並木道が続き、そのすぐ脇をSL列車が走り抜けます。

家山の桜の見ごろは3月下旬〜4月上旬ごろで、桜の時期に合わせて臨時SL列車「さくら」号が運転されています。「かわね桜まつり」の期間中にはライトアップが行われるので、夜桜見物も楽しみです。

千頭駅で井川線のトロッコ列車に乗りかえて一駅目の川根両国駅も、ホームからの桜の眺めが美しい、人気のお花見スポットです。

【路線データ】◎路線名:大井川本線、井川線◎桜の名所:家山の桜のトンネルなど/◎区間:金谷~千頭(大井川本線・39.5km)、千頭〜井川(井川線・25.5km)/◎車両:16000系、C11形蒸気機関車、ED90形アプト式電気機関車など

嵐電(京福電気鉄道・京都府)

鳴滝から宇多野駅間にある「桜のトンネル」

「桜のトンネル」で夜桜見物を


京福電鉄北野線の鳴滝駅から宇多野駅の間の「桜のトンネル」は、線路の両側に200mにわたって見事な桜並木が続いている名所です。

満開の時期にはライトアップされます。「桜のトンネル」を通過するときには車内灯が消されるので、車窓から、闇に浮かぶ幻想的な夜桜を眺めることができます。花の見ごろは3月下旬〜4月上旬です。

また、嵐電沿線には途中下車が楽しい桜の名所が連なっています。約60品種、400本の桜で知られる平野神社、「御室桜(おむろざくら)」として知られている仁和寺のサトザクラ、周囲をぐるりと桜並木に囲まれた大覚寺の大沢池……。

嵐山の、渡月橋から松尾橋の間には、1500本もの桜が続いているんですよ。

【路線データ】◎路線名:嵐山本線、北野線◎桜の名所:鳴滝〜宇多野間の桜のトンネルなど/◎区間:四条大宮~嵐山(嵐山本線・7.2km)、北野白梅町~帷子ヶ辻(北野線・3.8km)/◎車両:モボ101形、モボ21形など

津軽鉄道(青森県)

芦野公園駅

太宰治の『津軽』にも登場する桜の名所


「さくら名所百選」に選ばれている芦野(あしの)公園は、1500本もの桜が花開く津軽の桜の名所です。

公園の中にある津軽鉄道芦野公園駅は、花の季節には、あたり一面の桜に包み込まれるかのような雰囲気で、「桜や老松が広がる閑かな公園内に佇む無人駅」として、「東北の駅百選」に選ばれました。

毎年4月29日から5月7日に催される「金木桜まつり」の期間中には、冬季にはストーブ列車として運転されている趣のある旧型客車を用いた臨時列車が運転されます。

太宰治の『津軽』に「踏切番の小屋くらいの小さい駅」と書かれた旧芦野公園駅本屋(旧駅舎)は、国の登録有形文化財に登録され、駅の一角に保存されています。

【路線データ】◎路線名:津軽鉄道線/◎桜の名所:芦野公園駅/◎区間:津軽五所川原〜津軽中里(20.7km)/◎車両:津軽21形気動車(「走れメロス」号)など

のと鉄道(石川県)

「能登さくら駅」が愛称となっている能登鹿島駅

100本の桜と七尾湾と立山連峰


のと鉄道七尾線の能登鹿島駅は、「能登さくら駅」の愛称で親しまれている無人駅。第一回の「中部の駅百選」(1999年)に選ばれています。

ホームの両脇には、周囲2mを超えるソメイヨシノの大木が100本植えられていて、駅全体を覆うようにピンクのトンネルを作り、駅に降り立つ人びとを優しく出迎えてくれます。車窓からの眺めも華やかです。

満開の時季は4月の中ごろ。花の時期にはぼんぼりでライトアップされ、「花見だよ!in能登さくら駅」のイベントが開かれます。

ホームから桜の木々の間を眺めれば、七尾湾が広がっています。右手には能登島が浮かんでいます。天候に恵まれれば、白銀に輝く立山連峰も望むことができるでしょう。

【路線データ】◎路線名:七尾線/◎桜の名所:能登鹿島駅/◎区間:七尾~穴水間(33.1km)/◎車両:NT300形、NT200形など

JR肥薩線(熊本県、宮崎県、鹿児島県)

大畑駅のループ線とスイッチバック

黒いSLとピンクの桜—木造駅舎がしっとりした美を演出


肥薩線は非電化の路線なので、架線や電柱がなく、線路際の木々が線路の上にまで、のびやかに枝を伸ばしています。

なかでも、西人吉駅と渡駅の間では、線路におおいかぶさるように桜並木が続き、沿線随一の花の名所になっています。しかも、この区間は、大正生まれの古豪、8620形蒸気機関車が牽引する「SL人吉」号の運転区間なんです。桜のトンネルを抜けて蒸気機関車が驀進してくる様子は、感動的です。

肥薩線には、白石駅、大隅横川駅、嘉例川駅など、開業当時からの木造駅舎が残っている駅がいくつもあります。桜花と風情のある駅舎の組み合わせが味わい深く、日本的な美しさに見とれてしまいます。

大畑(おこば)駅は日本で唯一、ループ線の中にスイッチバックがある秘境駅です。明治時代の木造駅舎や、周辺一帯に咲き誇る桜は、本当に絵になります。駅から歩いて5分ほどのところには「人吉梅園」もあります。こちらは2月下旬〜3月上旬が見ごろです。

【路線データ】◎路線名:肥薩線/◎桜の名所:西人吉〜渡間、大畑駅など/◎区間:八代~隼人(124.2km)/◎車両:8620形蒸気機関車(SL人吉)、キハ40形・キハ140形(特急「かわせみ やませみ」「いさぶろう」「しんぺい」「はやとの風」)、キハ220形など

南北に長い日本列島。各地の開花情報をチェックして旅のプランを立てれば、約2ヵ月にわたって桜を愛でる鉄道旅が楽しめるかもしれません。

参考資料など

取材先:『旅と鉄道』(http://www.tabitetsu.jp/tabitetsu/)