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グッスリ眠れば痩せられる!? 「3・3・7睡眠法」とは?

2019/04/09 17:47 ウェザーニュース

「春眠暁を覚えず」という言葉のとおり、春は寝床が恋しい季節。その眠り方を整えるだけでダイエットにつながるという耳よりなニュースがあります。

日本人の5人に1人は「睡眠に満足していない」

厚生労働省のデータによれば、20~70代の男女7,123人のうち、1週間に3回以上「睡眠時間が足りなかった」と答えた人は、男女ともに約4人に1人、「睡眠全体の質に満足できなかった」と答えた人は、男女ともに約5人に1人という割合です(平成25年「国民健康・栄養調査」の結果より)。これは、多くの人が自分の睡眠に不満を抱えているという証拠でしょう。

じつは、グッスリ眠れないことは、精神的なことだけでなく肉体的なダメージとも密接に関わっています。その1つが「肥満」です。「肥満に悩んでいる人は、正しい睡眠を取れていないケースがほとんどです」と話すのは、医師の左藤桂子さん。

左藤さんは、勤務していた病院の「ダイエット外来」で、30年間に延べ3万人以上の患者に対し、“痩せるお手伝い”をしてきた肥満外来の専門家です。左藤さんいわく、「健康的に痩せるためには、栄養面や運動面の指導も欠かせません。ですが、その一方で正しい睡眠が取れていない人は、食事制限やエクササイズの努力を重ねても、ダイエットには成功しないのです」。

どうやら、「睡眠」と「肥満」は、想像以上に深い関わりを持っているようなのです。

グッスリ眠ってしっかり痩せる「3・3・7睡眠法」とは?

『ダイエット外来の寝るだけダイエット』の著者でもある左藤さんは、正しい睡眠を取ることで、ぐっすり眠って健康的に痩せる「寝るだけダイエット」を提唱しています。寝るだけダイエットを実践した人のなかには、睡眠を改善しただけで「半年で5kg」痩せた人もいるというのです。

なぜ、毎晩、ぐっすり眠るだけで痩せるのだろうか。──その疑問を解くカギとなるのは、私たちが眠っている間に脳から分泌される「成長ホルモン」です。

成長ホルモンには、大きく分けて「疲労を回復する」「脂肪を分解する」という2つの働きがあります。左藤さんによれば、「ぐっすり眠ることで成長ホルモンが十分に分泌されれば、ひと晩に300Kcalの脂肪が分解されます」とのこと。300Kcalは、ご飯で換算すると1.5杯分。つまり、熟眠するだけで毎晩1.5杯分のエネルギー量を消費できる計算になるのです。

ぐっすり眠って痩せるための「正しい睡眠」とは、どのような眠り方か。左藤さんが考案したのは、「3・3・7睡眠法」という眠り方です。「3・3・7」とは次のとおり。

【3】眠り始めの「3時間」は中断せずにまとめて眠ること
【3】夜中の「3時」には眠っていること
【7】1日のトータル睡眠時間は「7時間」を目指すこと

眠り始めの3時間は成長ホルモンが集中して分泌される、夜の10時から夜中の3時くらいまでの時間帯に成長ホルモンが分泌されやすい、長すぎても短すぎても睡眠の質は下がる、という根拠から編み出されたのが「3・3・7睡眠法」です。

正しい睡眠を取って、成長ホルモンを十分に分泌させれば、痩せるだけでなく、日中にダメージを受けた身体もしっかりリセットされて翌朝は元気になる、というわけです。

そのほかにも、正しい睡眠を取るためには、寝室環境を整えることも一助になるといいます。左藤さんに聞いた、寝室環境を整える6つのルールを紹介します。

【寝室環境を整える6つのルール】

(1)痩せたい人は3日に一度、掃除機をかけなさい
ホコリや雑菌などで寝室の空気が汚れていると、眠っている間にそれを吸ってしまうことになる。本来、私たちの身体は外部からの異物が体内に侵入してきた場合、体外に出そうと反応する働きがあるので、睡眠中も「クシャミ」「鼻水」「咳」が出る。それによって眠りは浅くなるもの。眠りを深くしたいなら、毎日の簡単な掃除、3日に1回の掃除機がけか雑巾がけをしよう。

(2)寝室の空気清浄機は国際基準で選びなさい
寝室の空気を綺麗にするためには、空気清浄機を導入するのも効果的。空気清浄機を選ぶときは、価格やデザインではなく「国際的な基準が表示されているか」がポイント。たとえば、“CADR(クリーンエア供給率)”という「1分間にどのくらいの量の空気をきれいにして送り出すのか」を示した表記があるものなどは信頼できるという。各種メーカーの表示をチェックして機能性を重視したうえで選びたい。

(3)熟眠できないのは「豆電球」のせい
眠りにつくときに重要なのは、脳内から分泌されるメラトニンというホルモン。メラトニンが十分に分泌されることで、スムーズに深く眠れるという。メラトニンが効率よく分泌される明るさは0.3ルクスで、ほぼ真っ暗の状態となる。豆電球を点けた部屋の明るさは30ルクスとのことなので、いかに暗くして眠るほうがいいかがわかる。

(4)置いてはいけない「加湿器」と「生花」
加湿器や生花は、どちらも心地のいい眠りにつけそうなイメージがあるものの、じつは寝室には置くべきではないアイテムだという。問題になるのは「水」。花瓶や加湿器のなかの水には雑菌や微生物が繁殖しやすく、寝室の空気を汚す原因にもなりかねない。加湿器を置く際は、水の容器の洗浄をきちんと行うこと。

(5)床から30cm以上の高さで寝なさい
寝室に浮遊するホコリなどは時間の経過とともに、床に近い下のほうへ落ちる。最も空気が汚れているゾーンは、「床から30cmの高さ」とのこと。もしも、その高さに寝ているのであれば、マットレスなどを重ねて高さを調整したり、ベッドの導入を考えたりするのもいいだろう。

(6)「頭」ではなく「首」を支える枕を選びなさい
熟眠には寝具選びも大切。枕は、後頭部ではなく首を支えるもの、敷き布団は背中ではなく腰を支えるものを選ぶようにする。ポイントは、どちらも身体に備わっている「S字」のラインをキープするものを選ぶ、という点。立っているときの骨の形を横から見ると、首と腰の付近はS字のカーブを描いているが、寝具もそれを活かす形で支えるものを選ぼう。

とくに枕は、自分に合わせたものを選べるよう、店で相談することが望ましい。できれば、頭や首の計測なども含め、相談可能な店で購入して、その先に買い換える時期が来ることを見越して、記録を保管してもらうのがおすすめです。

「正しい睡眠」を習慣にすることは、自分の身体を「最適化」するための重要な要素の1つです。日に日にあたたかくなり気持ちよく眠れる今の時期から、「正しい睡眠」を実践してみてはいかがでしょうか。

参考資料など

左藤桂子(さとう・けいこ)
「佐藤桂子ヘルスプロモーション研究所」所長。日本肥満学会、日本内科学会、日本糖尿病学会、日本プライマリケア連合会所属。これまで多くの症例を診て、糖尿病になる前に体重オーバーの時期があることに気がつき、体重コントロールの重要性を提唱。診療所所長として在宅医療に従事しつつ、予防医学、ゲノム診断、生活習慣病などの啓蒙活動を行っている。著書の『ダイエット外来の寝るだけダイエット』(経済界)が好評を博す。