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数学者はどうやって地球の周囲を測った?【3月14日は「数学の日」】

2021/08/06 16:59 ウェザーニュース

3月14日は何の日? こう問われると、「ホワイトデー」と答える人が多そうですね。3月14日の欄に「ホワイトデー」と印字されている手帳もたくさんあります。でも、3月14日はホワイトデーだけではないんです。

3月14日は「円周率の日」でもあり「数学の日」でもあります。直径に対する円周の比率である円周率は、3.1415926535……と続きます。これをしばしば「3.14」と表すため、アメリカなど、幾つかの国で、3月14日を円周率の日と定めているのです。

一方で、日本数学検定協会では3月14日を数学の日と定めています。これも、円周率の近似値である「3.14」にちなんでいます。

数学なんて、役に立たない?

「数学」と聞くと、拒絶反応を示す人もいそうです。「数学なんて、なんの役にも立たない」「小学校で習う算数ができれば十分」などと思っている人もいるでしょう。

でも数学がわかると、いろいろなことを解明することができます。例えば、2200年以上の大昔に、数学の知識と1本の棒を使って、地球の大きさをほぼ言い当てた人がいるというのだから、驚かされます。

その人の名は、数学者としても有名な、古代ギリシアの大学者、エラトステネス(紀元前275年−紀元前194年)です。エラトステネスはどうやって地球の大きさを求めたのでしょうか。

夏至の日に影ができる町とできない町

シエネでは、夏至の日の正午に、深い井戸の底まで光が届き、地上の影は消える。

──当時のエジプトの都、アレクサンドリアの図書館長だったエラトステネスは、とある書物にこのような記述を見つけました。

シエネはエジプトの南部の都市で、現在のアスワンです。「影が消える」ということは、太陽が真上に来て、高度90°から光を降り注ぐから地上では影ができない、ということです。

シエネでは、夏至の日の正午に太陽がまっすぐ頭上に来ることを知ったエラトステネスは、アレクサンドリアではどうだろう? と思い、自分の住むアレクサンドリアの地面に棒を垂直に立ててみました。すると、影が少しできました。太陽光線と棒がなす角度を測ってみると、7.2°であることがわかりました。
シエラはアレクサンドリアの南に位置しています。2つの地点の距離は5,000スタジア(約925km)でした。「スタジア」は古代ギリシアなどで用いられた距離の単位です。

数学を使えば、地球の周囲を求められる

エラトステネスは地球は球体であると考えていました。地球全周は360°で、7.2°の50倍です(360÷7.2=50)。

ということは、5,000スタジアを50倍すると、地球の全周を導き出させると、エラトステネスは考えました。どうしてでしょうか? それは、下の図を見ると、納得できると思います。
5,000スタジア×50=250,000スタジア

1スタジアは約185mなので、250,000スタジア=46,250,000m。キロメートルに直すと、46,250kmです。これは、今わかっている、実際の地球の全周である約40,000kmにかなり近い数値です。

エラトステネスが数学と1本の棒を使って地球の全周を導き出したのは、日本の弥生時代に当たる、紀元前230年ごろです。エラトステネスの頭脳、恐るべし! そして、数学の力、恐るべし!

ということで、「数学の日」でもある3月14日は、数学に触れてみてはどうでしょうか。思いがけない発見や楽しさに出合えるかもしれません。

参考資料など

『面白くて眠れなくなる数学』(桜井進、PHP研究所)/『青木の地学基礎をはじめからていねいに』(青木秀紀、ナガセ)