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「無花粉スギ」を知っていますか?

2019/03/12 11:06 ウェザーニュース

花粉症の原因物質であるスギ花粉を減らそうと、林野庁が本腰を入れたのは今から10年ほど前のこと。現状はどうなっているのでしょうか。

「無花粉スギ」「少花粉スギ」とは?

林野庁が2007年に立ち上げた「花粉発生源対策プロジェクトチーム」の方針は、スギを伐採した後に植林する「花粉症対策スギ」の苗木の供給量を大幅に拡大することでした。

まったく花粉を出さない無花粉スギ(平成28年度現在3品種)と、普通のスギの1%以下しか花粉を飛散させない少花粉スギ(同142品種)を合わせて「花粉症対策スギ」と呼ばれています。林野庁では、無花粉スギや少花粉スギの品種開発と苗木の増産を進めてきました。

全国の植え替えに700年かかる?

「花粉症対策スギの苗木は年間約400万本以上供給できるようになりました(平成27年度現在)。前述のプロジェクトチームの報告書作成時には、林業の停滞などを背景に、すべてのスギ林を花粉症対策スギにするには約700年かかるとの試算値も示されていましたが、現在は林業の成長産業化を進め、植え替えも進んできています。しかし、すべてのスギ林を花粉症対策スギに転換するのは、相当の長期間が必要なのです」と林野庁の担当者が語ります。

スギの人工林は全国に約450万haありますが、1年間に造林(伐採後に苗木を植えること)する面積は0.64万ha。すべての杉林を花粉症対策スギに転換するには700年かかるという計算だそうです。

首都圏は花粉症対策の苗木に

そこでスギ花粉発生源調査を行い、人口の多い首都圏や京阪神への花粉の影響が非常に強いスギ林約10万haを重点的に転換することにしました。

「首都圏のスギ林の植え替えについては、ほぼ100%花粉症対策スギの苗木になりました。今後は全国的に広める予定です」(同担当者)

スギ雄花を枯死させるカビの散布も

花粉症対策スギへの植え替えは年月がかかりすぎるため、別の対策も考えられています。スギ雄花を枯死させるカビの一種(スギ黒点病菌)を散布して、花粉の飛散を抑えようというのです。試験的に散布したところ、2〜3ヵ月で80%以上の雄花が枯死しましたが、懸念事項だったスギの生育には影響がありませんでした。これは世界初の試みでした。

「まだ実験段階で開発に時間はかかりますが、これからスギ黒点病菌を大量培養する技術を開発し、安全性を確認して農薬登録すれば実用化できます」(同担当者)

生態系への影響は未知数の面もありますが、花粉の飛散を抑えて、花粉症を軽減できるかもしれません。

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