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世界に1種!?「冬眠する鳥」がいるって、ほんとう?

2019/01/27 11:39 ウェザーニュース

寒さが苦手で春まで冬眠したいという人はいませんか? ヘビ、トカゲ、カエル、アブラコウモリ、ヒグマなどは、冬眠をする動物として知られています。

爬虫類、両生類、哺乳類に冬眠する動物は珍しくありませんが、鳥類はどうでしょうか? 冬眠する鳥はいるのでしょうか?

プアーウィルヨタカだけが冬眠する!?

恒温動物(周囲の温度に左右されることなく、自らの体温を一定に保つことができる動物)で、しかも、飛び回ることのできる鳥は、自分に適した場所に容易に移動することができます。そのため、鳥は冬眠する必要がないと考えられています。

しかし、例外もあって、今のところ、世界でただ1種、冬眠する鳥が確認されています。主に北アメリカ中西部の乾燥地帯に棲んでいるプアーウィルヨタカという鳥です(冒頭の写真)。北アメリカに棲息するヨタカ類では最小で、体長20cm、体重は30〜60gほど。主に蛾やバッタなどの昆虫を捕まえて食べています。

冬になると、岩の割れ目などに入り、39℃ほどの体温は18〜20℃まで低下し、呼吸も心拍も下げて、3ヵ月ほどの冬眠に入るのです。恒温動物の鳥ではありますが、気温が下がると、プアーウィルヨタカは自分の体温も下げ、代謝を不活発にして、エネルギーの消耗を最小限にするため、岩の割れ目で長期間休むのです。

宮沢賢治に『よだかの星』がある

プアーウィルヨタカには「ヨタカ」の文字が入っています。ヨタカというと、宮沢賢治の短編小説『よだかの星』を思い起こす人もいるかもしれません。

『よだかの星』(作:宮沢賢治/絵:中村道雄、偕成社、税込1,512円)
醜い鳥であるよだかは、ほかの鳥から蔑まされ、本物のタカから脅されたりしていました。その自分が虫を食べ、命を奪って生きていることに気づくと、よだかはつらく厳しいこの世界を捨てる決意をし、一直線に空に昇っていって、ついに青白く燃える星になります。──『よだかの星』はそんな物語です。

この「よだか」はヨタカと考えられています。日本に棲むヨタカとプアーウィルヨタカは、属(ぞく)レベルでは異なりますが、どちらも同じヨタカ目(もく)ヨタカ科の鳥で、近縁の鳥です。ということは、日本のヨタカも冬眠する能力を持っている可能性がゼロではありません。

ただ実際には、ヨタカは日本では夏鳥(なつどり/春から夏に渡来する鳥)なので、日本で冬眠などの休眠をする必要はなさそうですが。

短期間、休眠する鳥は確認されている

冬眠まではいきませんが、短期間の「日内休眠」をする鳥は何種類かいます。

たとえば、ハチドリ類でひと晩、アマツバメ類とネズミドリ類で2~3日、休眠することが観察されています。

休眠場所ははっきりしていませんが、一般的には、その鳥がねぐらにしている場所を選ぶでしょうから、ハチドリ類やネズミドリ類は樹木の上、アマツバメ類はプアーウィルヨタカと同じく、岩の割れ目などで休眠すると考えられています。

ヒトである私たちは、冬眠こそしませんが、疲れたときには、しっかり休息したいですね。

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参考資料など

取材協力/我孫子市 鳥の博物館

『大自然の不思議 増補改訂 鳥の生態図鑑』(監修/山岸哲、学習研究社)、Mieko Kawauchi:Attending the 9th International Hiberanation Symposium “Living in the Cold Ⅲ”(1993) in Colorado.