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「熱燗」「冷酒」「冷や」とは? 日本酒がもっとおいしくなる話

2019/01/20 15:28 ウェザーニュース

毎日、寒いですね。寒いときに恋しくなるものに、日本酒の熱燗を挙げる人も多いでしょう。

でも、熱燗とは、そもそも何なのか。冷や(冷や酒)とは何か、冷酒とどう違うのか、きちんとわかっている人は少ないのではないでしょうか。

飲用温度で大別すると、「冷酒」「冷や」「燗」の3種類

日本酒を飲むときの温度(飲用温度)は、実に多様です。

大別すると、温度の低いほうから「冷酒」「冷や」「燗」の3つに分けられます。ここで、多くの人が戸惑うのが「冷酒」と「冷や」の違いです。「冷や酒」と書けば、「や」があるかどうかの違いだけになります。

「冷酒」は音読みで、「冷や」の「ひ」は訓読みです。ということは、音訓の読み方の違いだけでは、と思う人もいるでしょう。

実際、国語辞典で「冷酒」と引くと、「燗をしない酒。ひやざけ。ひや」といった説明が多く見られます。ほかに「燗をしないで飲めるように造った酒」の説明も、多くの国語辞典に載っています。

ということは、「冷酒=冷や酒」で間違いではないことになりますが、実際はもう少し複雑な事情と経緯があるのです。

「冷酒」という言葉はなぜ登場したのか?

冷蔵庫が普及する以前、日本酒は飲用温度では「冷や」と「燗」の2つに分けられていました。冷蔵庫がなく、飲み物を簡単に冷やすことができなかったため、日本酒をそのままの温度(常温)で飲むか、温めて飲むかしか、基本的には選択肢がなかったのです。

しかし戦後、一般家庭向けの冷蔵庫が発売されると、食べ物や飲み物を簡単に冷やすことができるようになります。冷蔵庫の普及率は、1965年に50%を超え、1976年にほぼ100%になりました。

すると、暑い日には、日本酒も冷やして飲みたくなる人も出てくるでしょう。ビールのように、キンキンに冷えた日本酒で、一献(いっこん)傾けたくなる人が現れても、不思議ではありません。

そうなると、これまでの冷や、つまり常温で飲んでいた日本酒と区別する必要に迫られます。部屋の中に置いたままの日本酒は冷や(冷や酒)で、冷蔵庫で冷やした日本酒も冷や(冷や酒)では、都合が悪くなったのです。

そこで、冷蔵庫などで冷やした日本酒を「冷酒」と呼ぶようになっていきました。そのため、冷蔵庫が普及して以降、日本酒を飲用温度で分けると、温度の低いほうから「冷酒」「冷や」「燗」の3つに分けられるようになったのです。

日本酒は趣ある飲み物!?

熱燗の恋しいこの時季、「熱燗」を単に温めた日本酒と思っている人もいるでしょうが、熱燗は正確には、50℃前後の日本酒を指します。同様に「ぬる燗」は単にぬるめの燗酒というわけではなく、正確には、40℃前後の日本酒のことです。

現在、日本酒は飲用温度で冷酒、冷や、燗の3つに大別され、冷酒と冷やはさらに「雪冷(ゆきひ)え」「涼冷(すずひ)え」などに、燗は「日向(ひなた)燗」「上(じょう)燗」「飛び切り燗」などに分けられています。涼冷えや日向燗など、とても情趣に富む表現ですね。

ホッとひと息つきたいときに人肌燗を楽しむもよし、思いきり寒い夜にとびきり燗を楽しむもまたよし。

日本酒は幅広い飲用温度で楽しめる、世界的にも珍しいお酒です。ぜひいろいろな味わい方を楽しんでみてください。

参考資料など

取材協力/NPO法人FBO(料飲専門家団体連合会)、日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会(SSI)

参考/『酒仙人直伝 よくわかる日本酒』(発行:NPO法人FBO)、一般社団法人 家庭電気文化会(http://www.kdb.or.jp/syouwasireizouko.html)