facebook line twitter mail

インドネシア津波、複雑なメカニズムが明らかに

9月の津波防災 専門家による現地調査報告

2018/11/16 11:55 ウェザーニュース

 9月28日インドネシアのスラウェシ島付近で発生したM7.5の地震により津波や液状化が発生。2000人を超える犠牲者を出し、依然として多くの人が行方不明になっています。
 被害状況の確認や原因究明のため、日本の津波研究の第一人者である、東北大学災害科学国際研究所所長の今村教授は10月4日から6日にかけて調査を実施。様々なことがわかってきました。

複雑な津波発生のメカニズム

 今回の地震はいわゆる【横ずれ型】の地震で、一般的には津波が発生しにくいメカニズムですが、今回は海底もしくは沿岸での何らかの原因で多発したのではないかと考えられていました。

 今村教授がパル周辺の調査を行った結果、津波が起こった原因は揺れに伴って海底で地滑りが起こり、津波が発生したと見られ、これはパル湾の地形が地滑りを起こしやすい特性があったためと考察しました。

 地震発生直後にBMKG(インドネシア気象庁)は津波警報を発令したとしていますが、1時間以内にこの警報は解除されました。これは震源が陸地であること、マグニチュードが(大規模な津波を起こすには)小さく、メカニズム解も水平方向であったからです。

 さらに各地での津波リアルタイム観測データについても停電などで送ることができなかったようです。実際に津波が来た時刻と津波警報が解除された時間の関連は現段階では明らかになっていません。今回の津波の発生を予測することは日本でも難しく、課題として残ります。

現地調査による津波の爪痕

 地震、津波の被害により調査当時の現地は移動が困難で、詳しい調査はパル湾奥と東沿岸に限られました。

 海岸から50mほどの沿岸部での被害が特に大きく、建物の基礎のみを残すような全破壊状況が見られました。

 道路橋も津波により破壊され、5mを超える津波の痕跡が確認できています。一方で沿岸から奥に移動すると建物の被害率は下がり、1~2m程度の浸水深に留まっていることから、通常の津波に比べると被害範囲が限定的だったこともわかりました。

 さらに、「津波の水位が上回った」「馬の足元まで津波につかった」等の住民の証言にある白馬像の高さの計測を行った結果、津波が10m級だった可能性があると判断しています。

日本でも同様の津波の可能性

 海底の地滑りによる津波は日本でもあり、駿河湾を震源に静岡県焼津市や御前崎市で震度6弱を観測した2009年8月11日のM6.5の地震に伴い海底で地滑りが発生。

 高さ約1mの津波が到達しています。ただし、津波による大きな被害はありませんでした。

 今後、被災地での復旧・復興に支援すると共に、我が国での津波防災(特に警報体制)に関する知見を整理し、今後の対策に活かしていきたいと考えます。