霧の香(きりのか)
「香」とっても、特に霧の匂いを差すわけではなく、霧が立ちのぼっていく様子を、お香の煙に見立てた言葉です。
そういえば、春の霞は、あまり立ちのぼるとは言いません。秋の澄み切った空気の中を立ちのぼっていく霧…。その時、ひんやりとした気配が香るように感じられるのかもしれません。
「霧の香や松明捨る山かづら」
ー加舎白雄(かやしらお)
そういえば、春の霞は、あまり立ちのぼるとは言いません。秋の澄み切った空気の中を立ちのぼっていく霧…。その時、ひんやりとした気配が香るように感じられるのかもしれません。
「霧の香や松明捨る山かづら」
ー加舎白雄(かやしらお)
細小波(いさらなみ)
「いさら」は「少しばかりの」という意味を添える接頭語です。では「細小波」は、小さな波のことかと思えばそうではなく、霧のことをいいます。大海原のような空を、たゆたうように動いていく霧…。それを小さな波に例えたというわけですね。
「いさらなみ晴れにけらしな高砂の 尾の上の空に澄める月かげ」
ー源師俊(みなもとのもろとし)
細小波がひいたあとには、おだやかで静かな空が広がります。
「いさらなみ晴れにけらしな高砂の 尾の上の空に澄める月かげ」
ー源師俊(みなもとのもろとし)
細小波がひいたあとには、おだやかで静かな空が広がります。
嘆きの霧(なげきのきり)
「嘆きの霧」はため息のことです。そういえば、心が晴れないことやわだかまりのことを、「心の霧」「胸の霧」などといいます。心に立ち込めた霧が、ため息として外に出ていくように思えたのかもしれません。
しかも古代の人は、ため息が霧になると信じていたようです。霧が立てば、嘆いている人がどこかにいると思ったことでしょう。
「君が行く海辺の宿に霧立たば 我が立ち嘆く息と知りませ」
ー作者未詳「万葉集」
しかも古代の人は、ため息が霧になると信じていたようです。霧が立てば、嘆いている人がどこかにいると思ったことでしょう。
「君が行く海辺の宿に霧立たば 我が立ち嘆く息と知りませ」
ー作者未詳「万葉集」
参考資料など
季刊SORA 2014秋号