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「“彼岸潮”は年一番の大潮」は間違いだった!?

2018/09/24 09:32 ウェザーニュース

彼岸潮(ひがんじお)という言葉をご存知でしょうか。彼岸(春分と秋分)の頃の潮の満ち引きをいいます。日本大百科全書(ニッポニカ)には「春秋分の頃の大潮時には太陽だけでなく月も赤道付近にあるので、1年中でもっとも大きな潮汐になる」と書いています。本当なのでしょうか?

季語にもなっている「彼岸潮」

彼岸潮は俳句の季語にもなっています。彼岸は墓参りに行く風習があるため、「俗名は伊勢松とだけ彼岸潮 笑吉」、潮の満ち干きが大きいことから、「橋脚を洗う遡上の彼岸潮 能村研三」などと詠まれています。

日本一の潮位差の有明海で検証


定説では彼岸潮が1年中でもっとも大きな潮汐(ちょうせき)になるといわれているので、潮位表で検証してみました。潮位表というのは別名「天文潮位」といって地球と太陽と月の位置関係から計算したもので実測ではありません。

選んだ地点は、佐賀県太良町にある大浦という検潮所です。この検潮所は日本で干満の差が一番大きい有明海に面しています。

彼岸潮の潮位差はどれくらいあるのでしょうか。
春の彼岸の2018年3月21日前後の大潮は、3月17日の新月の日で潮位差は426cmでした。秋の彼岸の2018年9月23日前後の大潮は、9月25日の満月の日で潮位差は446cmでした。

夏や冬は潮位差が大きい


しかし、彼岸潮のときより潮位差が大きい時期がありました。たとえば、2018年6月14日の新月のときの潮位差は496cmを記録しています。

2018年1月2日の満月のときの潮位差は544cmに達しています。春秋の彼岸のときより夏や冬の潮位差が大きくなるのは全国的な傾向です。
潮位表を見れば一目瞭然なのですが、なぜ「彼岸潮が1年中でもっとも大きな潮汐(潮位差)になる」と言い伝えられてきたのでしょうか?

彼岸は仏教用語で極楽浄土(西の方角にあると考えられている)のことで、この日は太陽が真西に沈むことから、極楽浄土を身近に感じる日とされてきました。その彼岸のときの潮の満ち引きは特別な大潮と考えられてきたのではないかと推測されます。