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飛行機の主翼、先端が立っているのはなぜ?

2018/08/25 11:43 ウェザーニュース

8月は夏休みの旅行や帰省で飛行機を利用する人が増えますね。飛行機に乗ったときに窓から外を見ると、主翼の先端が少し立っているのを見たことはありませんか。

腕を左右に広げて手のひらを反らしたようで格好良いですね。これは「ウィングレット」といって、大切な役割を果たしているのです。ANA広報部に聞きました。

1998年に最初のウィングレット機

−−ANAが初めてウィングレット仕様機を導入したのはいつですか?

「1998年に就航したボーイング747-400型国際線仕様機が初めてのウィングレット仕様でした。ジャンボジェット・シリーズで初めてウィングレットを装備した機種です。2014年に退役しました」

−−今はウィングレット仕様の機体はどのくらいあるのですか?

「当社は約200機を運航していますが、そのうちウィングレット仕様は大型機を中心に現在約60機を数えます」

−−ウィングレットの利点は何ですか?

「燃費の向上がメインですが、離着陸時の騒音値が減少するという利点もあります。最初からウィングレット仕様の機体を導入するだけでなく、後からウィングレットを装着することもあります。たとえば、当社はボーイング767-300ERにウィングレットを装着しましたが、機体重量は約1t増加したのに、燃費は約5%弱削減するという効果を生んでいます。また、騒音値が減少すれば着陸料も軽減します」

−−ウィングレットは、なぜ燃費を向上させたり、騒音を減少させるのでしょうか?

「そもそも飛行機は翼の上面を流れる空気と下面を流れる空気の気圧差で空中に浮くことができるのです。もう少し言うと、飛行中の飛行機の翼の上面の気圧は低く、下面が高くなるため、気圧の低いほうから高いほう、つまり上方へと持ち上げる力が発生し、揚力が生まれるのです」
「飛行中の空気の流れをみると、翼の付け根から先端の手前までは、空気が翼の上と下にきれいに分かれて後方に流れています。ところが、翼の先端部分では、気圧差を隔てていた翼がなくなるため、気圧の高い下面側の空気が気圧の低い上面側に向かって流れ込みます。この際に翼端を巻き込んで円を描くように空気が流れるので、これを『翼端渦』と呼んでいます」

「この『翼端渦』は飛行中の飛行機にとって抵抗となります。しかし、翼の先端を上に向けるウィングレットにすると、翼端で空気が翼の上に回り込みにくくなり、『翼端渦』の発生を低減するのです」

−−なるほど、ウィングレットには単なる格好良さだけではなく、燃費向上と騒音減少という効果があるのですね。なお、最新のボーイング787ではウィングレットがなくとも、燃費の向上が進んでいるとのことです。