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昨年から続く黒潮大蛇行、今後の生活や気象への影響は?

2018/08/12 11:16 ウェザーニュース

黒潮が紀伊半島から遠州灘沖で南へ大きく蛇行する「黒潮大蛇行」が昨年8月から続いています。12年ぶりのことですが、私たちの生活や気象にどう影響しているのでしょうか?

シラスは不漁、カツオは漁場が変わった

「通常とは黒潮の流れが異なるので、沿岸漁業は深刻です。去年はシラスが不漁、今年の春はカツオの漁場も南下したため、漁船の燃料費がかさむといった影響を受けています」と語るのは、海洋研究開発機構の美山透主任研究員(アプリケーションラボ)です。

伊豆諸島の八丈島近海ではキンメダイの漁獲量も減っていて、黒潮大蛇行が発生すると漁業は大きな打撃を受けています。なぜ黒潮大蛇行が発生するのか、長い間謎でしたが、黒潮の上流である台湾沖にできる渦が一つの要因ではないかと海洋学者たちが解明しつつあります。

関東地方は雪が降りやすくなる

黒潮大蛇行の影響は漁業だけでなく、気候にも及びます。

「黒潮大蛇行が発生すると関東地方に雪が降りやすくなる傾向があります。実際、今年1月には東京都心でも積雪20cmを超える大雪が降り、4年ぶりに大雪警報が出ました」(美山さん)

黒潮大蛇行の影響はそれだけではありません。

「黒潮大蛇行が発生すると、静岡沿岸の潮位が高くなることが知られています。今回、台風12号により国道135号線(小田原)で高波をかぶってパトカーなどが流されたり、熱海のホテルが高波被害を受けました。そこで調べてみると、黒潮大蛇行による潮位上昇は伊豆半島東側では最大でも5cm程度なので、影響は少なかったと考えています」(美山さん)

しかし、潮位上昇は伊豆半島の西側(東海地方など)で大きくなります。

「2017年10月の台風21号は強い勢力のまま静岡県に上陸しましたが、このときは黒潮大蛇行で東海地方の潮位が20〜30cm上昇していたため、台風の風と気圧、それに大潮と満潮が重なって沿岸に浸水・冠水被害が生じました」(美山さん)

黒潮大蛇行は今後も続く

美山さんは海洋研究開発機構のWebサイト『黒潮親潮ウォッチ』で毎週、「黒潮予測」を公開しています。それによると、少なくとも9月までは黒潮大蛇行が継続しそうです。

「黒潮大蛇行はピークを過ぎたと思われますが、今秋までは継続すると思われます。台風シーズンと重なるので、昨年10月の台風21号のように東海沿岸は浸水被害に警戒する必要があります」(美山さん)

1965年以降、黒潮大蛇行は今回を含めて6回発生していますが、直近3回は1年数ヵ月で終了しています。これからも私たちの見えないところで起きている自然現象に注意を払う必要があります。