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酷暑に甘酒がいいのはなぜか?

2018/08/09 10:55 ウェザーニュース

全国的に記録的な暑さが続いています。7月23日には熊谷市(埼玉県)で41.1℃の国内最高記録が5年ぶりに更新されました。2010年や2013年の猛暑年に比べ早い時期から暑さが続いているため、熱中症による救急搬送者数も記録的となっています。

そこで「危険な暑さ」を乗り切る食事について、発酵学者の小泉武夫東京農業大学名誉教授に聞きました。

Q.記録的な暑さが続いています。どんな食事がいいのでしょうか?

「ずばり甘酒です。甘酒の成分の20%ほどがブドウ糖です。また、原料である米のタンパク質が麹菌の持つ酵素の働きで必須アミノ酸に換えられ、甘酒には山のように必須アミノ酸が含まれているのです。さらにビタミンB1、B2、B6、パントテン酸、ビオチンなどのビタミン類が非常に多く含まれています」

Q.甘酒は江戸時代から夏に飲まれていたのですか?

「1853年、江戸時代後期に喜田川守貞(きたがわもりさだ)が『守貞漫稿(もりさだまんこう)』という書物を世に出しています。その中の『甘酒売り』のページには『江戸京大坂では夏になると甘酒売りが市中に出てくる。一杯四文也』と書かれています。

この箇所を読んだとき、どうして冬の飲み物である甘酒を夏に売るのだろうと不思議に思い、いろいろ調べてみると、甘酒は俳句の季語でも夏になっていました」

Q.先生は飲む点滴とおっしゃっていますね

「言い換えれば、甘酒はブドウ糖の溶液であり、必須アミノ酸の強化液であり、夏の総合ビタミンドリンクであるということです。つまり、現代の医学でいえば点滴と同じなのです。当時の死者が7月から9月の夏場に集中していたことがわかっています。

冬の寒さは火に当たってしのげても、老人や病人にとって夏の暑さを乗り越えるのは大変厳しいことだったのでしょう。そんなとき売りに来る甘酒の一杯は、病人に点滴を打つくらい効果のあるカンフル剤となって、スタミナ回復に役立ったと思われます。

どの時代も庶民は、常に生きるための工夫をしてきました。日本の厳しい夏を乗り越える知恵として、発酵食品である甘酒は大いにとり入れるべきだと思っています」

8月も厳しい暑さが続くと予想されています。この暑さを乗り超えるには、夏バテに効く食事をしっかり摂ることが有効です。

小泉先生も「甘酒を口に近づけると、まず甘い麹の香りが鼻腔をくすぐります。おいしそうな匂いに惹かれて口に含むと、口いっぱいに広がった甘味の中から上品な米のうま味がピュルピュルと湧き出てきます」と絶賛しています。味わいながら元気をもらいましょう!