歴史的な敗北の伏線は?
ドイツらしからぬ、あまりに非効率的だった戦い方も原因のひとつです。ブラジル大会で猛威を振るったドイツのパス・サッカーですが、今大会では不用意な中盤でのボール・ロストや、決定機を外し続けたことで、相手チームのカウンターの恰好の餌食になってしまいました。
まさかの敗戦となった初戦のメキシコ戦はもちろん、湿度が80%に達したスウェーデン戦でも土壇場のゴールで勝利しましたが、引いて守る相手を最後まで崩せず、前がかりになっていた守備陣の裏を次々と狙われ、全員が繰り返し自陣に戻ることで、スタミナをどんどん消耗していきました。その疲れは次の試合にも引き継がれたことでしょう。
3戦目の韓国戦では試合直前に気温が30℃まで上がり、午後には夕立があったことで、ピッチ上での公式練習が中止になりました。条件は相手の韓国も同じでしたが、パス・サッカーを信条とするドイツにとって芝生に慣れておくことは、韓国よりもずっと重要だったはずです。気温や湿度が次々と変化する夏のロシアの気象に、ドイツ代表は戸惑ったのかもしれません。
ドイツが攻撃的なパス・サッカーを実現するには、イレブン全員が最高のコンディションを保ち、高度な連携プレーが実現可能な状態であり、そして絶対にミスをしないという集中力が求められます。一部の選手が認めたような慢心がそうさせたのか、ドイツの攻撃は独りよがりのプレーが多く、コンビネーションもちぐはぐでした。周到な準備の末に優勝した前回のブラジル大会の時と、まったく違うチームがそこにあったのです。
まさかの敗戦となった初戦のメキシコ戦はもちろん、湿度が80%に達したスウェーデン戦でも土壇場のゴールで勝利しましたが、引いて守る相手を最後まで崩せず、前がかりになっていた守備陣の裏を次々と狙われ、全員が繰り返し自陣に戻ることで、スタミナをどんどん消耗していきました。その疲れは次の試合にも引き継がれたことでしょう。
3戦目の韓国戦では試合直前に気温が30℃まで上がり、午後には夕立があったことで、ピッチ上での公式練習が中止になりました。条件は相手の韓国も同じでしたが、パス・サッカーを信条とするドイツにとって芝生に慣れておくことは、韓国よりもずっと重要だったはずです。気温や湿度が次々と変化する夏のロシアの気象に、ドイツ代表は戸惑ったのかもしれません。
ドイツが攻撃的なパス・サッカーを実現するには、イレブン全員が最高のコンディションを保ち、高度な連携プレーが実現可能な状態であり、そして絶対にミスをしないという集中力が求められます。一部の選手が認めたような慢心がそうさせたのか、ドイツの攻撃は独りよがりのプレーが多く、コンビネーションもちぐはぐでした。周到な準備の末に優勝した前回のブラジル大会の時と、まったく違うチームがそこにあったのです。
ブラジル大会の気象条件に慣れるための秘策とは?
ブラジル大会を振り返れば、開催国ブラジルを7-1で破るなど、圧倒的な強さを見せたドイツ代表。優勝した背景には、現地の気象条件をうまく克服したことも一因だと考えられています。
南半球に位置する6月のブラジルは、季節的には冬を迎えていました。とは言え、日本の国土の22.5倍の広さを持つ国です。南部は比較的涼しいですが、赤道近くの熱帯地域を抱える北部は高温多湿で、昼間は気温が30℃を超えることも少なくありません。
ましてドイツ代表はグループリーグの3試合を北部の海沿いの町で行うことが決まっており、そのうち2試合は13時キックオフだったのです。ドイツはブラジルの気象条件に慣れるため、快適な都市部ではなく、わざわざ郊外に総工費約17億円を投じてキャンプ用の施設を建設しました。
ドイツは、ベスト4に進出した他のチームと比較して、抜きん出ていた点が2つありました。ひとつはボール支配率です。一試合平均 57.6%というドイツの記録は、53%弱だった2位アルゼンチンを大きく上回っていました。加えてパス本数が合計593本という数字は、2位アルゼンチンの464本に100本以上も差を付けており、その成功率も83.1%という極めて高い数字だったのです。
このドイツ流パス・サッカーは、ブラジル大会では、120分の激闘となったアルゼンチンとの決勝戦で、最後まで優位を保つ余裕をもたらし、結果的に優勝へと導きました。しかしロシア大会では同じサッカーで横綱相撲を取ろうとした結果、早期敗退に追い込まれてしまいました。
南半球に位置する6月のブラジルは、季節的には冬を迎えていました。とは言え、日本の国土の22.5倍の広さを持つ国です。南部は比較的涼しいですが、赤道近くの熱帯地域を抱える北部は高温多湿で、昼間は気温が30℃を超えることも少なくありません。
ましてドイツ代表はグループリーグの3試合を北部の海沿いの町で行うことが決まっており、そのうち2試合は13時キックオフだったのです。ドイツはブラジルの気象条件に慣れるため、快適な都市部ではなく、わざわざ郊外に総工費約17億円を投じてキャンプ用の施設を建設しました。
ドイツは、ベスト4に進出した他のチームと比較して、抜きん出ていた点が2つありました。ひとつはボール支配率です。一試合平均 57.6%というドイツの記録は、53%弱だった2位アルゼンチンを大きく上回っていました。加えてパス本数が合計593本という数字は、2位アルゼンチンの464本に100本以上も差を付けており、その成功率も83.1%という極めて高い数字だったのです。
このドイツ流パス・サッカーは、ブラジル大会では、120分の激闘となったアルゼンチンとの決勝戦で、最後まで優位を保つ余裕をもたらし、結果的に優勝へと導きました。しかしロシア大会では同じサッカーで横綱相撲を取ろうとした結果、早期敗退に追い込まれてしまいました。
ハリルホジッチがドイツ代表を苦しめた
思い起こせばブラジル大会で、最もドイツを追い詰めたのは、ベスト16で対戦したヴァヒド・ハリルホジッチ監督率いるアルジェリアでした。彼らは自陣に引きこもって守備を固め、前線にスピード溢れる選手を配して次々と相手守備陣の裏を狙い、あわや勝利というところまでドイツを追い詰めました。
ロシア大会のメキシコ、スウェーデン、韓国が選択した戦術はいずれも当時のアルジェリアと大きく変わりませんでした。ドイツは弱点を克服できないまま4年間を費やしたということです。ブラジル大会以降、あまりに順調に来てしまったことが、問題点をうやむやにしてしまったのかもしれません。
文:志原卓(サッカーライター)
ロシア大会のメキシコ、スウェーデン、韓国が選択した戦術はいずれも当時のアルジェリアと大きく変わりませんでした。ドイツは弱点を克服できないまま4年間を費やしたということです。ブラジル大会以降、あまりに順調に来てしまったことが、問題点をうやむやにしてしまったのかもしれません。
文:志原卓(サッカーライター)