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初夏に渡来するホトトギスはウグイスが育てていた!?

2018/05/18 08:10 ウェザーニュース

目には青葉 山時鳥 初松魚

初夏になると、この句を思い起こす人もいるでしょう。ン、なんと読む(詠む)の? と思った人も、次のように書くと、わかるのでは!?

目には青葉 山ホトトギス 初ガツオ

江戸時代の俳人、山口素堂(1642-1716年)の俳句で、初夏の季節感を視覚(青葉)、聴覚(山時鳥)、味覚(初松魚)でとらえています。今回はこの中の時鳥、つまりホトトギスとはどんな鳥か、見ていきましょう。

「テッペンカケタカ、ホンゾンカケタカ」って?

ホトトギスは渡り鳥で、カッコウ目・カッコウ科に分類される、カッコウの仲間です。
ホトトギス
アフリカ東部、マダガスカル、インド、中国南部、朝鮮半島、日本などに分布し、日本には、5月ごろに飛来します。春から初夏に渡来し、繁殖して、秋に暖かな南方に飛び去る夏鳥(なつどり)の一種でもあります。

ホトトギスはカッコウの仲間ではあるけれど、鳴き声はカッコウとはかなり違います。カッコウはその名のもとになっているように、「カッコウ、カッコウ」と、私たちには聞こえるようにさえずります。

カッコウ
では、ホトトギスは? 「ホーホケキョ」!? いいえ、違います! 「ホーホケキョ」はウグイスですよ。

鳥のさえずりなどをそれに似た言葉に置き換えることを「聞きなし」といいます。その聞きなしで表せば、「特許許可局」「天辺(てっぺん)欠けたか、本尊(ほんぞん)欠けたか」などがホトトギスのさえずりです。

「托卵」という、したたかな作戦

鳴き声は似ていないカッコウとホトトギスですが、同じ習性を持っています。なんだか、わかりますか?

カッコウもホトトギスも、ほかの種類の鳥の巣に卵を産んで、その鳥にわが子を育ててもらいます。これは「托卵(たくらん)」といわれるもの。日本に飛来するカッコウ科のカッコウ、ホトトギス、ジュウイチ、ツツドリはいずれも托卵します。

ホトトギスは主にウグイスの巣に托卵します。そして、卵から孵(かえ)ったホトトギスのヒナは、托卵先の鳥の卵とヒナを巣から落としてしまうのです。まるでホトトギスのヒナによる、ウグイスの巣の“乗っ取り”。ウグイスにしてみれば、たまったものではないですね。

でもウグイスも、されるがままにしておくとは限りません。親のウグイスは、托卵に気づいたときはその卵を落とすなどの対抗措置をとります。ヒトが知らないところで、激しい攻防が繰り広げられているのです。

「鳴かぬなら鳴くまで待とうホトトギス」

ホトトギスは主に山地の森林に住んで、昆虫などを食べています。この時季、山に入ってはみたものの、ホトトギスの声が聞こえないな、ということもあるでしょう。

でもそこは、徳川家康流に「鳴くまで待とうホトトギス」の心持ちで、ゆったり構えてみてはどうでしょうか。「殺してしまおうホトトギス」などとは、ゆめゆめ思わずに。なにしろ、ホトトギスやカッコウが飛来する豊かな自然があること自体、ありがたいことなのですから。

目には青葉 山時鳥 初松魚

今一度、噛み締めたい一句です。

参考資料など

『ニューワイド 学研の図鑑 増補改訂 鳥』(学習研究社)、『改訂新版 世界文化生物大図鑑 鳥類』(世界文化社)、『知っているようで知らない鳥の話』(細川博昭、SBクリエイティブ サイエンス・アイ新書)、『大自然のふしぎ 増補改訂 鳥の生態図鑑』(学習研究社)
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