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気象と体の関係を重視する東洋医学「五運六気」

2018/05/15 10:51 ウェザーニュース

東洋医学に「五運六気」(運気論)と呼ばれるものがあります。昔から中国では、その年の気象を予測し、健康管理を含めてさまざまに活用されてきました。そこで今回、源保堂鍼灸院の瀬戸郁保先生、瀬戸佳子先生に、五運六気での「気象予測」の方法を伺ってきました。古代中国版「ソラヨミ」にふれてみてはいかがでしょうか。

「五運(地中)」と「気(大気)」の組み合わせで気象を予測

「五運六気」の五運とは、「地中」の気象現象を指し、それには「木(風)・火(暑、熱)・土(湿気)・金(乾燥)・水(寒)」の5つがあるとされています。一方、六気とは、「空間(大気)」の気象現象を指し、「風・熱・湿・燥・寒・火」の6つがあるとされています。

五運六気では、各時季の「気象」というものは、この五運と六気とが組み合わさることによって起こるとしています。そして、古代中国では、長い時間をかけての経験と観測で、その組み合わせには法則性があり、気象現象は「干支(十干十二支)」と同じく60年で一巡すると考えられるようになりました。

この60通りの組み合わせを示したのが「五運六気」であり、60通りの年盤をつくり、それを用いてその年の気象を予測していったのです。

気象と体の関係を重視する「五運六気」

さらに五運六気の特徴的なところは、東洋医学と結びつき、単に気象を予測するだけでなく、そうした気象現象が人々の体にどのような影響を与えるのかまで明らかにしようとしたことです。

たとえば、東洋医学では、夏はその暑さによって汗を流し、体の中にある水分を入れ換える季節としています。そのため、夏にはある程度の「暑さ」が必要です。ところが、本来「暑い夏」であるべきものが、それに反して「涼しい夏」になってしまう年もあります。

その場合、そのまま何もせずに過ごせばあまり汗をかけないため、うまく水の交換ができなくなります。すると、古い水が残ったまま次の季節を迎えることになり、その影響で秋や冬に不調が出やすくなります。

一方、本来よりも暑すぎる夏になれば、今度は汗が出すぎて、その際、適切に水分補給をしなければ、体の乾燥が進みます。これも、秋や冬の不調の要因になります。そこで、あらかじめ「涼しい夏」や「暑すぎる夏」などを予測できれば、どう過ごすと体を本来の状態に維持できるのかをアドバイスできます。

季節の巡りは順調にいく時もあれば、いかない時もあります。そもそも季節の巡りとは自然現象ですから、むしろ順調にいかないほうが多いといえます。

東洋医学では、人間の体はそれぞれの季節において次の季節に向けた準備をしていると考えますが、季節の巡りが順調でないと、体はその準備をうまく進められず、次の季節での不調につながってしまいます。

そうした事態を避けるためには、本来の季節に合わない不順な巡りがやってきても、それを早めに予想し、それに沿って体を順応させて、順当に体を整えていくことが欠かせません。中国では、そうした健康維持のヒントとしても、古くから、そして現代においても、「五運六気」が活用されているわけです。

「五運六気」の今年の気象は?

ちなみに、「五運六気」による2018年の気象予測ですが、年全体の気象の特徴は「火運太過」といって、暑さや熱が強い巡りになっているようです。
「ただし、上半期の特徴は「太陽寒水」(『水』や『寒』が支配的なこと)のため、強すぎる『火』が『水』『寒』とうまく相殺されれば、暑さは多少抑えられる可能性も。続く下半期の特徴は『太陰湿土』(『蒸し暑さ』『湿気』が強いこと)なので、その通りなら、雨や、冬になれば雪が多くなるかもしれません」(瀬戸先生)

一方、瀬戸先生によると、寒さについては、「『火運大過』の今年は、さほど厳しくならないかも、という予想もできる」とのこと。

古代中国で確立された「五運六気」という気象予測の方法。こうした歴史を知ると、私たち人間がどれほど気象を「読む」ことに強い関心を持ち、重要視していたのかを、改めて気づかされますよね。

参考資料など

取材先:源保堂鍼灸院(http://genpoudou.com/)、瀬戸郁保氏/瀬戸佳子氏
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