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「鯉のぼり」は雨が天敵だった!?

2018/05/04 13:59 ウェザーニュース

初夏の風物詩・鯉のぼりの季節がやって来ました。この鯉のぼり、実は誕生から様々な変化を経て、現在に至っているのです。

絵から飛び出して空を泳ぐ

江戸時代、男子のすこやかな成長を願い、屋外に幟(のぼり)を立てる風習がありました。この幟に、鯉の絵を描いたのが鯉のぼりの起源です。この鯉は、中国の故事「登竜門」に由来します。

「竜門」と呼ばれる黄河の激流を、多くの鯉はのぼることができませんが、もしのぼることができたなら竜になる、という伝説です。男子のすこやかな成長を託す存在として、このたくましい鯉はぴったりだったのでしょう。

やがて絵を飛び出した鯉は立体化され、空を気持ちよく泳ぐようになったのです。

なお江戸時代はまだ、1本の竿に1匹の真鯉(黒い鯉)を掲げただけでしたが、明治時代になって緋鯉(赤い鯉)が加わるようになりました。もともとは別々に掲げられていた、筒状のひらひらした「吹流し」を上部に組み合わせたのも、明治になってからのことです。

材質を変えて雨・弱風に対抗

さて、激流をのぼる力強さの象徴である鯉のぼりですが、実際の鯉のぼりにとって水は天敵でした。空を泳ぐ鯉のぼりにとっての水とは、もちろん「雨」のこと。江戸時代の鯉のぼりは、紙で作られていたからです。

しかし明治に入ると木綿製の鯉のぼりが広まり、耐久性がアップ。そして時を経て1960年代に入ると、軽くて丈夫なナイロン製の鯉のぼりが広く普及するようになりました。ちなみにこの頃、真鯉(黒い鯉)、緋鯉(赤い鯉)に、青・緑・だいだいの鯉が加わるようになり、我々のイメージする「鯉のぼり」が形作られています。

この後、ポリエステル製のこいのぼりも登場。現在では、弱い風でも力強く空を泳ぐ、この軽くて丈夫なナイロン製・ポリエステル製のこいのぼりが主流になっています。ただ、いくら水に強くなったとはいえ、長持ちさせることを考えると、雨ざらしは避けたほうがいいでしょう。

姿や材質など、時代とともに新しい変化を見せてきた鯉のぼりですが、込められた意味合いにも新しい変化が起きています。

子供の成長や家族の幸せを願うだけでなく、最近は逆風を力強く泳ぐその姿から、「復興のシンボル」として被災地の復興に役立てようという動きも見られます。

雄大な空を元気よく泳ぐその姿を見ると、なるほど力がわいてくる気がしませんか。

参考資料など

『鯉のぼり図鑑:おもしろそうに およいでる』(小学館、編集:日本鯉のぼり協会、著:林直輝)
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