facebook line twitter mail

【W杯と気象の名場面】西ドイツが戦い抜いた、伝説の「豪雨の連戦」(1974年)

top

2018/07/11 17:57 ウェザーニュース

ワールドカップは猛暑が話題になることが多いですが、雨や低温の試合が多かったことで知られる大会もありました。「トータルフットボール」でオランダ代表が旋風を巻き起こした、1974年の西ドイツ大会もそうです。

この大会で、のちに語り継がれることになる「豪雨の連戦」を経て優勝したのが、決勝戦でオランダを下した地元西ドイツ代表でした。

大雨に立ち向かったベッケンバウアー

1974年6月30日、2次リーグの西ドイツとスウェーデンの試合は、激しい雨の中で始まりました。ぬかるんだピッチに悪戦苦闘する両チーム。パスはつながらず、スウェーデンの主力選手が1人、前半で負傷退場するなど、転倒する選手が続出しました。

前半を1-0とリードされて折り返した西ドイツでしたが、後半に入り、怒涛の反撃をみせました。「リベロ」の第一人者である皇帝フランツ・ベッケンバウアーが、劣悪なピッチをものともせず、後方からドリブルで駆け上がり、再三のチャンスを演出。

結局、後半だけで西ドイツは、疲労で足が止まったスウェーデンから4点を奪い、勝利を手にしました。汗よりも、雨が体をぬらした試合だったのです。だが次戦でも、西ドイツは大雨に見舞われることになります。

西ドイツを優勝に導いたさらなる豪雨

7月3日、2次リーグ最終戦で西ドイツは決勝への切符をかけ、ポーランドと戦うことになりました。この日は試合開始前の豪雨でピッチは水浸し。とてもプレーできる状態ではありませんでした。

しかし、消防ポンプ車で水を吸い上げ、大会スタッフがローラーで懸命に水をかき出し、定刻より遅れましたが、何とか試合を開始することができました。

ポーランドはこのワールドカップ、ここまで5戦5勝。試合前はポーランド有利との声が多く聞かれましたが、試合が始まると、ぬかるんだピッチに対応できず、思うようなプレーができません。

一方、前の試合でこうしたピッチを経験済みの西ドイツは、次第に試合を優勢に進め、エースストライカーのゲルト・ミュラーが、ぬかるんだピッチ上を躍動。そのミュラーが後半31分に決勝点となるゴールを決め、1-0で西ドイツが勝利しました。

7月7日、好天に恵まれた決勝のオランダ戦では開始2分で1点を失いましたが、冷静さを失わず、その後、相手の中心選手ヨハン・クライフを封じ込め、逆転に成功。2-1で勝利し、地元開催の大会で見事優勝を果たしたのです。

なお、この決勝戦は、日本で衛星生中継された初のワールドカップの試合となりました。

勝負に“たら・れば”は禁句ですが、もし西ドイツ代表が豪雨の連戦を経験しなければ、決勝戦でベッケンバウアーとクライフの名勝負を見ることはできなかったかもしれません。