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ルネサンスの画家、ボッティチェリは「春」をどう描いたか?

2018/05/14 11:07 ウェザーニュース

全国各地、春の陽気に包まれているところが多いですね。その「春」は古今東西、数多くの絵にも描かれてきました。有名な絵もたくさんあります。なかでも、ルネサンス期の画家、サンドロ・ボッティチェリ(1445‐1510年)の『春(プリマヴェーラ)』は多くの人の琴線に触れる作品ではないでしょうか。

ボッティチェリは『春』とは名づけていない

イタリア語では『プリマヴェーラ(Primavera)』、日本語では『春』と一般的に呼ばれるボッティチェリの作品は、実は彼自身が『プリマヴェーラ』と名づけたわけではありません。イタリアの画家で建築家のジョルジョ・ヴァザーリ(1511‐1574年)が、ボッティチェリのこの作品を「春を描いた絵」と表現したことがこの作品名の由来といわれます。

ボッティチェリは『春』で、いったい何を描こうとしたのでしょうか。『もっと知りたいボッティチェッリ 生涯と作品』などの著書がある、九州大学人文科学研究院准教授の京谷啓徳さんに話を聞きました。

「ボッティチェリは愛と美の女神であるヴィーナスにまつわる絵を2作描いています。一つは『ヴィーナスの誕生』で、もう一つが『春』。主人公はどちらもヴィーナスです。『ヴィーナスの誕生』では文字どおりヴィーナスが誕生したところを、『春』ではヴィーナスが女神として自分が支配する国の中心にいる様を描いています」
ボッティチェリの『ヴィーナスの誕生』
ということは、『春』における季節の「春」はどんな意味を持つのでしょうか。

暖かな西風が吹いて、春が到来する

京谷さんによると、向かって右端の青い神は「西風の神 ゼフュロス」で、その隣の「大地の女神 クロリス」はゼフュロスから逃れようとしています。クロリスの口からは花々がこぼれ落ちています。これは、春になって、凍てついた大地に草花が芽生える自然現象を表しているそうです。

では、春の女神であるプリマヴェーラはどこにいるのでしょうか。

「クロリスの左隣の、全身に花をまとった女神が春の女神のプリマヴェーラ、あるいは花の女神のフローラと考えられています。いずれにしても、春の風である西風が吹いて、大地が暖かくなって、草が芽吹き、花がたくさん咲く様子を、向かって右側の3人の神様で表しているといえます」(京谷さん)

春を愛でる絵でもある

ボッティチェリの『春』には、ほかにも興味深い描写があります。

プリマヴェーラ(あるいはフローラ)の左隣がヴィーナスで、そのヴィーナスの頭上には彼女の息子の「愛の神 キューピッド」がいます。

キューピッドは目隠しをしていて、ヴィーナスの侍女である「三美神(さんびしん)」に愛の矢を射ようとしています。「愛(恋)は盲目」といったところでしょうか。そういえば、三美神の真ん中の神は左端の「伝令神 メルクリウス」を見つめているようにも見えます。

『春』には多くの草花が描かれ、色鮮やかで華やいだ雰囲気があり、命の息吹が感じられます。主人公のヴィーナスを中心に、春に対する喜びやときめきが、そこには描かれているといえるでしょう。
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