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【平昌五輪】荻原健司さんに聞く! 渡部暁斗選手の金メダルはなるか?

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2018/02/13 14:19 ウェザーニュース

荻原健司さんは、1990年代に冬季五輪大会連続金メダル、ノルディックスキー複合W杯で年間総合3連覇の偉業を成し遂げ、あまりの強さに競技規則が変更された経緯があり、「キングオブスキー」とも称されました。

平昌冬季五輪直前のW杯で5戦中、4勝した渡部暁人選手(29)は、荻原健司さんと同じ所属先でもあります。金メダルが期待される渡部暁斗選手とノルディックスキー複合競技について観戦のポイントを聞きました。

ジャンプでは風、クロスカントリースキーでは雪質がポイント

――ノルディック複合と気象について教えてください
ジャンプとクロスカントリーの2種目を合せて競う競技です。ジャンプでは瞬発力や脚力、バランス感覚が問われます。一方、クロスカントリーでは持久力、耐久力が求められます。

まったく異なる能力を一人の人間が発揮しなければなりません。ジャンプでは風を味方につけ、クロスカントリースキーは雪質を読むことが大切になります。

――平昌のジャンプ台の特徴は?
平昌のジャンプ台は北東方向(選手の背後)からの風が吹く傾向にあり、とりわけ風の吹き方がジャンプに影響を与えることになります。ノルディック複合競技はジャンプから始まります。ここで何位につけるかが成績に大きく関係してくるでしょう。

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――平昌は風が強いことで知られています
ジャンプ台の風力、風向は飛距離に大きく関係してきます。平昌の2月は秒速15mの突風に見舞われることがあるといいます。そのためジャンプ台の両側に高さ最大25m、幅255mの巨大な防風ネット(可変式)が設置されました。これは長野県の建築家が技術を提供しています。

得意のジャンプで首位を狙え!

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荻原健司さん
――荻原さんは渡部暁斗選手と同じ所属先ですね?
わたしも渡部暁斗選手も北野建設(長野県)に所属しています。北野建設スキー部は、札幌冬季五輪の前年、1971年創部で数々の五輪選手を輩出してきました。いま、わたしがゼネラルマネージャーとして横川朝治監督を中心に渡部選手らの指導にあたっています。

――メダルが期待される渡部暁斗選手の強さについて
渡部暁斗選手のジャンプはもともと定評がありましたが、昨年から飛び出しのフォーム改善の効果が現れてきています。得意のジャンプで首位を狙い、その勢いでクロスカントリーも逃げきる勝ちパターンが理想です。最近とくに走力も上がってきて、外国の強豪選手にひけをとらない力を持っています。

五輪直前に行われたワールドカップ(オーストリア・ゼーフェルト)では、前半のジャンプで104.5mを飛んで首位と21秒差の2位でしたが、クロスカントリー(距離5km)では、ゴール直前でかわして逆転優勝しました。その次の大会ではジャンプで首位に立ってそのまま大差をつけて優勝しています。

見どころは前半のジャンプで何位につけるかですが、トップに立てばベスト、もし2位以下でも首位との差が20~30秒なら逆転は可能です。

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――平昌のクロスカントリー競技場の特徴は?
平昌は他のコースと比較して登り下りが多い(一般的には登り、平地、下りが約3分の1ずつで構成されている)。とくにスタートから1km(1周2.5km×4周)までの登りの入り方が大事だと思います。ここで体力を使うと後半に影響が出てきます。

ぼくの経験上からもクロスカントリースキーは、前の選手を追いかけるのがキツイ。できるだけリードして逃げるカタチに持ち込みたいですね。ライバルはW杯総合5連覇中でソチ五輪金メダリストのエリック・フレンツェルらドイツ勢やノルウェー勢になるでしょう。

観戦の意外な注目点は?

――ワックスマンの役割を教えてください
クロスカントリースキーでみなさんに知っておいてほしいのがワックスマンの存在です。選手が履く板の滑走面の滑りをよくするためのワックスのプロです。ワックスはパラフィンとフッ素が主成分です。その日の気温、湿度、雪質を観察・吟味したうえでベストなワックスを選定します。日本チームは、わたしが現役時代の1992年からずっとオーストリア人のシェルブル・ウェルナーさんが担当しています。

――ワックスと雪質の関係が見られる場面は
雪の温度や湿度とワックスの調整がうまくはまれば滑りが明らかに違ってきます。競技中でよく分かるのが下り坂。選手はスキー板に乗っているだけの状態ですから、他との差が見えるのです。競って並走していればワックスの調整が合っている選手がすーっと前に出ていくはずです。レース観戦の注目点のひとつになります。

――渡部暁斗選手の奥さんも五輪選手ですね
奥さんの渡部由梨恵さん(29)もスキーハーフパイプの五輪選手です。渡部家では弟の渡部善斗選手(26)と奧さんの3人が平昌冬季五輪に出場します。ぜひ熱い応援をお願いします!

【平昌の2月の気候】
ソウルから車で約3時間。標高の平均700m、緯度は新潟県長岡市、福島県猪苗代町とほぼ同じ。2月の平均気温-5.5℃、過去最低-27.6℃、降雪日数11.8日、日照時間185.2時間(東京193.7時間)。今年は1月からの寒波襲来で-20℃を記録する厳しい寒さで冬季五輪を迎えています。
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