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【PM2.5】本当はどこから飛んでくる?

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2018/03/15 17:50 ウェザーニュース

微小粒子状物質「PM2.5」が注目を浴びたのは5年前の2013年。中国の大気汚染物質の一部が日本に流れてきて、日本のPM2.5濃度が上昇したからです。以来、「PM2.5は中国から飛来する」というイメージが定着しましたが、本当にそうなのでしょうか。

吸い込むと健康に悪影響

PM2.5とは、直径が2.5μm(マイクロメートル、1μmは1000分の1mm)以下の個体や液体の微粒子のことです。髪の毛の直径が70μm、スギ花粉の直径が30μmほどですから、いかに小さいかがわかります。

燃焼で生じた煤(すす)、風で舞い上がった土埃(つちぼこり)、工場や建設現場で生じる粉塵(ふんじん)、自動車の排気ガス、石油からの揮発成分が大気中で変質してできる粒子などからなる粒子状物質です。

この小さな粒子状物質を吸い込むと呼吸器系にくっついて健康に影響を及ぼし、疫学的には粒子状物質の濃度が高いほど呼吸器疾患(気管支炎・肺気腫など)や心疾患(不整脈・心筋梗塞など)による死亡率が高くなるとされています。

どこから飛んでくるのか

「PM2.5は中国から飛んでくると思う人が多いようですが、国内でも発生しています。関東地方では国内由来が5割強、中国由来が4割弱という結果が出ました」と語るのは、海洋研究開発機構・地球表層物質循環研究グループ主任研究員の金谷有剛さんです。

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金谷さんは、東アジアを日本、朝鮮半島、中国とその他の4つに分け、各地域で発生したPM2.5が日本の6つのエリアにどう移動するかという数値モデルをつくってシミュレーションをしました。実際の観測結果と照らし合わせながら、国内各地のPM2.5がどこから飛んできたかを割り出したのです。

「2010年の1月から12月のデータを元にしました。西日本では中国からの割合が高いのですが、関東地方では中国由来と国内発生が逆転していました」(金谷さん)

「国内のPM2.5発生源は、工場、自動車、発電所、ガソリンスタンド、農業や畜産などが考えられます。各地のデータを見ると、ときおり高い数値がでることがありますが、2年ほど前から減少傾向にあります」

基準値は1日平均35μg/m3

日本の環境基本法にもとづくPM2.5の基準値は、1日の平均値35μg/m3かつ1年の平均値15μg/m3です。1日の平均値が70μg/m3を超えるときは、都道府県が注意喚起を行うことが推奨されています。

全国約700ヵ所でPM2.5が測定され、その結果を環境省が「そらまめ君」(大気汚染物質広域監視システム)のホームページで公開していますから、自分が今いる地域のPM2.5の濃度を知ることができます。

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環境省はPM2.5の1日平均値が70μg/m3を超えるときは、次のような注意を呼びかけています。

▶屋外での長時間の激しい運動(マラソン大会など)や外出をできるだけ減らす

▶屋内でも換気や窓の開閉を必要最小限にして外気の屋内への侵入を少なくする

▶マスクのPM2.5吸入防止効果はある程度ある。高性能の「N95」などは効果がある

▶空気清浄機のPM2.5防除効果は、フィルターの有無や性能など機種によって異なる。製品表示や販売店・メーカーに確認する必要がある

▶PM2.5に花粉が重なると、動物実験で鼻アレルギーなどを悪化させることが確認されているので注意が必要

日本のPM2.5の濃度は基準値内におさまる日が多いのですが、ときおり基準を超える日もあります。「そらまめ君」などを活用して、あなたとあなたの周囲の人の健康を守ってください。
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