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「さっぽろ雪まつり」 雪との苦闘の物語

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2018/02/05 05:43 ウェザーニュース

10日余りの会期中に260万人の観光客を集める「さっぽろ雪まつり」(2018年は2月1〜12日)は今年で69回目を迎える。近年、この一大イベントが地球温暖化の影響を受けているという。それはなぜか。
>>会期中の札幌市の天気

6基の雪像から始まった雪まつり

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第1回の6基の一つ「熊」(1950年)

中高生がつくった雪像

さっぽろ雪まつりの始まりは1950年、札幌市民の雪捨て場となっていた大通(おおどおり)公園7丁目に、市内の中学校2校・高校3校の生徒が美術科教諭の指導でつくった6基の雪像だった。

他にも歌謡コンクール、スクエアダンス、演芸大会、犬橇(いぬぞり)レース、映画上映会などが催されたが、スクエアダンスは凍った地面で転倒して負傷する人が出て30分で中止、映画上映も人波で映写台が押しつぶされて上映中止になったという。

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「横綱大鵬の土俵入り」(1962年)

次第に大規模なまつりに

初期の雪まつりは中高生がつくる5〜6基の雪像だったが、1954年の第5回からは市民制作の雪像が加わり、翌年の第6回には陸上自衛隊、企業、市の出張所も参加して、多数の雪像が並ぶ今のスタイルが定着した。
札幌市街を見下ろす羊ヶ丘(ひつじがおか)展望台に「さっぽろ雪まつり資料館」がある。これまでの雪まつりの記録写真、大雪像の模型、ポスターなどが展示されている。

海外からの観光客が急増

さっぽろ雪まつり資料館を管理する札幌観光協会の小野秀樹さんが語る。「私も子どもの頃は、雪まつりが楽しみでした。もう50年も前になりますが、怪獣映画のガメラとかサザエさん一家などの雪像が記憶に残っています。社会人になってから同僚たちと雪像をつくったこともあります」

小野さんによると、この数年は海外からの観光客が爆発的に増え、会期中は近郊のホテルでさえ予約が取れないほど。「雪まつりが始まる2〜3日前には雪像がほぼできています。夜のライトアップはないので、会期直前の日中に見学することをお勧めします」

地球温暖化で絶えない苦労

3年ごとに暖気がやってくる?

さっぽろ雪まつり実行委員会事務局の土居恵理さんは、「札幌の冬も15〜20年前に比べると全体的に気温が上がっています。特に印象に残っているのが2012年の第63回、2015年の第66回で、3年ごとに暖気が来ている印象です」と言う。
2012年は会期中の最高気温が3.3℃(2月6日)、2015年は同じく3.7℃(2月8日と9日)で、これは雪像が溶ける気温だ。今年も暖気がやってくるのだろうか。

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大雪像制作中の大通公園

安全第一、危ない雪像は撤去

2012年の第63回では、雪像が倒壊し、観光客が軽傷を負う事故が起きた。雨と気温上昇が原因だった。雪像の倒壊で負傷者が出たのは雪まつり史上初のこと。
これを受けて雪まつり実行委員会は倒壊の危険性のある雪像10基を全部または一部撤去した。雪まつりは安全第一なのだ。

会期直前や会期中に気温上昇や雨で雪像が損傷したらどうするのか、土居さんに聞いた。
「会期前の場合は、基本的には修復しますが、会期が迫って完全回復が望めないときはダメージコントロールとして、何を残して何を削るかを選択したり、一部を簡素化します。会期中の場合は、足場を外しているため、危険防止を重点において不安定な部分を削除したり、簡素化して雪像全体のバランスをとることになります」

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地球温暖化の影響がここにも

札幌市の2月の日(にち)平均気温を調べてみた。雪まつりが始まった1950年から10年間は−4.2℃、1960年代は−4.3℃、1970年代は−5.5℃、80年代は−6.2℃とかなり低かった。ところが、1990年代になると−2.4℃、2000年代が−2.8℃、そして2010〜2016年は−2.9℃と、−2℃台が続く。
冬の札幌は今も暴風雪に見舞われることがあるが、30年前に比べて気温が上昇している。地球温暖化で雪まつり関係者の苦労が増えそうだ。
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参考資料など

SORA 2017年2月号より抜粋
写真提供:さっぽろ雪まつり実行委員会
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