facebook line twitter mail

黄砂とPM2.5が死亡リスクを高める!?

top

2018/03/15 17:44 ウェザーニュース

毎年、春先になると偏西風に乗って飛んでくる黄砂(こうさ)。また、この時期はPM2.5の濃度が高くなります。どちらも中国からの越境大気汚染で、健康への影響が心配されます。

黄砂は2〜5月に飛んでくる

box0
春先に遠景が霞んで見えることがあります。水蒸気が立ち昇ってできる春霞と間違えることがありますが、多くは遠く中国西部のゴビ砂漠、タクラマカン砂漠、黄土高原などから飛んできた黄砂によるものです。

なぜ2〜5月に飛んでくるかといえば、春先になると砂漠地帯の積雪や凍土が溶けて黄砂が風に巻き上げられ、それが日本に飛来します。しかし、6月頃には雨が降って草が生えるなどして黄砂が発生しにくくなり、黄砂の季節は終わるのです。

PM2.5の濃度も春に上昇

box1
一方、PM2.5は日本国内で1年中計測されています。発生源が中国だけでなく国内にもあるからですが、3月から5月にかけて濃度が上昇する傾向がみられ、夏から秋にかけては比較的低い濃度になります。

box2
春にPM2.5の濃度が高くなるのは、偏西風の中でも一番強いジェット気流が冬の間、南のほうに下がっていたのが、春になると西日本上空に上がってきます。そのため中国由来のPM2.5が日本に流れてきて濃度を上昇させると考えられます。

黄砂とPM2.5の成分は?

box3
黄砂の組成は、主に石英・長石・雲母・緑泥岩・カオリナイト・方解石・石膏などで、日本に飛来してくるものは直径が1〜30μm前後です(1μmは1000分の1mm)。

一方のPM2.5は、炭素・硫酸アンモニウム・硝酸アンモニウム・鉄、亜鉛、アルミニウムなどです。大きさは、直径が2.5μm以下の微小粒子状物質をPM2.5と定義しているのですから、黄砂より小粒です。といっても、黄砂の中でも直径が2.5μm以下ならPM2.5にカウントされます。

黄砂とPM2.5の健康への影響は?

黄砂とPM2.5を吸い込むと、健康にどのような影響があるのでしょうか。

黄砂については、長崎市で2003〜2007年の3〜5月における黄砂飛来と救急搬送の関連を調べた研究によると、黄砂の飛来が多い日は、飛来しなかった日に比べて救急搬送数が12%増加し、心臓病と脳卒中が21%増えています。

PM2.5については、米国環境保護庁によると、日平均濃度が10μg/m3増加するごとに、死亡全体では0.29〜1.12%、循環器系疾患による死亡は0.47〜0.85%、呼吸器系疾患による死亡は1.67〜2.20%、それぞれ上昇します。PM2.5の濃度が高くなるほど死亡リスクは高まるのです。

黄砂・PM2.5の飛来情報をチェック!

黄砂やPM2.5の飛来予測は、九州大学の「SPRINTERS」などがネット上で365日、毎日公開しています。アレルギー疾患、喘息などの呼吸器系疾患、慢性の心疾患などの持病がある人は影響を受けやすいので、飛来が多いと予測される日は注意が必要です。

また、黄砂とPM2.5の飛来シーズンになると、天気予報でも飛来予報が出されます。飛来状況を確認した上で、マスクやメガネを着用して体への取り込みを防ぎましょう。

なお、サージカルマスク(外科用マスク)は一般に3〜5μmの粒子を95%以上カットするようにつくられています。1〜30μmの黄砂、2.5μm以下のPM2.5の一部は通過しますが、安価でどこでも入手しやすいので有効な対策です。

参考資料など

『黄砂-健康・生活環境への影響と対策-』(鳥取大学乾燥地研究センター監修、黒崎泰典・黒沢洋一・篠田雅人・山中典和編)
  • お天気トピックス
    もっと見る

  • 公式SNSアカウント