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植え替えが進む「ソメイヨシノ」の後つぎ品種とは?

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2018/01/18 11:20 ウェザーニュース

今年も桜の開花を指折り数えて待つ時期になりました。ところで、街路樹や公園の桜といえばほとんどがソメイヨシノという品種ですが、徐々に後継品種にその座を譲っているというのです。

病気に弱いソメイヨシノ

「『日本花の会』は1962年に創設されて以来、全国各地に桜の名所づくりをするため200万本を超える苗木を提供してきました。長らくソメイヨシノが主流でしたが、それを見直して2005年度からは別品種に切り替えました」と語るのは、公益財団法人日本花の会主任研究員(樹木医)の和田博幸さんです。

理由は、ソメイヨシノが「てんぐ巣病」という病気に弱く、その病気がソメイヨシノの間で広がっているため、新たにソメイヨシノを植栽すると病気の拡大につながるからです。

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てんぐ巣病のソメイヨシノ
ちなみに、「てんぐ巣病」にかかると枝が異常に密生して、何かの巣のように見えることから名付けられた病名。放っておくと幹が腐食して枯れてしまいます。防除する薬剤はなく、患部を切るしかありません。

「ソメイヨシノは種子ができないため接ぎ木で増やしますが、接ぎ木に使う枝はすべて1本の原木から増えたものです。つまり、すべてのソメイヨシノは同じDNA(遺伝子)を持つクローンなのです。種子から育てば、遺伝子を少しずつ組み替えて菌類に耐性を持つことができますが、クローンはそれができないため病気や環境の変化に弱いのです」(和田さん)

後継に選ばれた2つの品種

「日本花の会」がソメイヨシノに代わって推奨しているのは、コマツオトメとジンダイアケボノという2つの品種です。

「両品種とも、『てんぐ巣病』に強く、ソメイヨシノとほぼ同じ時期に開花し、樹形もほぼ同じ。花はどちらもソメイヨシノよりやや赤みが強いですが、違和感なく楽しめるはずです」(和田さん)

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コマツオトメ

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ジンダイアケボノ
和田さんによると、横浜市金沢区では街路樹のソメイヨシノをすべてジンダイアケボノに植え替えがすみ、国立劇場(東京都千代田区)の庭には約20年前にコマツオトメとジンダイアケボノの2品種が植栽され見頃を迎えています。

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国立劇場の庭に咲くジンダイアケボノ
戦後、各地で植えられたソメイヨシノは60〜70年とされる寿命を迎えている。樹勢が衰えて花が満足に咲かなくなっただけでなく、倒木による事故も懸念されます。植え替える際は、ソメイヨシノに代えて別の品種にしてほしいと和田さんは呼びかけています。

参考資料など

※写真提供:日本花の会
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